作品論5-3 少年タイガーと怪人の登場
「少年タイガー」の3分の1をとっくに過ぎた頃、怪人ブラック・サタンがあらわれます。
「少年王者」で、魔神ウーラの登場が発端からの3分の1位のところだったのと似ています。一番の強敵は途中から
悠然と登場するのです。
ブラック・サタンの登場は素晴らしいエピソードですので、ちょっと見てみましょう。
アーレンは、ラー・バンダ国に墜落した飛行機からの無線機を手に入れ、修理して、文明社会と連絡をとりたいと
考えます。かれは部下に命じて、大木の枝を払い、針金を引いて、高いアンテナを作ります。
アンテナと無線機をつないで、無電を発信しますが、応答はありません。何度も何度も試みても、電波の出力が弱い
のか、全く応答なしです。やっぱりだめかとあきらめかけたとき、レシーバーが鳴り出します。
雑音とともに、明瞭な人間の声がきこえてきます。「ハッコン、ゴデム、電波を発信するものは何ものか!その地域
には電波を発信できるものはないはずだ。何者かーっ。」「こちらはアーレンという探検家だ。電波を受信してくれた
のか。救助を乞いたいのだ。」「なに、救助?こちらはブラック・サタン。サタンは人を救助しない。ワァッハッハッ
ハ。」それっきり、声は聞こえなくなってしまいます。
ブラック・サタンは最初、声だけでしか登場しないのです。実際に姿を現すのは、新聞では1ヶ月以上も先なのです。
読者が忘れかけた頃、文字どおり、天からふってくるのでした。