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作品論4 青銅の魔人(挿し絵)

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江戸川乱歩の少年向き探偵小説「青銅の魔人」の挿し絵は山川惣治が描きました。

この挿し絵における山川惣治の功績は、青銅の魔人を実際にデザインしたことでしょう。

中世の西洋の甲冑に似て、もっと鋲がいっぱいついた、黒人をイメージしたデザインをかれは考えました。光文社の 少年探偵シリーズの広告が「少年クラブ」にも載りましたが、青銅の魔人が、真夜中の大都会を飛び跳ねていく、奇怪 な場面が引用されていました。

この魔人のデザインは傑作だったと思います。山川惣治は、人をぎょっとさせるもの、気味が悪くて、しかも卑小で ないもの、ちょっと愛嬌のあるものを描くのが得意でした。ひとことでいうと、怪物をかくのが好きでした。

小説家が言葉で描写したものを、絵に描いてみせるのが、挿し絵画家の仕事です。デザインも挿し絵画家の仕事なの です。

横山光輝の人気マンガ「鉄人28号」で途中まで28号と呼ばれていたロボットは実は27号であって、本当の28号は 別のロボットだったことが判明します。作者は28号のデザインをやりなおしたのです。キャラクターデザインが 大事なこと、マンガの場合、作者がデザインを担当することがわかります。

特撮の神様・円谷英二は、映画「地球防衛軍」のロケットや兵器のデザインを小松崎茂に依頼し、あたらしい デザイン画が届くたびに喜んでいたそうです。

ポプラ社が少年探偵シリーズを出版し続けていますが、(乱歩の作品の生命の長さには驚かされます)山川惣治の 「青銅の魔人」以上の挿し絵には残念ながら出会いません。

江戸川乱歩の少年探偵シリーズは戦前からのものですが、戦後の作品の特徴は、どれも怪人や魔人の名前がタイトルになって いることです。いろんな怪物が世の中を騒がすが、その正体はどれも怪人二十面相であるというのが戦後のパターンです。 その怪人や魔人のスタイルを活写するのが、担当の挿し絵画家の腕前ということになっていました。そのパターンを 最初につくったのが山川惣治です。少年探偵シリーズのビジュアル化です。乱歩は以後、怪物・怪人を量産するように なります。

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