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本会議一般質問96年9月12日
痴呆性高齢者対策・マンション対策・大気汚染問題
◯十五番(曽根はじめ君)
●初めに、痴呆性高齢者対策について伺います。
(1) 痴呆性デイホームは、中重度の痴呆性高齢者に昼間の介護やレクリエーションなどのサービスを提供する通所施設であり、都の痴呆性施策の中で中心的な役割を持っています。
デイホームに通うようになり、生活にリズムができ、表情を取り戻した、家族にもゆとりができて、優しく接してあげられるようになったなど、介護で苦労されている家族の方からも大変喜ばれています。
それだけに希望者が多く、私の地元の北区は、五つのデイホームを開設していますが、追いつかず、待機者が五十六名も生じています。
一年も二年も待つことになれば、痴呆はますます重度化してしまいます。
一昨日発表された福祉局の調査結果から計算すれば、西暦二〇〇〇年には都内の中重度の痴呆性高齢者は五万人を超えます。
ところが、都のデイホーム整備計画は、総合三カ年計画で倍に引き上げたとはいえ、定員二千人にすぎません。これでは、デイホームを必要とする人の数%しか利用できないことになり、希望しても利用できない人が今後急増することは明らかです。
知事は、こういう状況をどうお考えですか。整備計画を抜本的に見直し、例えば特別養護老人ホーム緊急整備五カ年計画の例にも倣い、デイホームの緊急整備計画を策定するなど、計画の拡充を行うことが必要と考えますが、見解を伺います。
既存の在宅サービスセンターで、デイホームが設置されていないところもたくさんあります。それらを増改築することでデイホームの整備を進めることも必要です。
その際の改築やデイホームの基準面積に満たない小規模な増築にも施設整備費補助ができるようにするなど、柔軟な対応を検討すべきと考えますが、所見を伺います。
また、徘回するお年寄りに職員が一緒について歩くなど、マン・ツー・マンの対応さえ必要な重度の痴呆がふえており、人員配置の引き上げも求められます。
都は、国基準に若干の上乗せをしていますが、まだ不十分で、新たに痴呆性デイホームの事業を広げる上で障害にもなっています。設置促進のためにも、痴呆性デイホームヘの職員配置の引き上げが必要と考えますが、あわせて答弁を求めます。
(2) 第二に、グループホームについてです。
痴呆性高齢者のグループホームは、専門のスタッフのケアを受けながら少人数で共同生活を送る生活の場です。私は都内の痴呆性グループホームを見学しましたが、個室でプライバシーを守りながら、共同のリビングルームやキッチンがあり、食事づくりや掃除を寮母さんと一緒に行うなど、入所施設とはまた違った利点があるとのことでした。
北欧では、その効果が高く評価され、定着していますが、日本では、まだ国や都のモデル事業にとどまっています。都としても痴呆性高齢者のグループホームの整備に取り組むべきと考えますが、見解を伺います。
●次に、大気汚染間題について質問します。
ことし五月、百二名の公害患者が、東京都を相手取り裁判を起こしました。大気汚染の裁判で企業や政府が訴えられたことはありましたが、自治体が訴えられたのは初めてのことであります。
この十数年の東京都の姿勢が、汚染対策をサボり続け、東京の空気を汚れるに任せてきたからだと、原告団長の西順司さんは話しています。
原告団の一員、十九歳の篠陽一郎君は、物心ついたころから発作がひどく、小学校への登校は、休み休み時間をかけて登校していました。中学では、弱い自分を克服しようとサッカー部に入りましたが、逆に発作を抑える強い薬を使い、常に吸入器を携帯する毎日でした。
そんなある日、ふと思ったそうです。僕は自分だけでぜんそくを乗り越えようとしてきたけれども、実は多くの人の支えで頑張ってこれた、今度は同じぜんそくで苦しむ人たちも含めて何とかしたい、結局、今住んでいるところをよくしないと本当の解決にならないのではないか、そんな思いで篠君は原告になったそうです。
知事、十九歳の若者が、自分の苦しみを、都民全体が公害から解放されることへの願いに高めていった痛切な思いを、正面から受けとめるべきではありませんか。
知事が、環境間題を最重要課題の一つと位置づけるなら、何よりもまず、東京に青空を取り戻し、都民の生命と健康を何より優先するという公害対策の原点に立ち戻るべきであります。
革新都政は、まさにこの原点に立って、全国に先駆け公害防止条例を制定し、都が決めた環境基準が国を動かしました。
また、七四年に、都民を公害から防衛する計画を策定した際、自動車メーカーに対して一酸化炭素除去技術の開発を直接働きかけ、規制適合車を生み出す上で主導的役割を果たしたのです。
ところがその後、鈴木都政によって、この立場は投げ捨てられました。
今日、自動車メーカーは、窒素酸化物、NOxの最大の発生源であるディーゼル車を増産し続けていますが、これらメーカーには、低コストの低公害車の開発とかディーゼル車の販売自粛規制など、社会的責任が強く問われているのです。
青島知事も、国任せでなく、独自にディーゼル車の製造・販売メーカーに要請を行うなど、自治体の長として行動を起こすべきではありませんか。見解を求めます。
ディーゼル車の中でも、大型トラックがNOx排出量で群を抜いています。
最近、都は、五十台以上のトラック事業所に対し、二〇〇〇年までに一〇%のNOx削減目標を掲げて、初の個別指導要綱を発表しました。しかし、不十分な都の環境管理計画でさえ、自動車NOx全体の削減目標は二六%なのです。
都がトラック事業所にそのうち一〇%分しか指導しないというのでは、ディーゼルトラックのNOx削減目標が達成できるとは思えません。少なくとも二〇〇〇年までには、全体目標の二六%を上回る削減を事業所ごとに守らせる指導をすべきです。見解を求めます。
そして、優良企業の顕彰とともに、指導に従わない企業名も公表すべきです。また、五百カ所の事業所を対象にきちんと個別指導を行うには、現在の三名の職員を大幅にふやす必要があります。あわせて答弁を求めます。
これら単体規制と合わせて、大気汚染が深刻な幹線道路沿道への汚染除去対策が急がれています。
私の住む北区で、高速道路王子線がトンネルで抜ける予定の飛鳥山公園付近は、今でも、明治通りなど一日六万台の自動車排ガスで環境基準を大きく超えている上に、高速道路がトンネルの南北両出口から急傾斜で高架になっていくため、普通の何倍もの騒音と排ガス汚染が予想されます。
地元の住民や商店街は、町が分断された上に、さらに排気ガスの直撃を受けたら、生活も営業も成り立たない。せめてトンネルの出口付近をシェルターで覆って、中の排ガスを換気塔まで吸引してから上空に出すように求めています。都はこの最小限の要望にこたえ、技術的に可能なあらゆる方法を探るべきです。
また、こうした深刻な汚染箇所に有効なNOx除去装置の配備が急がれています。都は、大阪府が実験中の土壌ろ過方式も参考にして実用的技術を開発し、汚染が深刻な王子線や新宿線沿線などに配備すべきです。あわせて答弁願います。
公害病に苦しむ患者さんは日々増大しています。知事は、こうした実情に基づき、公害健康被害補償法による新規認定制度の復活を国に直接訴えるべきです。
そして、それまでの間、都条例に基づく医療助成の十八歳年齢制限を撤廃して、患者さんの命の綱を守るべきではありませんか。答弁を求めます。
●最後に、マンション対策です。
我が党は、マンション居住を重視し、大規模修繕への助成、管理組合への支援などを繰り返し求めてきました。第一回定例会予算特別委員会での我が党のマンションの実態調査を都が行うべきとの質問に、知事はその方向で検討したいと答弁しましたが、マンション関係者は、この調査と具体化がいつ始まるのか待ち望んでいます。
都は、マンションの実態調査やマンション施策の拡充をどう具体化していくのか、答弁を求めます。
また、今後、マンション施策を具体化していく上で、管理組合の代表やマンション居住者の意見を聞く場を積極的に持ち、その要望や意見を反映させて具体化すべきではないかと考えますが、所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔知事青島幸男君登壇〕
◯知事(青島幸男君) 曽根はじめ議員のご質問にお答え申し上げます。
痴呆性高齢者デイホームの整備計画についてお尋ねでございました。
痴呆性高齢者デイホームは、家族による日中の介護が困難な在宅の痴呆性高齢者に対しまして、食事のサービスとか、あるいは入浴サービスなどを提供するものでございまして、家族の負担軽減を図るためにも重要な事業であると考えております。
このため、都は、国に先駆けましてこの事業を開始するとともに、さきに実施いたしました高齢者の生活実態調査における利用希望等に基づきまして、「とうきょうプラン’95」において従来の整備目標を倍増いたしまして、平成十二年度までに二百カ所を計画的に整備することといたしております。
今後とも、実施主体であります区市町村と連携をいたしまして、この計画の着実な実施に向けまして設置促進に努めてまいりたいと考えております。
それから、メーカーに対する低公害車の開発とディーゼル車の販売抑制の要請についてご言及がございました。 都は、平成六年度に低公害車指定要綱を定めまして、メーカーに対して、ディーゼル車を含め、法に基づく排出ガス基準を大幅に下回る独自の基準を示しまして、これを満足する低公害車の開発と販売を指導してきたところでございます。この結果、これまで、電気自動車、天然ガス自動車のほか、排出量の大幅に少ないディーゼル車等の数多くの低公害車を指定してまいりました。さらには、今年度からは七都県市共同で指定を行うことといたしまして、メーカーを指導してきているところでございます。
今後とも、窒素酸化物の排出の少ない低公害車の普及に取り組みまして、大気汚染の改善に懸命に努めてまいりたいと考えております。
なお、他の質問につきましては、関係局長から答弁させます。
〔福祉局長石川雅巳君登壇〕
◯福祉局長(石川雅巳君) 二点のご質問にお答え申し上げます。
まず、痴呆性高齢者デイホームの整備費及び運営費助成についてのお尋ねでございます。
東京都は、これまでも、既存の高齢者在宅サービスセンターなどを増改築いたしまして、痴呆性高齢者デイホームを設置する場合にも、国基準を上回る整備費助成を行いますとともに、運営費につきましても、国基準を上回る助成を行ってきたところでございます。
今後とも、実施主体であります区市町村と連携いたしまして、痴呆性高齢者デイホームにつきましては、「とうきょうプラン’95」の計画に沿い、着実に実現が図られるよう努力してまいりたいと思っております。
次に、痴呆性高齢者のためのグループホームについてのお尋ねでございます。
グループホームは、一般の住宅などにおきまして、少人数の痴呆性高齢者が家庭的な雰囲気の中で共同生活を送るものでございまして、地域におきます痴呆性高齢者の安定した生活の場といたしまして効果的であるといわれております。
都といたしましては、グループホームでの介護のあり方や在宅福祉サービスとの連携のあり方などにつきまして、ことし七月に設置いたしました痴呆性高齢者総合対策検討委員会におきまして検討をしているところでございます。また、モデル事業として実践的な研究を行うことにもなっております。
今後、こうした成果を踏まえまして、区市町村とも連携を図りながら、在宅の痴呆性高齢者とその家族を社会的に温かくサポートするための支援策につきまして、十分検討してまいりたいと思っております。
〔環境保全局長田中孝君登壇〕
◯環境保全局長(田中孝君) 自動車からの窒素酸化物対策に関連しまして、二点お答え申し上げます。
まず、事業所における自動車からの窒素酸化物の削減目標についてのお尋ねでございますが、東京都自動車公害防止計画で定めます、平成十二年度までに二酸化窒素の環境基準を総体として達成するという目標を実現するためには、平成七年度における自動車から排出される窒素酸化物総量を約二六%削減することが必要でございます。このうち、今回新たに実施する事業者指導については、実現可能性を考慮し、貨物自動車から排出される窒素酸化物の一〇%を削減目標としたものであり、そのほかにつきましては、大気汚染防止法等に基づきます自動車排出ガス規制及び車種規制等の対策により削減が可能と見込んでおります。
次に、本事業による指導に従わない企業名の公表及び事業の執行体制についてのお尋ねでございますが、事業者に対する指導につきましては、より一層の協力を得るための誘導的措置としまして、優良事業者の顕彰等を行うこととしたものであり、このことにより、窒素酸化物の総量抑制について十分な理解と協力が得られるものと考えております。
また、事業の執行に当たりましては、運輸省等国の機関や業界団体の協力を得ながら、より実効が上がるよう事業者を指導してまいります。
〔都市計画局長木宮進君登壇〕
◯都市計画局長(木宮進君) 首都高速道路の大気汚染対策に関する二点のご質問にお答え申し上げます。
まず、都市高速道路王子線飛鳥山トンネル出口付近の大気汚染対策についてのお尋ねでございますが、当該トンネル出口付近では、集中排気方式による強制換気や防音壁の設置などの対策をとることとしているところでございます。
また、本路線の環境影響評価において、大気汚染による周辺環境に対する影響は少ないと予測をされております。しかし、本区間は急勾配であることから、周辺の土地利用状況等を踏まえながら、環境対策の検討について、今後とも首都高速道路公団に要請をしてまいりたいと存じます。
二点目は、窒素酸化物の除去装置の開発と都市高速道路王子線や同新宿線等への配備についてのお尋ねでございます。
建設省や首都高速道路公団等では、低濃度脱硝技術の具体化のための実験に着手をし、安全性や耐久性等、さまざまな課題の解決に取り組んでいるところでございます。今後、実用化の可能性が認められました場合には、都市高速道路への導入を検討するように、首都高速道路公団に要請をしてまいりたいと存じます。
〔衛生局長原山陽一君登壇〕
◯衛生局長(原山陽一君) 公害健康被害補償制度についてのお尋ねでありますが、都は、従来から、窒素酸化物を中心とする都市型複合大気汚染による健康影響の解明を図り、これに基づき適切な措置を講ずることなど、施策の強化充実について国に要望してきております。
また、都が行っている医療費の助成について拡大すべきとのご意見でありますが、現行制度を変える考えはありません。
〔住宅局長篠木昭夫君登壇〕
◯住宅局長(篠木昭夫君) マンション問題についてのご質問にお答えいたします。
初めに、マンションの実態調査やマンション施策についてのお尋ねでございますが、分譲マンションにつきましては、かねてよりその維持管理問題を初めとして、さまざまな課題が指摘されているところでございます。
このため、今年度の東京都住宅白書におきまして分譲マンション問題を取り上げることとしておりまして、現在、都民の分譲マンション居住に関する意識調査を実施するなど、調査分析を行っているところでございます。
こうした取り組みを踏まえまして、引き続き、分譲マンション施策について幅広く検討していきたいと考えております。
次に、分譲マンション施策の検討に当たり、居住者等の意見を反映すべきではないかとのお尋ねでございますが、分譲マンション施策について検討していくためには、ご指摘のとおり、分譲マンションにかかわるさまざまな課題を的確に把握することが必要でございます。
このため、居住者の意識や区市町村など関係行政機関の意見を十分に踏まえますとともに、必要に応じて管理組合等の意向の把握にも努め、検討を進めていきたいと考えております。