・下位蜃気楼(inferior mirage)
 日射のある日にアスファルト上に水たまりがあるように見えたのに、近くに行くと何もない「逃げ水」は下位蜃気楼です。この現象は頻繁に発生します。鏡のように見えることから「地鏡」とも呼ばれていました。「砂漠の蜃気楼」も逃げ水で、それがオアシスのように見えたのでしょう。海や湖の水平線近くに、対岸や島・船がある場合、それが宙に浮いているように見えることがあります。これが「浮島現象」「浮景現象」です。これは上の空などが対象物の下に映ったように見えることで、浮いたように見えるのです。
 原理的には、下層の空気の温度が高く、その上層の空気の温度が相対的に低いときに発生します。そのため「上冷下暖の蜃気楼」とも呼ばれます。2層を通過する光は凹状に進みます。そのためその光を受け取った人は、対象物が実際よりも下の方にもあると感じてしまいます。アスファルト上の「逃げ水」は、夏などの強い日射があるときによく発生しますが、ある程度の日射があれば地表面が暖められるため年中見られることもあります。「浮島現象」は、水温に比べ気温の低い秋冬によく現れます。気温は冷たいのに、水面に接している下層の空気は、相対的に暖かいからです。しかし秋冬ばかりではなく、日射があれば水面が暖められることにより、上冷下暖の気層構造を形成し、年中「下位蜃気楼」が発生することもあります。