わたしも街道をゆく/1988年/四国へ
わたしも街道をゆく 1988年 四国へ

1988年5月6日 松山から高知へ 本日の走行距離205Km

 引き続き今日も晴れてて嬉しい。朝ご飯は食べずに出発し、砥部焼観光センターでオジサマと待ち合わせ。バイキング形式でモーニングをやっている喫茶店でご馳走になった。
 そしていよいよお別れ、何だかご馳走になってばっかりで申し訳ない。いつ買ってくださったのかお稲荷さんのお守りもいただいた。楽しい思い出がいっぱい出来ました。本当にありがとうございます。

 さて今日はR33、三坂峠を一人で走る。山の中だけど、川沿いの道で気持ちがいい。と思ってたのは始めだけ、R33から440になると、もう大変。舗装してあるのがせめてもの幸い、細くて急勾配でくねくねした道、ときどき村がある。こんな山奥で、とつい思ってしまうのだが、田んぼや畑を育てている。

 …あ、トイレに行きたくなっちゃった。公衆トイレがあるはずもなく、よろず屋さんで借りることに。もちろん買物もした、缶ジュースだけどね。
 そのななめ前に、祠に入った3体のお地蔵様。神をも畏れぬ(?)私は、これをお地蔵様の少年隊と名付けて、写真を1枚、失礼しました。

 何だか砂利が多い道、乗り上げて転ばないように気をつけながら、急坂急カーブを越えると、視界がぱっと開けた…。
 四国カルスト。石灰岩が白く顔をのぞかせている。のんびりと遊ぶ牛たちの群れ。遠くには山々が連なっている。ここまで四国を走ってきた中で、一番の感動。もうすごいや。なんたって人がいない、さすが平日、それがまた嬉しい。
 牛が多いところまで少し進む。あ、親子の牛がいるよ。カメラを持ってそおっと抜き足差し足、親子の牛の方へ近づいて行く。…あ。逃げられた。
 そのへんの牛にカメラを向けていると、撮りましょうか、と声を掛けられた。オフロードバイクに乗ってる、東京から来たというおねえさん。東京から、なんて聞くと、ずいぶん遠くから来たんですねえ、と言いたくなっちゃう、自分も東京から来たのにね。

 行きがああいう道だったということは帰りもああいう道なんだろうなあやっぱり。そう思うと嫌になるけど、桂浜で龍馬さんが待っている(待ってないって)、早く行かなくちゃ。期待通りのいい所だった四国カルストに別れを告げる。
 同じような急坂急カーブ、ときどき集落を通ったり、小川沿いを走ったり。須崎市に向かって、だいぶ下までおりてきたかな、村のあちこちには例の鯉のぼりが泳いでる(というか吊り下がっている)。それを見ながらぼーっと走っててふとミラーを見たら、後ろにもバイクがいた。私ゆっくり走ってるから抜いてもいいのに。
 とある橋の所で道が分かれている。標識を見上げると……あれ、須崎って書いてない。どっちに行けばいいの?思わず橋の上で立往生。後ろの人も止まってる、同じ方面に行くのかなあ。あなたも須崎ですか?橋を渡ったところに、大きな名所案内の看板がある。それを確認してくれた後ろの彼について、直進。(まさかその人と結婚するとはねえ(^^;) そのうえ離婚するとはねえ(^^;)ちなみに婚姻届は5月6日だったりする。離婚届も5月6日に出す予定だったのさ)
 あれ、中学校の校庭に入っちゃった。Uターンしなくちゃ、でもうまく出来ない私は、たぶん授業中だったに違いない中学校の校庭をブイブイとでかい音たてて大きくぐるっと回る、ついでに泥の上でコケそうになった。
 おかしいですねえ、どうしましょうか。その彼が近所の店で聞いてくれた。名所案内の看板に書いてあるのとまるっきり反対に行かなくちゃいけないんだって。

 東津野村、というこの村を後に、須崎目指して走る。2台で走ってたら前のほうにいたバイクに追い付いた。へえ品川ナンバーだって。前の彼は足立でしょ、私は練馬、こーんな四国の片田舎で東京のナンバーが揃うなんて珍しいし楽しいなあ。品川さんにも声掛けて止まってもらって3台で写真撮ろうかなあ。それにしても品川さん、遅い。バイクの種類はわからないけど、黒のツナギで決めてるわりには、のろいんじゃないの?足立の彼か先頭を切って、広いところで抜かせてもらった。
 そのうち足立ナンバーの彼が止まった、あれどしたの、須崎に行くんじゃないんだ、じゃあねえ、と手を振って行こうとしたが、え、休憩しない?…ああそういう意味。
 橋の上にバイクを止めて彼が買ってきてくれた缶コーヒーを飲む。やっぱり桂浜に行くんだって、横浪黒潮ラインを再び走りたいというのも同じ。またもや道連れが出来た、今度のツーリングは友達いっぱいできて嬉しいなあ。

 この前とはうって変わっていい天気の中、横浪黒潮ラインを走る。雨でもきれいな海だったけど晴れてるともっときれい。元気に走り抜けて、やったあ待ちに待った、桂浜だ!
 こんにちは、お会いしたかったです!龍馬さん。
 太平洋に向かって立っている龍馬さんの銅像は、ちょうど逆光になってるし背が高すぎるしで、顔まではようく見えないけど、確かにあの、龍馬さんだね。潮風のせいだか何だか、すっかり緑青色になっちゃっててなんだか可哀相。
 桂浜に下りる。浜には砂じゃなくて小石がいっぱい。これが五色の石、っていうヤツ。きれいな小石を捜す。白、赤、緑、黒、黄色、と本当に五色。たくさん拾っちゃった。これお土産にしたら大顰蹙かなあ。
 海岸の一角には竜王宮、という小さなお宮さん。水族館の中からは、『龍馬くん』というオットセイが芸をしているのが聞こえてくる。すごい名前。そうすると他にも慎太郎くんとか、以蔵くんとか万次郎くんとかいるのだろうか?

 そういえばお昼を食べていなかった。私のリクエストで「龍馬うどん」を食べる。室戸のユースで福岡から来た女の子たちがおいしかったって言ってたのでここまで(もう2時だ)お昼を我慢してしまったのだ。わかめと、なんといってもかつおのたたきが乗ってるのが土佐らしいけど、味はまあ普通かな。
 腹ごしらえが済んだところで、お土産を買う。彼もここで買おうとしてたというので、買いまくる。なんたって桂浜のアイドルは『龍馬くん』だ。維新の志士も可愛いキャラクターになってしまった龍馬さんがいっぱい。シャープペンやら小銭入れやらいろいろと買ってしまい、料金は送料込みで8千円にもなってしまったが、満足満足。

 ところで彼は今日これからどうするのだろうか。高松まで行くとか言ってたけどそうするの?私は高知でユースだよ。
 結局一諸にユースに泊まることになった。夜は高知の街に飲みに行くことも決定。私の夕飯キャンセルがてら(実は親戚に偶然会いまして一諸に夕飯を食べることになりまして…なんて大嘘)追加一名の電話をする。(なんかFくんの時といい、私ってみんなをユースに連れてってないか?)
 「…で、男の人、一人泊まれますか?…え、名前?」
 あ、名前なんて知らなかった、そういえば。お土産屋さんの中にいる彼に向かって叫ぶ 「ねえー、名前なんていうの?え、何?」
 彼の名前がUくんであることを初めて知った私だった。

 さて、すっかり忘れていたことだったが、VTZはまっさらの新車、すでに1,900kmも走っている、そう、オイル交換しなくちゃいけない。例のリストに載っている店はこのへんには無さそうだけど、ホンダの看板が出てればどこでもいいや、止まってくださいと彼に頼む。
 そろそろ傾きかけてきたまぶしいお日さまを浴びながら走っていると、けっこう大きいバイク屋さんがあった。VTZを買ったバイク屋の社長に言われた通り、これ見せると親切にしてくれるって言われたんですけどお、と借りてきたリストを見せ、無事オイル交換を済ませ、駅前のユースへ。

 いの一番でお風呂に入る。さっぱりしたところで、いざいざ夜の高知へ!荷物の中のシーブリーズの蓋が開いちゃってて中身があらかた出てしまい、荷物も着替えもがシーブリーズくさくなってしまい、ちょっとさっぱりしすぎ。
 土電(とでん、土佐電鉄のこと)に乗り、どこにでもあるんだなあと思いながら村さ来に入る。四万十川の鮎、だの、室戸沖のイカの一夜干し、だの、なんとかのトマト、だのを食べすっかりいい気持ちになってまたもやはりまや橋へ。シャッターを押してくれた人が東京から来ている人だったので少し話をした。
 「東京から一諸にツーリングですか、いいですねえ」
 「今日会ったばっかですけど」
 「…軽いですねえ」
 だって、どういう意味だ(^^;)

 門限に間に合わなかったら容赦なく締め出す、と言われてたのでタクシーで帰る。2人ともいい気分で入っていったら運悪くちょうどミーティング中。みんなのしらーっとした視線が刺さった。
 何気ない顔でジュースを買って、階段に座ってしばらく話をしてから、寝た。


前の日に戻る 次の日に進む

「わたしも街道をゆく」top pageに戻る