14.山川惣治のライバルたち 岩井川俊一
岩井川俊一は小松崎茂のお弟子さんです。しかし画風は戦前からの大家・椛島勝一にそっくり
でした。
小松崎茂と山川惣治の対談(筑摩書房・「少年漫画劇場1」)で、小松崎が、自分の弟子の中にも、山川惣治や、
椛島勝一の絵を練習しているやつがいたと発言しています。このうち椛島勝一の絵に心酔していた弟子は、
岩井川俊一でしょう。
岩井川俊一は「漫画王」に原作つき絵物語を連載していました。その動物画は迫力がありましたが、山川惣治の
ように感情が吹き込まれていることはありませんでした。野獣の写真に近かったように思います。もし私たちが、
アフリカの草原でライオンやシマウマをみると、その感じは岩井川俊一の絵に近いと思います。その点では椛島
勝一や岩井川俊一のほうがよりリアルかもしれません。しかし、絵画にはロマン派というか激情をこめた絵がある
と思うのです。ドラクロアの「自由の女神」とか、ジェリコーの「メデューサ号の筏」とかですね。山川惣治は
ロマン派でして、ドラマチックな動物画を書いたと思います。
「おもしろブック」付録の「冒険船長」は岩井川俊一の代表作でしょうか。全編椛島タッチの絵で、「完成された
もの」という感じです。ただ人物の顔はあまり子供好きのする絵ではなかったように思います。人物の顔を
みると岩井川俊一の書いたものであることがわかります。
つぎの絵は左が椛島勝一で、右が岩井川俊一です。似ているでしょう。
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