絵物語を求めて E.H.シェパードの挿し絵
絵物語はなくなってしまいました。マンガ雑誌を見ても、新聞を見ても、「少年王者」や
「大平原児」のような形式の読み物を見ることはできません。
しかし、小説に、すばらしい挿し絵がついているのを見ると、子供のころ、「少年ケニヤ」の一こまを模写した
ように、模写したい気持ちにかられます。
山川惣治とユーミンが雑誌で対談し、「あたしゃ、ラッカムの絵が好きでね。」と山川が発言すれば、図書館で
「ニーベルンゲンの指輪」を借り出さずにはいられません。
本屋で、沢野ひとし「少年少女絵物語」という文庫本のタイトルを見つけると、もしやと、手にとってみずには
おられません。
大学時代、paperbackのWINNIE-THE-POOHを英語の勉強をかねて読みました。E.H.Shepardの挿し絵は、山川惣治
以来、はじめて私が模写したいという欲求にかられた絵でした。PoohとChristopher Robinがつれだっていく森の
木々の線はすばらしい。ぬいぐるみの動物たちを模写したいとは思いませんが、木や川や、Christopher Robinの
描写はすばらしい。その書き方を習いたいという気がしました。
三島由紀夫は大学の法科に学び、法律の中に「文学」をさがしていたそうです。
わたしは、今はもう失われてしまった日本の少年絵物語のなごりのようなものを、小説やマンガや挿し絵の中に探して
います。