15.山川惣治の絵の魅力6 叙情性
上の絵は「前世紀少年サピン」の一こま。泥沼に足を取られて動けなくなったマンモスに、みんなが
石をなげているのをサピンはぼんやり眺めています。かれは自分をかばって犠牲になった愛犬・いわを膝に抱いて
悲しみに沈んでいます。山川惣治の絵物語では遠景のコマがとくに叙情的です。また人物の後ろ姿が多い。読者は人物
と視線を共有することにより、絵物語の中の人物に共感するのでしょう。
「少年エース」で進治を口にくわえて泳ぎ出したあざらしハニー。ハニーと進治はいまちょうど、高いうねりの頂点に
おり、広く見渡せる大海原のむこうに小さくあざらしの群れがみえます。
「少年王者」。湖のほとりで、父母の建てた小屋を発見した真吾は、母の墓にそれと知らず、花をたむけます。その
墓標の文字!読者は真吾とともにかぎりなくロマンチックなその文字を読みます。(子供むけの物語、マンガで、
こんなロマンチックな言葉に出会ったことがありますか!)
「少年ケニヤ」旅を続けるワタル、ゼガ、ケートの三人。ジャングルの木陰のむこうに、なつかしい三人が見えます。
図案化された絵。