絵物語の付録7
北村寿夫の新諸国物語シリーズ「笛吹童子」(岡友彦)、「紅孔雀」(佐藤広喜)、
「オテナの塔」(南村喬)。ラジオを夢中で聞きました。福田蘭堂音楽。
森鴎外が世界各国の短編を訳したのが「諸国物語」。ポーの「メイルシュトレームの大渦巻」などが入って
います。北村寿夫の新諸国物語はそのあたらしいシリーズという意味でしょうか。こっちは日本の伝奇物語ばかり。
終戦間もないころ、日本人は戦いはもうこりごりだと思っていました。ですから「笛吹童子」は、能面の彫り師
であり、お家再興よりも、平和な世の中にするため、人々の心をなごませる白鳥の面の完成をめざします。
「少年画報大全」(2001年少年画報社)を読んでいると、テレビ劇とタイアップしたマンガ「白馬童子」の作者
が南村喬となっていました。「オテナの塔」を描いた絵物語作家と同一人物ではないかと思って、絵をよく見
ましたが、絵物語とマンガではタッチが全然違っていて、確認できませんでした。しかし白馬童子の衣服の描写
はマンガとは言え、達者なもので、同じ画家が絵物語の経験を生かしたのではないかと思います。(ところで
「少年画報大全」の巻末の資料一覧の充実ぶりはすごい。)
さらに「週間少年マガジンカラー大図解」講談社1988年(「少年画報大全」の巻末の資料一覧から孫引き)を
見ると、「少年マガジン」の巻頭大図解の画家の常連として、南村喬之(みなみむらたかし、と読みは同じ)と
いう名前が出てきます。昭和40年から46年ころまで、「少年マガジン」が日本一の部数を誇った時代に、鬼才
大伴昌司が毎週企画・構成した巻頭大図解が雑誌の目玉のひとつになっていました。「オテナの塔」の画家は
挿し絵の世界に戻ってきて、ブームの一端を担ったものと推定します。