わたしも街道をゆく/1990年/北海道へ
わたしも街道をゆく 1990年 北海道へ

1990年8月11日 ウトロ滞在 
 風の音に寝たり醒めたりしながら朝になった。
 朝になっても風は相変わらず強く、隣のテントが飛びそうになっている。参ったねこの天気、と天気予報を聞く。え、台風11号根室に上陸? 私たち今日そっちに行くつもりなんですけど。
 どうしようか、日程にそんなに余裕はないけどこの強風と時折来るこの雨の中なんて走りたくない。でもでもでも……えーいなんとかなるさ、連泊しちゃえ。周りの人たちももう一泊する人が多いようで、出発の動きがない。
 そうと決まればゆっくりしよう。朝食の前に隣のユースのコインランドリーでお洗濯。ご飯を食べたら食休み、テントの中でゴロゴロころがっている。いいのかなあツーリング中にこんなにのんびりしちゃって。

 あっという間にお昼になった。少しは観光でもしに行くか。後ろの席で楽ちんタンデム、知床五湖へ行く。途中にダートの急坂コーナーがあった。ああVTZに乗ってこないでよかった。

 観光客でいっぱいの知床五湖、5つのうち一湖と二湖だけを見学。細い遊歩道、後ろから人がどんどん来るからなんだかゆっくり見ていられない。レストハウスの従業員の皆さんは今日は揃って機嫌が悪い。ミルクを買えばお釣りは投げてよこされるし、駐車場のオジサンも怒鳴りまくり。夏休みだってのに観光客尻目に働かなくちゃいけない、気持ちは分かるけど、ねえ。

 宇登呂へ戻る途中、ついにキタキツネと出会った。バイクを降りてカメラを持って、逃げないでそこにいてね、と走る。
 うわあ本物のキタキツネ。あわててシャッターを切る…あれ、君たち人間怖くないの? 平気でそこにじっとしてる。逃げないどころじゃない、観光客がエサを投げると飛び付いてむさぼり食っている。ねえねえ君たち、野生動物でしょ? 人が見てる前でエサ食べるなんて変。少しずつ近くにエサを置いてけば、簡単に生け捕りできちゃいそう。あらあら3匹も出て来ちゃった。
 そして私はこの光景を見て、キタキツネが大っ嫌いになった。観光バスがキタキツネを見つけてつぎつぎと停車。窓からみんなキャーキャー言いながら写真を撮っている。その前で彼らキタキツネは、バスに向かってお座りしてちょこんと可愛らしく小首をかしげたりなんかしてるのっ! 野生動物が人間にエサをねだるな。プライドってもんはないの?なに考えているのかしら。
 あんなことしてたらエサの獲り方なんて忘れちゃう。観光客の来ない冬はどうするのかしら。人ごと、いやキツネごととはいえ気になる。
 そうだきっとあのキツネたちは、知床観光協会が飼ってるに違いない。観光客集めのために時々放しているんだよ。何だかそんな気さえしてしまう、可愛げのないキタキツネとの遭遇だった。

 明日の晴れを祈りながら、ウトロの海に日は沈む。


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