13-25 ジャングル物語の系譜 映画・類猿人ターザン
「類猿人ターザン」(原題はTarzan the ape man。類人猿でなく類猿人である)のレーザーディ
スクを図書館でみました。
この映画の中にも、「ターザンの復讐」同様、山川惣治が拝借してきた場面が散見されます。ターザンの居るムチア
絶壁の奥のジャングルでの物語です。
探検隊がいかだで川をわたろうとするとカバが寄ってきて、あわてただれかが発砲すると、カバが暴れ出して荷物を
おとしてしまうシーンは「少年王者」にあります。(リビングストンの探検記の一場面の映画による再現。)
ラストでは探検隊はピグミー族につかまって、牢屋におしこめられ、ひとりずつなげなわでつりあげられて、
「ゴリラのような怪物」のえじきにされる。ピグミーたちは太鼓や笛を鳴らして大興奮という場面。なわで引き寄せ
られるところは「少年王者」に、「ゴリラのような怪物」に生け贄にされるのは「少年ケニヤ」の白ゴリラのエピソ
ードにそのまま借用されています。
私が感銘をうけたのは、ピグミー族を下垂体性の成長障害の人たちがスキンヘッドにして、からだを黒く塗って演じ
ているのですが、そのひとりが、残酷な種族を大熱演で演じていることでした。生け贄がつぎつぎに犠牲になるに
連れ、音楽にあわせて喜ぶまいことか。大興奮となるのが、全く力が入っていて、その場面はその人だけでもってい
るような感じでした。
「ゴリラのような怪物」という表現をしたのは、その場面が極端に暗い照明の下で撮影されていて、怪物のシルエット
くらいしか、映らないからです。たぶん、ゴリラのぬいぐるみがあまりにもちゃちで、普通に撮影したんでは、お笑い
にしかならないので、極端に照明を落として、誤魔化すと共に、凄みを出そうとしたのでしょう。
実際のピグミーは森にすみ、平等社会を作って暮らす平和な猟人です。(「森の猟人ピグミー コリン・ターンブル著
筑摩書房刊世界ノンフィクション全集/9」、「森の狩猟民 市川光雄著 人文書院」など)。アッティリオ・ガッ
ティ作「サランガの冒険」でももう少し、ましな描きようをしています。