山川惣治と絵物語の世界page1101

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作品論1

1.「少年王者」は山川惣治の出世作であり、長く書き継がれたため、代表作ともなりました。

「少年王者」は日本版・少年版のターザン物語です。ジャングルブックやターザン物語やターザン映画のまねの部分も 多いと思いますが、オリジナルと思われる部分もあります。

「少年王者」の中の山川惣治オリジナルと思う部分をあげてみましょう。

1.がんを治す特効薬「マキムリン」をめぐる物語であること。
2.恐竜との死闘があること
3.魔神ウーラとの戦いの物語である
4.ジャングルを失った動物たちを引き連れて移住するエピソードがある。
5.正体のわからない怪人アメンホテップの存在
この5項目が思い浮かびます。

.特効薬「マキムリン」の設定は全く架空のものですが、この効力は、「少年王者」の物語全体に及んでいると思います。 マキムリンのためにいろいろな事件が起こります。 「少年王者」はマキムリンが文明社会に届いてからも、「少年王者・ザンバロ篇」として、なおも続くのですが、 「ザンバロ篇」が正篇ほど面白くないのは、いろいろの人間を引きつけるマキムリンの神通力が効いていないからと 思います。

「ザンバロ篇」にも物凄い怪物がいろいろ出てきますがブロントゾウルスのスケールに及びません。魔神ウーラほど悪いやつも出てきません。 (80%くらい邪悪な奴は出てきます。)仮面の怪人の正体のようななぞもありません。「ザンバロ篇」は全く弱い 設定ではじまったことがわかります。よく続いたものです。

上の絵は第六集の表紙ですが、真吾に率いられて砂漠を渡る象たちが主題となっています。手前の象は鼻を高くかかげており、真吾を 頭の上に乗せています。その皮膚のしわは強調して書かれており、主人公が異様な野獣にまたがっている感じがします。延々と続く 象たちの姿はすばらしい。真吾の表情もすばらしい。

砂漠を移動するエピソードがオリジナルなものだったので、絵にも自然に力が入ってこの傑作になったのではないでしょうか。

真吾の表情にも、象の列にも叙情が感じられます。砂漠を渡るラクダの上の商人たちの夕日を浴びた顔に見られるような叙情が。 手前の象の野生の強調があって、その叙情が生きています。山川惣治の絵と物語の魅力はその叙情性だとおもうのです。


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