14.山川惣治のライバルたち 伊藤彦造
「源九郎義経」の挿し絵。部分。あえて部分だけにしたのは、ものすごく細かいペンのタッチが、縮小すると見えなく
なるからです。
伊藤彦造は戦前の人気挿し絵画家で、少年倶楽部誌上で活躍しました。
佐藤まさあき著「劇画の星をめざして」には雑誌「冒険活劇文庫」に伊藤彦造の絵物語「阿修羅天狗」が掲載されて
おり、その流麗なペンタッチと主人公のカッコよさに感嘆したことが書かれています。ですから伊藤彦造は戦後、
絵物語を書いていたのですが、私は直接見たことがありません。(「劇画の...」はあまりタメにはならんが、佐藤
まさあきの劇画からは想像できないほど面白い本です。買う必要はありませんが、図書館にあったら読んで御覧なさい。)
岡友彦の絵にも伊藤彦造の影響が見られます。
戦後、小学館の学年雑誌などにかいていた伊藤彦造の挿し絵はあんまり細かすぎて、子供だった私達には、ぴんときません
でした。戦前の「少年倶楽部」の挿し絵の一傾向である細密画も武具の精密な描写などの方向へ極端に突き進むと高踏的で
よそよそしくなります。
最近伊藤彦造の作品集を見ましたが、戦前戦後を通じて、一貫してこのタッチであるのには感心しました。人気が出ようが
出まいが一貫した描法を追求するのはすごい。さらに娘さんも父親と全く見分けのつかないタッチであったそうで、やっぱり
ただごとではないと思います。
伊藤彦造は精密ペン画の方向を徹底的に追求する道を選んだのだという気がするのです。