わたしも街道をゆく/1989年/北陸へ
わたしも街道をゆく 1989年 北陸へ

1989年11月3日 金沢から富山へ 本日の走行距離366Km
 すがすがしい金沢の朝7時、兼六園の前で呆然とする旅人ひとり。ユースのペアレントさんは確かに言った、6時半から開いてるって…。それは10月までのこと、11月からは8時開園じゃあないですか! そういうことは調べといて欲しかった。朝ご飯も食べないで出てきたのに、くやしい。でもいいんだ今日のメインイベントは他にあるんだから。ちぇっ。

 市内を出、しばらく金沢港に沿って北に行くと能登道路の入口に出る。なにしろ直線の海岸線、みんな高速並のスピードだ。VTZもブンブン走るけど海も気になる、よそ見もほどほどにしないとね。
 寒さとひもじさでパーキングへ。でもまた裏切られた、レストランがまだ開いてない。仕方なく飲んだ自動販売機の100円カップコーヒーの美味しかったこと。心の底から暖まって、VTZと、幸せだねえとしみじみ語り合っちゃった。

 今浜インターでいったんおりるとそこが渚ドライブウエイ。入口でちょっと躊躇する。本当に砂の上、走れるの?バイクはホントは入っちゃいけないんだよねえ。でも、勇気を出して突入だっ。
 なんのことはない、驚くぐらいしっかりと砂が固まってるからとても走りやすい。所々でほんのちょっと轍が気になる程度で、快適そのもの。思ったより車も少なく、キャーワーとひとりではしゃぎ三脚立てて写真を撮りまくる。波打ち際に近づいていっては危なっかしくて離れたり、町の方から細く水が流れ込んでる所をエイヤッと渡ったり楽しいのなんの。6km位走ったところでストップ。砂が軟らかそうだからもう一般道に帰ろっと。一番近い出口、軟らかい砂が轍でザクザクになっているんだから、考えなくたって走れっこない(私には)。でも馬鹿な私とVTZは果敢に攻めて…コケた。砂の上だから痛くない、なんだか楽しくてコケたまんまで笑ってた。でも起こせない、荷物はずしても力が入らなくて駄目だ。きっとこういうばかが多いのだろう、横を通る車には完全に無視されてしまう。近くで自転車を直してたお姉さんが見かねて助けてくれた、どーもすんません。
 やっとの思いで砂地を脱出しR249へ。舗装してあるのがこんなに嬉しいなんて。

 能登金剛と言われる海岸線を走る。富来町に変なものがあった。世界一長いベンチだって。海岸に、海に向ってベンチがズラーッと並んでる。なんなのだろう、一体。まあそれもすごいがなんたって関野鼻の近く、ヤセの断崖が迫力があってすごいこと。岩場の上から海を見下ろすと目まいがしそう。これは落ちたら死んじゃうなあ。映画「ゼロの焦点」のロケ地なんだそうな。命がけで撮影したんだろうなあ、苦労がしのばれる。

 関野鼻からR249に戻ってすぐの琴ケ浜は鳴き砂の浜。夏に山陰の鳴き砂にだまされたので(海水浴シーズンじゃね)半信半疑。うーん、でも鳴ったといえば鳴った気もするし鳴ってない気もするし。私の耳って鈍感だ。

 輪島を通過し、R249を走っていて笑わせてくれる地名を発見した。「ねぶた」寝豚って書くの。バス停見て大笑い、いったいどんな由来なのだろうか。

 曽々木海岸からは彼方に点々と見える見える七ツ島がかっこいい。写真に納めたいがこのカメラじゃ絶対写らないんだよねえ、一眼レフがあったらいいなあと思う。
 海を見ながら気持ちよく走り、着いたのは禄剛崎。胸突き八丁の坂道をはあはあ言って上がった所に能登半島端っこの灯台がある。背が低くてマンボウみたいな灯台だ。ぐるりと海、見晴らしがいい。佐渡ケ島も見えるそうだ、今日はわからなかったけど。地元のカップルとお話もした。これから宿を決めるんだけど今日はどこまで行けるかなあって言ったら、富山だって明るいうちに着くのとちゃう? とのこと、ふーんずいぶん遠いような気するけど。

 その日に電話しても泊まれるからユースを使ってるのになんと今日は断られまくり。今もう3時半なのに、取れたのがなんと富山。ここから180km近くもある、明るいうちになんて着くもんか。
 だから私は、能登半島の東側に関してはなんにも知らない、見ていない。R249、160をただ走るのみ。そのうち真っ暗になってしまった。田舎の夜は本当に暗い。山の中を走ってた時、これでも私としては最高速で走ってるつもりなのにあっという間に後続車にブチ抜かれ、前後左右闇の中。VTZのヘッドライトがなにかとんでもない、この世の物ではないものを映しだしそうな気がして泣きそうになる。こわいよう。
 海岸線では遠く水平線に漁火が目に入る。わあ、きれい。だけどゆっくり鑑賞する精神的余裕は、ない。
 途中で、同じ所に泊まるという少年と一諸になりR8を走る。
 夕食を食べて8時、やっと到着。ああ疲れた。


前の日に戻る

次の日に進む

「わたしも街道をゆく」top pageに戻る