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13-24 ジャングル物語の系譜 映画・ターザンの復讐

「ターザンの復讐」(原題はTarzan and his mate)というビデオを借りてきました。

この中には「少年王者」や「少年ケニヤ」にそのまま利用されたであろう場面が多数でてきます。

蛮族に襲われた探検隊が聖なる絶壁に逃げ込むと、そこは聖地であり、「土人たち」は恐れて追って来ない。(王者)
その絶壁を登り始めると、ゴリラの投げた岩が落ちてきて、「土人」の人夫がおおぜい、落ちて死ぬ。(王者)
ワニがターザンを襲ってくる。これは実物大の模型を使って撮影している。したがって体軸を中心にぐるぐる回ること しかできない。ターザンをふりはなそうとやたらぐるぐる回る。ターザンは短剣で刺して退治する。(王者)
犀が突進してくる。これは犀が走ってくるのを実写で撮影し、セットの中で上映して、そのスクリーンの前で人間が 演技している。当たる一瞬前に左右によけると犀はそのまま走り抜ける。当たる瞬間にショットを切り替えている。 (王者、ケニヤ)
ターザンは犀の背中に乗って、首筋を短剣で刺し、退治する。慣らした犀(多分子供の犀)の背中に乗って走る。 刺す瞬間は、犀の背中の模型の上に乗り、背景の方を走らせている。(王者)
セットの中に大木を這わせる。つたにぶらさがって飛ぶ場面では、しばしば背景の映像を後方に流し、流麗感を 高めている。(王者)
ターザンは象の背中に乗って、群れを引き連れてくる。インド象に大きな耳をつけた扮装をさせて、アフリカ象に 仕立てている。(王者、ケニヤ)
襲撃してくる未開の種族が、動物のろっ骨を多数組み合わせたかんむりのようなものをかぶっている。(ケニヤ)

日本での公開の年と、「少年王者」の発表の年を比べると、山川惣治は右から左にまねしたようです。

映画の動物の場面はあまり迫力はなく、ペン画で犀が突進するのを描く方がかえってリアルかもしれません。絵物語が 人気だったのは、そんな事情もあったのでしょう。

ターザンが犀にまたがるエピソードは、動物園に、子供の犀がいて、人間をのせて走れるということから、はじまったの ではないでしょうか。まずターザンが犀にまたがって走る、短い場面を撮影し、模型の犀の上で、短剣を突き刺す 場面を追加したのだと思います。ターザンが犀にまたがる場面が原作にあるかどうか怪しいものです。山川惣治はこの エピソードにこだわる必要はなく、もっとほかの場面を書こうと思えば書けたのに。律儀にエピソードを写しています。

ワニがぐるぐるからだをまわして、ターザンを振り切ろうとする場面も出てきますが、これはワニの模型のできが悪く、 からだを回転させることしかできなかったので、そんな場面にしたのだと思います。「少年王者」に、同じ「ワニの回転」 が出てくるのは、山川惣治が、実際にあることだと思っていたのでしょうか。山川惣治が書くと本当らしく思えるので、 私は子供のころ、犀のエピソードもワニのも全く信じておりました。

「類猿人ターザンの復讐」は昭和9年に日本で上映され、戦後昭和21年に再上映されている。再上映のとき、題名から 「類猿人」が無くなったそうです。


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