page1232

picture

 

12-3-2.吹き出しを持った絵物語2

picture

 吉田竜夫の「プロレス五郎」。やはり絵物語時代末期の作品です。

 吉田竜夫はアニメーションのタツノコ・プロの主催者ではないかと思います。

 九里一平(海底人8823)は漫画に転向した吉田竜夫ではないかと思っていましたが、弟さんだそうです。非常によく似た 線です。吉田龍夫の絵物語のアシスタントのひとりだったのでしょう。吉田竜夫の周辺にはもうひとり絵物語からまんが に転向したひとがいます。----0戦はやとの作者は吉田竜夫の級友で、やはり 絵物語を書いていたが、まんがに転向したそうです。まんが「タイガーマスク」は絵物語「プロレス五郎」の後輩 であることは確かです。両方とも梶原一騎が原作者だったと思います。「プロレス五郎」の方は原作者のタイトルなし ですが。

 「プロレス五郎」ははじめから吹き出しがはいっていました。まんが風の絵物語です。

 上の絵の吹き出しの内容をみると、主人公の気合いと、対戦相手の悲鳴だけですので、なくてもいいようなものですが、 あるとたいへんわかりやすい。対戦相手の吹き出しが血痕のように刺のある円形で、悲鳴であることがよくわかります。

 地の文は絵の外ではなく、まんが風にコマの中の絵に重ねて書かれています。こうなると絵が省略のないリアルな絵で あること、地の文が筋を運ぶことの他はまんがと変わりません。

 絵物語の定義をするとき、絵がリアルなペン画であることをいうひともありますが、この絵のように、筆で書かれた 作品もあったようです。「プロレス五郎」は最初は山川惣治風のペン画だったのですが、だんだん上手になり、人気も出 てくると、意欲的に画面を変えていって、このように筆で色をつけた絵も書いたのでしょう。

これは巻頭のカラーですから、人気のほどがうかがえます。洗練された絵です。

pict2
といっても上の絵のようにコマの外に地の文が書かれたところもある。吹き出しと絵の一部はこのころの手塚 まんがの影響でコマの外へ飛び出している。絵物語のテクニックとマンガのテクニックの混合したなんでもありの 世界です。

吉田竜夫はのちにマンガ家に転向し、「少年忍者部隊月光」などをかいたそうですが、私は読んでいません。


吹き出しを持った絵物語3へ
1ページもどる
ホームページへ