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作品論7「新・少年王者」

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「白鯨」のあと、構想も新たに書きはじめた「新・少年王者」。その第1回は、いきなり洋上に 墜落する旅客機と、事故の報に接して涙する吉川すい子です。(すい子さんは最初だけでその後さっぱり 出てきません。代わって外人の女の子が登場します。)山川惣治の長篇絵物語では最初に悠々と物語の舞台を 説明するのですが、「新・少年王者」の場合は、明らかに違っています。

ただちに事件がおこり、読者を物語に引き込む必要があったのでしょう。

飛行機事故にあい、海中に投げ出されたとき、強く頭を打った真吾は、記憶をなくしてしまいます。

今回の真吾は、アフリカの密林で暮らすゴリラたちのコミュニティから離れ、たったひとりで、自分が何者かも忘れて しまい、たいへん孤独です。

いつも頭に包帯がわりの布を巻き付けているのが、痛々しい。---絵物語の人気がマンガにおされ、朋友小松崎茂も、 絵物語から撤退して、口絵と、読み物の挿し絵を書いており、絵物語作家がつぎつぎ消えていく中で孤軍奮闘する 山川惣治の姿を現しているようでもあります。

大だこに持ち上げられ、巨大な口に持っていかれる手前で足をふんばり、目と目の間に銃弾を乱射する真吾。銃を 使ったアクションは「少年王者」では始めてで、新鮮味がありました。

真吾は誘拐された原子科学者を助けるのですが、この科学者が研究成果を記録した、8ミリ映画フィルムの絵が印象 に残っています。この研究を悪漢どもから守ることが、人類の平和につながるのであり、やっと全世界的なスケール のお話になったからでしょう。

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