山川惣治と絵物語の世界page1422  

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14.山川惣治のライバルたち 小島剛夕

 

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    小島剛夕は息の長い作家です。手塚治虫や白土三平とほとんど同じくらいの年月、現役で活躍 しました。山川惣治は戦前をいれても小島剛夕より活躍の期間は短いかもしれません。

しかし、白土三平の「カムイ伝」をてつだっていたころ、「自分は手塚や白土のような芸術家じゃない。」と 言っていたように、徹底した職人でした。自分で考えるストーリーは古くさく、「子連れ狼」のような原作つきの マンガのほうが書きやすかったのではないかと思います。

この人の書くチャンバラはリアルで迫力があった。昔の絵物語のひとコマを紹介します。「隠密ゆうれい城」。

こう見ると絵物語作家の中で、いちばんダイナミックな絵を書くのは小島剛夕で、山川惣治以上であることが わかります。

また絵物語で、映画のオーバーラップの効果を出した数コマがありました。手塚治虫はよく、マンガの場面転換に アイリスインやフェイドアウトに似た手法をつかいましたが、オーバーラップはなかった。小島氏の試みは アイデアだおれに終わった感じでしたが、絵物語でないとできない芸当と思いますので、そのチャレンジ精神への 敬意をこめて、紹介しておきます。(右のコマから左へ見ていきます)

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小島剛夕ははじめから吹き出しのついた絵物語をかき、そのコマ運びはストーリーマンガのそれでした。またマンガ のように擬音(オノパトペ)も画面上に書き込んでおり。地の文はわずかでした。したがって、はじめから、絵物語 タッチの絵によるストーリーマンガを書いていたのであって、コマ運び(コマ割り)が次第に洗練されたにせよ、 亡くなるまで、そのスタイルのままとも言えます。

現在の白土三平の絵は弟の岡本鉄二という人が書いているらしいのですが、小島剛夕そっくりのタッチです。人物が 驚いたとき、汗をかいたような表現をするのが違うくらいです。岡本鉄二さんは白土三平に似ず、小島剛夕の絵に にてしまったんですね。だから表面上は白土三平が小島剛夕の影響を受けて絵が変わったように見えます。 アシスタントが師匠の絵そっくりになるのはよく見るのですが、逆のケースは珍しいと思います。


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