山川惣治と絵物語の世界page1502  picture

 

15.山川惣治の絵の魅力2

pict lion

山川惣治は自分が野生動物になり切ったように、動物の躍動する姿態を描きます。これがアメリカ製 ターザン映画でも表現できなかった迫力のもとでした。

左上は少年王者・ザンバロ篇、カヌーのザンバロを襲ってきたワニです。こういう場面は映画でも撮れないので、絵 物語の独壇場でした。いまなら野生動物保護協会からクレームがつくかも知れません。悪人を狙撃して射殺するのは いいが、ワニを撲殺するのを描写するのは問題があると。

右上は「少年ケニヤ」第一巻、ゼガの長槍に差し貫かれて、血を吐きつつ、大息をついているライオンです。私 は、この絵を見ると、想像したくなります。この絵をかきながら、ライオンがあえぐ様子を自演して、ライオンに魂を 吹き込もうとしている山川惣治を。

山川惣治の動物画の中でいちばんの傑作は、「少年王者」で、大ワニ・ガランビの背中に短剣を持った真吾がかじりつき、 振りはなそうとするガランビが水面より高く跳ね上がった瞬間を描いたものです。それはポスターにして部屋に 飾ってもよいくらいの傑作です。実際はワニはここまで活動的ではなく、水を飲みにきた動物の足にかみついて、水中に 引きずりこんでおぼれさせるだけの動物と思います。しかし山川惣治の想像力と描写力はもっとロマンチックな場面を 作りあげました。

ちょうど手許に資料が無いので、「真吾・ガランビ」をご紹介できません。 山川惣治自身が「少年ケニヤ」の中でよく似た姿勢のワニを描いた場面と、小松崎茂が「真吾・ガランビ」を見習って 描いた絵で偲ぶことにします。本家の絵は集英社の復刻版か角川文庫(いずれも古本)でみられるでしょう。

crocodile pict


.山川惣治の絵の魅力3へ
1頁もどる
ホームページへ