「冒険船長」の原作について
岩井川俊一の絵物語「冒険船長」の原作を読みたいと思い、webで検索してみました。
その結果、ドッド・オーズボーン作「七つの海の狼」を近くの図書館から借り出すことができました。また、同じ
作者による創元社・現代ロマン文庫「冒険こそわが宿命」を古本で手にいれることができました。冒険船長の原作は
「七つの海の狼」のほうです。
「七つの海の狼」の原題はMaster of the girl Patt( パットお嬢さん号の船長)です。これは、非常の冒険好きの
船乗りが自分の半生の体験をノンフィクションにしたものです。
「七つの海の狼」の中には、絵物語「冒険船長」のエピソードであるインドでの虎狩りも、南米ギアナで不時着した
探検家を捜す話も、真珠を捜す話も、ドイツ軍の武器庫を爆破する話もふくまれており、その他にもいろいろの
冒険潭が載っていました。
これは少し古風な書き方のノンフィクションでしたが、私には大変おもしろかった。作者の無鉄砲な、男らしい
冒険狂的な態度はなかなか面白かった。しかしおもしろ過ぎて、はたしてひとりの人間にこんなさまざまな冒険が
できるものだろうかと、素朴な疑問がわいてきました。これだけ危険な目にあって、生きておれるわけがない。
叙述には、古風な通俗小説のテクニックを感じさせるものがあり、引退した船乗りの法螺話のおもむきもありました。
作り話かもしれない・・・・・
しかし「冒険こそわが宿命」を読んで、たしかにこれは、実話に違いないと思うようになりました。なぜなら、
「冒険こそわが宿命」のエピソードは「七つの海の狼」のそれと80%同じで、前の本に書かなかったエピソード
を少し加えて、焼き直したものでした。面白いエピソードは「七つの海の狼」にでてきたものとほとんど同じでした。
もし作り話ならば、少なくとも半分以上は新しい話がでてくるでしょう。エピソードが限られていること自体、
それが実際にあったことの証拠だとおもわれました。「冒険こそわが宿命」は「七つの海の狼」を読んだあとでは、
あまり面白くありませんでしたが、エピソードの信ぴょう性を確信するもととなりました。
矢吹寿訳「七つの海の狼」は昭和25年(1950年)に思索社から出版されていました。そして、昭和27年、
子供向きの「七つの海の狼」が偕成社からでていました。これは訳者があの柴田錬三郎センセイでした。シバレン
先生は文名の上がる前にアルバイトに子供向きの冒険物語の再話を手掛けたものと見えます。岩井川俊一の絵物語
「冒険船長」は、たぶん柴錬版「七つの海の狼」からさらに拝借したものでしょう。「冒険船長」は「七つの海の狼」
の面白いところを上手にピックアップしていますが、その手柄の一部はシバレン先生に負っているんじゃないかと
推定します。(柴錬版「七つの海の狼」は、まだ読んでいません。)