森田思軒訳「十五少年」(19)
森田思軒訳「十五少年」の第一回はもう少し続きますが、波多野完治訳ではここがちょうど第1章の終わり
になっています。船が大波に運ばれて砂浜を突進し、傾きながら座礁したところです。
漢文調の文章はかっこいいですねえ。まねしたくなります。
ただちょっとわかりにくい箇所もあります。否定の否定になっているところ。「余等は余等の一身の他に、
更に思わざるベからざる者あるを、忘るべからず」とか。すぐに意味がとれません。「思い出さずにはいられない者」
とは家族のことなんでしょう。「家族があることを忘れるな。」というのをまわりくどく言っています。「さらば其の
帆を裁り去らざるべからず
。」というのもわかりにくい。「では、その帆をとってしまわなくちゃ。」と言ってるんですね。あまり意味がわかり
づらくなったら、美文調は捨てるべきでしょう。「捨て去らざるべからず」です。
三一書房刊「少年小説大系」に森田思軒の巻があり、「十五少年」が入っていたように思います。このあとが読みたい
方は図書館で検索してみてください。