15.山川惣治の絵の魅力13 りりしい美少年
戦前の「少年倶楽部」をゆるがした事件に「華宵事件」というのがあります。「少年倶楽部」の人気 挿し絵画家高畠華宵が稿料のことで編集部と折り合わず、ライバル誌の「日本少年」へ変わってしまい、「少年倶楽部」 は部数が激減してしまったというものです。これがきっかけになって、「少年倶楽部」編集部は、山口将吉郎、伊藤彦 造、椛島勝一などの新しい画家を発掘し、かえって以前以上に人気が出て、黄金時代をむかえるのですが、とにかく 高畠華宵の人気はたいへんなものだったらしい。そしてその人気のひみつは華宵の描く美少年にあったと思われます。
女とみまがうような美少年を描くのが華宵の得意技でした。山口将吉郎も、伊藤彦造も美少年を書いた。椛島勝一は 書かなかった。そして椛島勝一を手本としていた山川惣治は美少年を書きました。
山川惣治の書いた少年の顔で、私がすきなのは、このページの最初にかかげた、「少年ケニヤ・第十一巻」の表紙の 絵です。
昭和30年頃、少年小説の挿し絵で、主人公の顔を大きく、美しく描くのが流行りました。山川惣治の主人公の顔で
いちばん整ったものはこのころ描かれました。(「少年ケニヤ・第十一巻」は昭和30年4月の発行です。)梁川剛一
も「鋼鉄魔人」の挿し絵で美少年を描いています。小松崎茂は「銀星Z団」の中で美少年が宇宙旅行に耐えられる身体に
なるために電撃を受けるシーンを描きました。