15.山川惣治の絵の魅力10 筋肉の躍動
「少年ケニヤ」の一場面。ワタルがナチの下士官の枕元から牢屋のカギをさがしていると、ぐっすり眠っていたはずの
カイゼルひげの下士官がおきあがってピストルを構えています。このドイツ兵士の絵は抜群にうまい。手足の長い外人
がボタンが横っちょについた、しゃれたパジャマを着て、ベッドに腰かけながら、重そうなピストルを構えています。
ピストルの高さ、腕のまげ具合、眉のしかめようなど名人芸といってもよいでしょう。
このピストルはたぶん少し大きく描かれているのでしょう。読者が不自然だと思わない程度に。マンガでよくやる手法
ですが、山川惣治はリアルな絵を描くと見せて、微妙なトリックをしかけています。
山川惣治は人物のプロポーションを描くのが、非常にうまかった。とくにジャングルもので、裸の人物が、立派な筋肉
を躍動させるアクション場面は、力のこもった、素晴らしいものでした。
「少年エース」では、主人公の書き方にいちだんと優美さが加わったように思います。