12-3-4.吹き出しを持った絵物語4
福島鉄次の「いなずま童子」。
吹き出しのある絵物語です。絵のタッチは「砂漠の魔王」とすこしも違っていません。陰影の付け方は山川惣治
とはちがいますが、これはこれなりに魅力ある福島流です。
「いなずま童子」でも人物のひとりごとや思ったことなどが吹き出しの中にかかれています。極彩色なので、どうしても
アメリカン・コミックの吹き出しの使い方を思い出してしまいます。
しかしさすがは福島鉄次で、少々セリフがぎごちなくとも、魅力ある物語を作り出しています。この号では青い石で
できたライオンの顔をした石像たちがおそってくるのですが、この石像をやっつけるには同じ石でできた剣ややりや
弓矢をつかえばいいのです。いなずま童子たちが石像たちをつぎつぎとやっつける場面はふしぎなカタルシスがあり
ます。
これをみると福島鉄次は戦車や兵隊を描くのだけが好きではなく、「アラビアンナイト」のような魔法が支配するおとぎ
話のほうにむしろ興味があったようにも思えます。「指輪物語」のようなファンタジーが読まれる今日、彼が現役であれば
どんなすばらしい作品を残したことでしょう。
最後に石像たちをあやつる獅子面の怪人が登場します(上の絵)。この人物のセリフの迫力は十分で、福島鉄次がす
ぐれたストーリーテラーであったことをしめしています。怪人の腕のバンダナと胸のたすきのおしゃれなこと。ひそ
めた眉をもったライオンの顔は、山川惣治描くライオンとはちがったすごみがあります。