わたしも街道をゆく　1989年　紀伊半島へ

有田で鎖骨骨折（私が、じゃない）

　子供の日。
　海をバックにみんなでバイク並べて写真撮ってから出発しようよ、と６台のバイクは海岸へ向かう。

　その直後、事故が発生。先頭を走っていたおにーさんが、急に駐車場から飛び出してきた軽トラックにぶつかった。一瞬私には何が起ったのかわからない。応急処置の知識を持っているという、中の一人が走り寄って迅速な処置をする。どうしていいのかわからなくて呆然と立っている私達。救急車のサイレンの音。そしてパトカーが来て現場検証。路上に散乱する割れたミラー。

　みんな、出発するにも出来ず、ユースに戻って病院からの連絡を待っている。電話がかかってきた、鎖骨骨折だって。みんなで病院に行ったら上半身ギブスで固められちゃってかわいそう。でも本人はまあ元気な顔をしているので一安心。ユースにもどってみんなでお昼を食べる。…ユースで昼食を食べるなんて初めてだ。

　ここの飼猫のマイケルと遊んでいるうちにもう２時。次の日飛行機で北海道に帰ることになった骨折おにーさんに見送られて、みんなで出発。
　もしも先頭にいたのが私だったら、と思うとぞっとする。バイクっていうのは危険な乗り物なんだ、って改めて思う。それと同時に思ったのはそれぞれ名前だってよく知らないのに誰一人出発せずにずっと一諸にいたこと、なんだかいいよねえ。（この時同室だったおねーさんとはその後北海道で一緒に走り、今でも年賀状のやりとりをしているの。鎖骨骨折おにーさんとも年賀状だけだけどお付き合いが続いています）

　それにしてもここ１ヵ月間で救急車呼んだり、待ってたりするの３回目。どうしてなのよもう。ヘルパーのお兄さんが言ってたっけ、これ（私のタンクパットを指して）が魔を呼ぶんだよ、って。（説明…『風します？』の月子ちゃんの絵が描いてあるやつだったから）

夜の古墳はコワイです

　有田から高野山へ、泣きたくなるようなワインディングが続く。一諸に走る二人についていくよう頑張るけど、死にそう。バイクがうんうん唸っててかわいそう。山桜がきれいだけどちらっと見ただけ。ピンクの花びらが後に流れていく。Ｒ３７１に出たって道は山道、ただひたすら走るだけ。Ｒ２４に出たときは本当に幸せ。だって道が曲がってないんだもん。
　国道沿いのドライブインで、一緒に走ってたうちの一人とはお別れ。気をつけて！

　渋滞の赤いテールランプばかり見ているうちに、頭の中が真っ白になってきた。夢の中を走っているような変な感じ。しっかり走らなくちゃ。

　目指すのは奈良山の辺の道、古墳のそばのユース。夜の古墳って怖い。太古からの霊が暗やみの中からこっちをじいっと見てるみたい。そんなに見ないでくださいと思いながら、ユースに着いた。一緒に走った子と、遅い夕ご飯を食べる。長いような短いような１日だったね。