15.山川惣治の絵の魅力11 怪物
山川惣治の絵物語の魅力はなんといっても、いろいろな怪物に出会えることでしょう。
子供のころ、多分集英社の幼年雑誌でだと思いますが、覆面をした怪人が家の中に入ってくる山川惣治の絵物語を
読みました。覆面の人物は衣服のしわの一本一本まで微細に描かれ、すごい迫力で、たいへんこわかった。小学校
まで本棚にあったと思いますが、もう何十年も前に捨ててしまいました。これがこの作家の常套手段と思います。
「少年ケニヤ」でマサヤ絶壁の途中で出会う大トカゲ。狭い回廊のような岩の道で曲り角のむこうから顔をだして、
ワタルや村上と鉢合わせした瞬間です。大きな顔がすぐ前にあり、ぎょっとします。トカゲの目はやさしく、敵意は
なさそうに描いてあるのがすごい。目をこわくするなどの小手先のテクニックは使わず、構図による迫力でみせている
絵です。トカゲの描線はこころもち細く、鏡の向う側にいるようにぼんやり描かれています。それに対し、村上と
ワタルは太い線で描かれ、こちら側にいることが強調されています。そうすることによって、トカゲが現実のもので
ないような、白昼夢をみているような不思議な感じが出ています。
「少年王者」幼年ブック版。ブロントザウルスの太い首の筋肉のすごさよ。
「少年ケニヤ」湖水の奥に何万年も棲息していた有史前の怪物「原始ガメ」。