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作品論16-1

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少年ケニヤ序論。

山川惣治の作品論を、彼の作品の中で最長の「少年ケニヤ」で閉じることは当たり前の選択 でしょう。

「少年ケニヤ」は最長の長編絵物語であるだけでなく、山川惣治の代表作であり、おそらく戦後の少年絵物語の中で 最良の作品です。

「少年ケニヤ」は、日刊新聞に連載された最初の絵物語であり、山川惣治は少年雑誌の読者のみならず、日本全国の読者を 獲得しました。そのため大人の鑑賞にも耐える物語がうまれました。

「少年ケニヤ」は、ジャングルブックやターザン物語から出発した作者が自分のオリジナリティをもっとも発揮した作品 です。主人公ワタルの扮装はぼろぼろになったシャツがたすきのように胸にかかっているもので、敗残兵となって ビルマやフィリピンやニューギニアの熱帯雨林をさまよった旧日本軍の兵士を連想させます。日本人でなければ書 けなかったジャングル物語でした。

「少年ケニヤ」は山川惣治が繰り返し描いた「父探し」の物語の中で、最も強烈にそのテーマを押し出して、最も成功 した作品です。

「少年ケニヤ」は山川惣治の絵物語の中で、「ノックアウトQ」に負けず劣らずリアルであり、「少年王者」に負けずおとらず ロマンチックであり、「少年エース」に負けない愛らしさを持っています。

「少年ケニヤ」はまた山川惣治の素晴らしい動物画が次々に展開する物語で、作者の長年の努力が最も発揮された作品と 思います。

それでは「少年ケニヤ」の魅力をその登場人物から見ていくことにしましょう。


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