わたしも街道をゆく/1989年/中国地方へ
わたしも街道をゆく 1989年 中国地方へ


1989年8月15日 丹後半島から琵琶湖へ 本日の走行距離175Km

浦島太郎の神社

 丹後半島は本当にいいところ。
 切り立った崖の上に畑があって、向こうを見ると丹後松島。なんていうのかなあ日本らしい海岸線とでもいうのか、断崖絶壁なんだけどとても優しい表情をしてる。曇ってたけど十分堪能。

 丹後半島の先っぽの経ケ岬、バイクを置いて灯台へ。20分かかるって書いてあったから覚悟はしてたけど、うう、辛い。金比羅さんの奥の院より、室生寺の石段よりきつい階段を登り、やたらと急な砂利道を下りてゆくと、経ケ岬の灯台にやっと着いた。下を見ると、海が遠い。灯台に近寄れるわけでもない。フーンと思って終わってしまった、今の苦労はなんだったのだ。
 それにしても子供は元気。この急坂急階段を、キャーワー言いながら走りまわってる。オバサンはもうぐったりさ。
 パンパンになった足を引きずりながら駐車場まで戻る。汗びっしょり。ノーヘルで走りたい

 丹後半島めぐりを続ける。ここは宇良神社、またの名を浦島神社。そう、なんとあの浦島太郎が祀られている。村の鎮守様といった感じのちょっとしたお社だけど……ということは竜宮城も本当はあったのかもしれないね。はるか丹後松島の沖の海底ではタイやヒラメが舞い踊り、してたりして。亀に乗った浦島太郎の絵馬をお土産に買う。

はじめての舟屋

 こんな光景は初めて目にした。伊根の舟屋。静かな内海に沿って家が並んでいる。二階建のその家々は、二階に住まいがあって、一階が船着場。ガレージつきってわけだ。人と海が仲良く生きてるんだなあ。見たことないけど、そう昭和初期の雰囲気がする。それにしても、台風が来たらどうなっちゃうんだろうね

 若狭湾を横目に南へ、なんでこのへん急に混んでるのかなあ、と通りすぎてしまいそうになったところが、天橋立。上から見なくちゃ面白くない。ロープウエイで笠松公園に登る。対岸に向って延びる松林、遠慮がちにそっと股のぞきしてみた。この方法を発見した人はすごい。松林が本当に空に向ってぐんと延びてるように見えるからたいしたもんだ。いい気になって、写真を撮ってもらう時まで、
 「ちょっと待ってください、股のぞきしますから」
 なんつってちと恥ずかしい。
 橋立を眺めながら遅い朝ご飯を食べ、今度はリフトで下山。天橋立煎餅を会社へのお土産にする。

だから短気起こしちゃだめなんだってば

 いやだなあ、雨が降ってきた。このツーリング、後半は天気に恵まれない。
 橋立の対岸の渋滞を越えたあたりからけっこう雨足が強くなってきた。舞鶴に入っても降り続く。

 べつにのろのろ走ってなかったのに、後ろの車が真横を通ってVTZの前に出た。だいっ嫌いなのこの抜かれ方。2車線あるんだからちゃんと隣の車線に移ってから抜いてよ。短気な私は、このヤローとばかりその車の真後ろに、ビッタリ。そんなことしたってなんの得にもならないのにね。そればかりか痛い目見ちゃう。
 急停車した2台前の車に、私の前を走る車が突っ込んだ。わ、ぶつかる。思い切ってハンドルを切った。やったよけられた、けっこうやるじゃん、と浅はかにも思った私はその時またもやVTZに足の上に乗られて、雨のR27の上に、寝ていたのだった。またやっちゃった。

 手伝ってもらって歩道に上がる。あ、ひどい。ミラーが根元から折れた。クラッチが切れない。ステップが割れそう。お土産のお菓子、平気かなあ。ショック。
 見回してもバイク屋さんの影もない。こういう時はガソリンスタンドだな、とVTZをそこに置いて痛む足を引きずりながら走る走る。やっと見つけたスタンドで、このへんにバイク屋さんないですか? と尋ねると、熱心に探してくれたけどなにせお盆休み、どこも開いてない。そ、そーですか。悲しくなってしまった私に、とにかく持ってきてごらんよの優しいお言葉。
 VTZのところに戻る。追突した方の助手席のあんちゃん、Tシャツの胸元がぐっしょり、血だらけ。それにしてもなんだろうこの和気あいあい、いかにもみんなヤンキー風なのに。
 どうやらみんな仲間らしい。これじゃあナニシヤガンデイ、と文句言っても駄目か。

 「ねえちゃん、大丈夫かあ?
 「(ブーツカバーで足先が見えなかったから)足がチョン切れたかと思うたで」
なんて言う声を後ろに
 「大丈夫です!」
と元気よく答えてVTZを押す私。本当は足痛いのに。
 マズイ、向こうからお巡りさんが来た。お願い、何にも聞かないで
 「どうしたの、事故の関係者?」
 「ち、違います。後ろを走っててびっくりして転んじゃったんです…」
 ちぇっ本当は文句のひとつも言ってやりたいとこだけど、なにしろ私は免許不携帯、逃げるように去ってゆく。

 ガソリンスタンドではすっかりお世話になってしまう。ミラーはどうしょうもないけど、ステップを補強、クラッチも直してもらい、本当にありがとうございました。修理代を払おうとしたら、いらないよって言われてしまう。でもそれじゃあおさまらないから、ちょっとしか入らないけど、ハイオクのガソリンを入れることにした。

 ギアチェンジのたびに足が痛む。三方五湖に行く予定だったけどやめた。雨も降ってるしもう走りたくない。

 琵琶湖のユースにまっすぐ向う。途中で雨もあがった。荷物を置いたらすぐにお買い物。薬局でシップを買い、琵琶湖を眺めながらアイスクリームを食べた。夕飯食べてお風呂に入っても、早く着いてしまったから夜がけっこう長い。
 明日は東京か、またコケちゃったからなあ。ビールを飲みつつ反省、無事に帰ろっと。