作品論6 白鯨
わたしは山川惣治の「白鯨」を全部は読んでいません。読んだ範囲で書きます。
「少年王者・ザンバロ篇」が完結したあと、山川惣治はハーマン・メルヴィル原作の絵物語「白鯨」を連載しました。
丁度その頃、手塚治虫は、雑誌連載時代の彼の最高傑作「ライオンブックス・シリーズ」を書いていました。手塚治虫に
ライオンブックスを書かせたのですから、当時の「おもしろブック」の編集長はえらい人だったのでしょう。その
編集長の時代に山川は「白鯨」を書いたのでした。
ジョン・ヒューストン監督、グレゴリー・ペック主演の映画「白鯨」が日本で公開されたころでした。山川惣治は本歌
どりをするのが好きなひとで、作品のオリジナリティにこだわらず、ブームに便乗するのを躊躇しませんでした。
白鯨で山川惣治のしたことは、エイハブ船長の顔を書いたことです。私は映画のグレゴリー・ペックよりも、山川惣治の
描いた、絵物語のエイハブ船長のほうが、ずっと主人公の性格をよく表していると思います。
海の怪物モビィ・ディックのすごさも映画に負けません。
岩波文庫の「白鯨」をみると、山川惣治の絵そっくりの構図が沢山みつかります。山川惣治は、なんとアメリカ版の
銅版画そっくりの構図の絵を描いたのです。資料重視の現れでしょうか。
連載はせいぜい1年で終わりました。山川絵物語は展開が速く、文庫本3册ぶんをあっという間に語ってしまいます。
名作のダイジェスト版にはよいかもしれません。