わたしも街道をゆく/1989年/北陸へ
わたしも街道をゆく 1989年 北陸へ

1989年11月2日 東京から金沢へ 本日の走行距離648Km
 新しい職場で、初めて取った有給休暇。忙しい時期にすいません。

 午前4時10分、東名高速にのる。トラックが多いなあ。
 厚木を過ぎたあたりで、チカチカする光が気になって、ふと空を見上げた。星だ! 目の前にオリオン座、そしてたくさんの星たち。でもこんな所じゃボーッと見てることも出来やしない。今まで何回も夜中に走ってるのに、こんなにたくさんの星が見えるなんて気が付いたことがなかった。
 夜が明け、愛鷹の向こうに見えた雪を被った富士山は、なんだかちょっとぞっとするような、恐ろしい感じさえする。

 閑散とした北陸自動車道。ここぞとばかりビュンッと走りたいんだけど、横風が強い。まっすぐ走れない。トラックに追い抜かれようものならもう大変。VTZにしがみついてギャアーと大騒ぎ。

 敦賀で高速をおりる。R305を走り出すとすぐ、眼下に広がる海は日本海。太平洋と日本海を一日のうちに両方見ちゃうなんてなんだか得した気分。
 海岸線の河野海岸有料道路に入りそびれ、ちょっと山の中の国道をゆく。きっとお客を有料道路の方に取られちゃったんだろう、越前竹人形やカニの看板も空しく朽ち果てたドライブインが何軒もある。なんかかわいそう。

 再び海岸線へ。
 波が荒い。岩やテトラポットに当っては白い波しぶきを豪快に飛ばす。いつの間にかシールドも濡れている。道路沿いの海なんて穏やかなもんだと思ってたけど、このあたりはすごいや。河野村と越前町の境、海に流れ込んでいる白竜の滝を見てたら、ズーンという地響きみたいな音。不気味なその音に、地震の前兆か? と思ってゾッとしたけど、なんと波が岸壁に当る音。このへんの日本海は自己主張が強いのね。

 まだ記憶に新しい、R305の崖崩れ。通行止めが解除されるのが11月3日、つまり明日。一日違いで遠回りしなくちゃならないけどしかたがない。内陸の県道に迂回する。海が見たいのに。でも、ひとつ、いいもの見つけた。時代劇に出てきそうな小さなお社。中で倒幕派が密談をしてるかもしれない、町奉行様に知らせなくてはっ……。
 越廼村でR305と合流、奇勝東尋坊へ向う。

 日本中どこの観光地も同じ、歌謡曲のBGMを聞きながら土産物屋の並ぶ道を抜ける。これが、名にし負う東尋坊? どこにでもありそうな岩場、城が崎かと思った。気負って来た私のこの気持ち、持って行き場がない。でも、かにめしは美味しかったから、ま、いいか。

 さて今日の泊りは金沢。R8、157と走るうちに日が暮れてきた。ピンク色の夕焼けがバックミラーに映ってる。金沢へ到着する頃にはすっかり暗くなっていた。
 ユースでは同室の女の子たちとバイクの話で盛り上がる。新潟名物笹団子をいただいた。3時半のかにめしから何も食べてないから嬉しかった。ゴチソウサマデシタ!


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