蜃気楼とは(上位蜃気楼・下位蜃気楼)

 蜃気楼とは、遠くの景色が通常とは違ったように見える現象です。古代中国では、そのような現象が、「蜃(大ハマグリ)またはミズチ」から吐く「気(息)」によって、「楼閣(大きな建物)」がつくられると考えられていたため、蜃気楼と呼ばれています。

 科学的には、温度(密度)の異なる空気層を光が通過すると屈折するので、光が直線的に進まないために生じる現象です。空気の温度構造により蜃気楼は大きく分けて2種類あります。景色が上位に変化する「上位蜃気楼」と、景色が下位に変化する「下位蜃気楼」です。

上位蜃気楼 下位蜃気楼
珍しさ  珍しい  特に珍しくない
発生頻度  年に数回  頻繁
観測場所  国内十数カ所のみ
(その他の地域でも可能性はあります)
 どこでも
気層構造  上暖下冷
(相対的に上層が暖かく、下層が冷たい)
 上冷下暖
(相対的に上層が冷たく、下層が暖かい)
光の進路  上に凸  凹
光の経路
比較写真 上位蜃気楼
 水平線上のタンク群下部が一様な高さで上位に伸びている。電線を基準にすると実景と比べて景色が上に位置している。

実景
 小樽市高島から見た、対岸の石狩市石狩湾新港のタンク群。
下位蜃気楼
 黄色矢印の高さを境にその上の景色が下位置に反転している。そのため黄色矢印よりも下にあるはずの実際の景色は見えない。電線を基準にすると見かけの水平線が下に位置している。
その他の
呼び名
上に伸びる蜃気楼、
上方蜃気楼、
浮上蜃気楼、
海市、山市、狐の杜
下に映る蜃気楼、
下方蜃気楼、
沈下蜃気楼、
逃げ水、地鏡、砂漠の蜃気楼、
浮島現象、浮景現象、
発生機構
(時期)
・冷たい水面上に暖かい空気が移流(主に春夏)
または
・放射冷却による下層部の気温低下(冬)
・日射による地表面の昇温(年中)
または
・冷たい空気が相対的に暖かい水面上に移流
  (年中、主に秋冬)
見え方
上の方に伸びて見える
通常より高い位置に見える
上へ反転して見える
板塀状に見える
水平線よりも遠くの物が見える
下へ反射しているように見える
水たまりのようなものが見える
水面上に浮かんだように見える
いろいろな
写真


猪苗代湖の上位蜃気楼(福島県会津若松市)
上位に伸びが見られ、板塀状またはバーコード状に見える
上端が平らになっている
撮影:星弘之(当会会員)


国後島の上位蜃気楼(北海道標津町)
上位に反転像が見られるため、山が逆さまに見える
上端が平らになっている
撮影:星弘之(当会会員)


流氷の上位蜃気楼(幻氷)(北海道湧別町沖合)
沖合の流氷の上位に反転像があり、板塀状に見える
撮影:遠峰徹弥氏


日高山脈の上位蜃気楼(北海道札幌市手稲山から)
陸地での上位蜃気楼
放射冷却現象により、接地逆転層が形成されたときに発生
上位に反転像が見られるため、山が逆さまに見える
上端が平らになっている
撮影:中谷輝千代(当会会員)


アスファルト上の逃げ水現象(北海道小樽市銭函)
下位に反転像が見えるため、水面が有るかのように見える
撮影:大鐘卓哉(当会会員)


浮島現象(北海道長万部町旭浜から室蘭)
実景や空などの反転像が下位に見えるため、
陸地が浮いているように見える
撮影:長尾康(当会会員)


流氷の浮景現象(北海道浜頓別町の沖合)
流氷と空の反転像が下位に見えるため
流氷が浮いているように見える
撮影:大鐘卓哉(当会会員)


浮景現象(北海道豊富町サロベツ原野)
自然状態の陸地での下位蜃気楼
日射がとても強く、地表面が熱せられたときに発生
林などの反転像が下位に見えるため、
景色が浮いているように見える
撮影:長尾康(当会会員)