12.現代マンガに見られる絵物語の影響
絵物語とはなにか。絵物語とマンガの違いは?----これについて絵物語に取って変わったストーリー
マンガの第1人者・手塚治虫は実作者らしい簡単明瞭な定義を述べています。すなわち「地の文があるのが絵物語で、
吹き出しのあるのがマンガだ」と。
しかしこの定義だと永松健夫の「黄金バット」は吹き出しがあるので絵物語の範疇に入らなくなってしまいます。岡友彦
の「白虎仮面」も吉田竜夫の「プロレス五郎」も福島鉄次の「いなずま童子」も絵物語に入らなくなってしまいます。
「釣りキチ三平」の作者矢口高雄は(1)リアルで精緻なタッチのペン画と(2)ドラマは文章で付記するのが絵物語
の手法だと述べています。(「ロマンとの遭遇」)矢口氏の定義のほうが絵物語全般を指すのに好都合のようです。
そこで実際の絵物語やマンガを見て、両者の違いを考えていきたいと思います。とくに両者の境界線近くにあるような
作品が参考になるでしょう。
それは五つの話題にわかれます。
1.リアルな細密画とデフォルメされ単純化された線画の組み合わせ
2.地の文を持ったマンガ
3.吹き出しを持った絵物語(または絵物語時代の末期)
4.桑田次郎の遍歴
5.なぜ絵物語はマンガに負けたか