12-1-7.リアルな細密画と単純化した線画 7(諸星大二郎)
諸星大二郎の絵をCOMではじめて見たとき、山川惣治に似たタッチなので、なつかしくどきどき
しました。
非常にへたくそなところもあったので、この人は上達すると、山川惣治そっくりになるかもと思っていたのですが、
ある程度へたくそなまま大成したようです。アンリ・ルソーのように。
上の絵は「マッドメン」の冒頭です。絵物語風の細密画ではじまり、次いで、単純な線で
書かれた人物が登場すると、だんだんマンガになっていきます。諸星大二郎は、細密画によって、奇怪なもの、不思議
なものを描く作風を確立したようです。
先日、時間つぶしのため、まんが喫茶なるものにはじめてはいった私は諸星大二郎の「西遊妖猿伝」をはじめて読んで
、孫悟空の女の子か男の子かわからない可憐な登場の仕方に、「少年ケニヤ」の冒頭の幼いワタルの描写を思いだし
ました。孫悟空が首かせをいれられて護送される場面にも、美少年が苦しめられる場面をよく書いた山川惣治を
思い出させるものがあり、山川惣治の作風を引き継ぐのはやはりこの作家ではないかと思いました。「西遊妖猿伝」
が長く書き継がれることを祈ります。
(諸星大二郎の絵が山川惣治を思い出させるということを司猿介という人が「まんだらけ・15号」に書いています。
私もそう思います。しかし、夏目房之介氏は「風雲マンガ列伝」の中で、「諸星大二郎の絵が誰の影響かよくわからん」
と書いています。そう言われると自信がなくなります。手塚治虫は模写の名人で、他のマンガ家の描線を
そっくり真似できたそうです。「できないのは諸星大二郎ぐらい」だったそうです。手塚治虫が諸星大二郎の絵が
模写できないのは、山川惣治のオンネンだと思うのですが。)