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住宅港湾委員会93年11月18日

 桐ヶ丘団地超高層住宅、トイレ・畳・EV改善、マンション対策質問

◯曽根委員 私からは、最初に、桐ケ丘団地再生計画に関連して何点かお聞きします。

  桐ケ丘団地は、都内では村山団地に次ぐ五千戸規模の最大規模の団地として──二十三区内ではもちろん最大であります。

昭和二十年代の末から建設が始まって、既に古いところは四十年近くになっているという状況の中で、いまだに住戸改善も行われていないために、浴室の普及率が、五千世帯のうち七割の世帯に浴室がないという、恐らく都内の都営住宅の団地で浴室の普及率が最も悪い団地になっているんじゃないかと思うわけでございます。

  こうした、いわばいろんな意味での改善や建てかえ計画から事実上取り残されてきた経過の中に、大規模団地が抱える都市計画上のいろんな制約、特に一団地計画としてつくられているために、部分的な住宅改善も、その団地全体の計画を直さなければ取り組めないというこの法律の枠で、地元の住民の方は、例えば北区内でも、近隣の西が丘の都営住宅などは桐ケ丘の後に建っているのに既に住宅改善を終わって居住者に大変喜ばれている、しかしうちの団地はまだ手もつかないということで、大変歯がゆい思いを長年にわたって味わってこられたわけであります。

  そういう点では、これから残されている大規模団地の再生プロジェクトの中で、住民の方々のこれまでのいろんな東京都の住宅政策に対しての不満や疑問、批判に対してもきちんと答えられるような取り組みがどうしても必要ではないかというふうに思うわけです。

  そこで最初に、桐ケ丘団地も、実はもう十年以上前になりますが、東京都の都営住宅の住戸改善制度がスタートした当初のころに住戸改善の対象として検討されたことがあるというふうにお聞きしているのですが、そのことについて経過をお聞きしたい。その後、建てかえを含む現在の再生計画に至ってきたわけですが、その間の経過について、まず初めにお聞きします。

 

◯安田建設部長 東京都では、良好な住環境と適切な居住水準を確保するということで、既存の住宅でふろのないものにつきまして、あるいは部屋の狭いというようなことにつきまして、浴室を設置したり、あるいは増改築をするということを行っております。

  桐ケ丘の団地につきましては、五十七年度に改善事業を行うということで、浴室のない住棟の住宅改善ができるかどうかという調査を行ったところでございます。

  また、当団地は一団地の住宅施設ということで都市計画が決定されている団地でございますので、この改善事業を行うのに都市計画の変更が要るということで各方面との調整を行ってきたところでございますが、住宅改善事業だけでなく、将来の団地の再生を考えた一団地の住宅施設として都市計画変更を行うべきだということが出てまいりました。

  また、六十一年度になりまして、建設省におきましては大規模公営住宅団地再生プロジェクトという制度ができまして、これを踏まえまして、大規模団地である桐ケ丘団地につきましては、建てかえを含めて再生計画をつくろうということになったわけでございます。

  そういうことで、六十二年度に桐ケ丘団地再生基本計画策定のための調査を行いまして、再生構想案を作成した、こういう経緯になってございます。

 

◯曽根委員 経過については今お聞きしましたが、二つの点がある。一つは、住戸改善の対象として昭和五十七年に既に検討をされている。もう十年以上前です。しかし、その中で、大規模団地であり、一団地として、住戸改善に手をつけるのにも団地の全体の計画をいじらなければならない、だったらば別の方法があるんじゃないかということで先送りになってきた経過と、一方で、建設省が、大規模公営住宅は建てかえを含む再生プロジェクトをつくりなさいという方針が出てきたということで、その後何回か方針もいろいろ変わってきた中で、現在の状態になっている。その間、居住者にとっては、そういう行政の中でのいろいろな検討については、いってみれば無関係でありますので、ただひたすら待たされていたという関係になっているわけであります。

  そこで、この大規模団地、今後進める上で、大規模団地としてのそうした特殊性、また、一方で再生を進める上でのメリット、利点もある。それをどう生かすかということについて、相当工夫をする必要があるのではないかと思っているわけです。

  その中で、昭和六十二年、先ほど答弁の中にありました調査の結果、この六十二年度の末に第一次の再生計画案が出された。これがその後、居住者の大きな批判があったり、また都の方の見直しがあって、昨年ですか、第二次案、見直しが出された。この間の五年間、また計画が見直しのために時間がとられてしまったわけですが、この間どういう点を見直したのかについて、まずお聞きしておきます。

 

◯安田建設部長 見直しの主な点といたしましては、再生区域を全体の三分の一から団地全体という、区域の変更をしております。  それから、二番目といたしましては、住戸改善の主体、それから、全戸数を建てかえ対象とし、あわせて住宅改善も行うという、事業の方法の変更を行った。後に申し上げましたように、全戸数を建てかえ対象とし改善も実施するということは、これは事業期間が六期二十四年にわたるということで、この二つの手法を使うということにしております。

  三点目といたしましては、南向きの住宅の割合を多くした。これは居住者の方々の要望によるものでございます。  それから、四点目といたしましては、駐車場の戸数を、従来は駐車場を確保しておりませんでしたが、三〇%確保するというようなことが主な変更でございます。

 

◯曽根委員 私たちが第一次案を見せてもらったときに一番問題となったのは、建てかえエリアが団地五千戸全体の約三分の一に及んでいる。これを一期で建てかえるということで、建てかえ工事だけでも十五年、計画も入れれば二十年間建てかえ工事にかかってしまう。その間そこはずっとそのまま残されるわけですから、場合によってはあと二十年近くも、おふろがつかないまま、ひたすら待たなければならないという住宅、住棟が出てくるんじゃないかという点が問題になったわけです。

  その点は今回第二次案の中で、一期から六期まで細かく分けて、一期については四年間程度の工事期間とするということで、その点ではかなり改善をされた。工事が後期に回るところについては先に住宅改善をやりますという点でも、こうした手法の改善が見られた点は私たち評価できると思っています。

  こうした点で、居住者の方が何を一番求めているのか、それから、計画を固めてしまう前に居住者の意見をよく聞いて、それから近隣の住民の方々の意見もよく聞いてから、計画を細かくつくっていく、具体化していくということがやはりこの中できちんと行われる必要があるというのは、教訓じゃないかと思うんですね。そのために五年間近くもかかってしまったわけですから。

  私は、その計画づくりの中で、住民の方々の切実な要望を最大限に反映した再生計画づくりを今後も進めていっていただきたいという点で、いろいろあるんですけれども、二点に絞って、桐ケ丘団地の再生の中でネックになるだろうと思われる点について質問したいと思います。

  一つは、全体で六期の建てかえ期間の中で、初期の第一期もしくは第二期の建てかえ区域になっているところは、当然建物が古いところが多いわけですね。そういうところには、初期の段階から住んでいる方も含めますと、高齢者がかなり多くなっている。

その中で、高齢者の方々の意見を聞きますと、建てかえは余り希望していない。むしろ、団地の中で、狭くてもいいからおふろのついている住宅に住み続けていきたいんだと。

この再生計画にかかわっては、せめて団地内の建てかえが後期になっている地域の空き家に移れば、自分が生きている間は建てかえがかかってこない。

そこに一回移れば、そこで生涯住み続けられる。後期の建物は大体おふろがついている建物が多いので、そちらに移させてもらえばそこでずっと住み続けられるんだけれどもという希望が大変多いわけです。

  こういう希望が多いということについて、もちろん東京都も住民説明会を行っていらっしゃると思うので、つかんでいらっしゃると思うのですが、いかがでしょうか。

 

◯安田建設部長 当団地の再生計画につきましては、これまで数回にわたりまして説明会を行ってきております。その中で、団地内の空き家に移って住み続けたいという高齢者のご要望があることは承知しております。

 

◯曽根委員 これは、私の聞くところでは、高齢者の中では圧倒的な声なんですよ。というのは、一つは、余り住宅が広くなくても、自分一人で、またはお年寄りの夫婦だけで住んでいる世帯では広さは余り必要ないということがありますし、もう一つは家賃の問題がやはりあるわけですね。新築になりますと、基本的には六万円ぐらいの家賃になってしまう。

今、桐ケ丘は平均が一万円台ですから、四倍ぐらいの家賃になる。減免制度はありますけれども、不安があるということがあって、先ほどのような希望が大変多い。

  今までの建てかえの団地の例を聞きますと、一部で、団地内の仮移転などを高齢者の方に認めている例があるというふうに聞いているんですけれども、桐ケ丘のようにこういう希望が大変多い場合には、その団地内に空き家が自然に発生するのを待ってそこに移っていただくというだけでは、私は、数的には間に合わないんじゃないかと。

  そこで、今、東京都の都営住宅の制度として考えられるのは住宅交換の制度。これは今余り運用されていないというように聞いているんですが、大規模団地のこうした再生計画を本当にスムーズに進めていくためには、この住宅交換制度を活用する必要があるんじゃないかと思っているわけですが、まず最初に、東京都の都営住宅の住宅交換制度が現在どういう運用になっているかについてお聞きします。

 

◯竹内管理部長 現行の住宅交換制度でございますが、都営住宅条例第六条の二第九号におきまして、「同種の公営住宅の使用者が相互に入れ替わることが双方の利益となること。」となってございます。

その運用につきましては、申請人である都営住宅居住者が、相互に同種の都営住宅を交換しようと希望し、かつ双方とも住宅変更基準──これは、例えば長時間通勤で、かつ肉体的疲労が著しい場合とか、一人当たりの畳数が一・八畳以下になったときなどの理由が挙げられますが、この基準に該当するときに適用してございます。

 

◯曽根委員 都営住宅に関する条例の中では、双方の利益になる場合については、双方の合意に基づいて交換ができるとなっている。しかし、運用の基準の中には、今お話のあったように、現在都営住宅の住宅変更の基準にそれぞれが合致している場合に限って交換ができるという規定になっている。

これで事実上運用できないという事態になっているわけですね。片方の、例えばお年寄りの方が四階から一階におりたいという、これは場合によっては変更基準に合致することがありますが、じゃ、下に、一階にたまたま若い世帯がいて、上の方がいいからといっても、それは変更基準には合致できないというケースがほとんどですので、両方ともというのはごくごく例外的に、事実上ないという形に今なっているわけなんですが、桐ケ丘団地の再生計画の中で、この制度を適用して、活用して、例えば、建てかえの後期に住んでいる、家族が多くて建てかえをなるべく早くやっていただきたいと希望している世帯と、建てかえの初期に当たっている、お年寄りで、建てかえはなるべくしてもらいたくないという方の交換というようなことは考えられないだろうか。

これがもし可能になれば、こうした大規模団地のいわば利点を生かして、団地内での交換を認めることによって、非常に建てかえはスムーズにいくというふうに考えられるのですが、いかがでしょうか。

 

◯安田建設部長 当団地におきましては、現在のところ仮移転につきましては、毎期ごと順番に移転して建てかえを進めるということで説明をいたしております。事業実施時期にどういうような形で移転していただくかにつきましては、空き家の発生状況や家族構成、あるいは移転計画の作成まで、いろんな実態の把握をした上で、事業具体化するまでの間に検討してまいりたい、かように考えております。

 

◯曽根委員 これからまだ、具体的な検討の段階では細かいいろんな作業があります。その中で、今提案した点は、先ほど申し上げたように、建てかえというものはどうしても古いものから順番になるために、高齢者の多い世帯にかかってしまう。むしろ建てかえを希望しているのは、相対的には新しく建った方の団地に住んで、まだ子供たちが独立していない、しかも狭い、三十四平米という狭い二K、二DKの住宅に五人などの家族で住んでいるところの人ほど、六万円の新築家賃を払っても建てかえてほしいという方が多いという条件を生かせる道なので、ぜひ検討していただきたいと思うわけです。

  最初に申し上げましたけれども、桐ケ丘団地は大規模団地であるがゆえに、先ほどいいましたように住戸改善もおくれて、建てかえも計画がくるくる変わっていくという中で住民は待たされてきたわけですから、場合によっては限定して、こうした大規模団地についてのみに限ったとしても、こうした制度の適用を受けて、大規模団地のよさを生かした計画促進に住民の合意と協力が得られるようにするということは、私は、制度上ももちろんですけれども、道義的にも、人情的にも納得できるものじゃないかというふうに思う。ほかの都営住宅の住民の皆さんから見ても決して不公平なことではないというふうに思いますので、その点を強調しておきたいと思います。

  次に、今いったことも含めて、事業が大変規模が大きく複雑だということから、前々から、現地に東京都の直接の事務所、窓口を設けて、現場での職員の体制もとって、住民の意見などを反映できるような体制を持ってもらいたいというふうに要望しているわけですが、その点で具体的な検討はされているのでしょうか。

 

◯安田建設部長 長期で大規模な団地の建てかえ計画を円満に進めていくためには、居住者の皆さんのいろいろなニーズを的確に把握するということが大変重要なことであると思っております。今後、事業の進捗状況を見ながら、必要に応じまして現地の窓口対応等を検討してまいりたい、かように思っております。

 

◯曽根委員 ぜひ、できるだけ早目に現地での体制をつくっていただきたいというふうに思います。  次に、もう一つ大きなネックとなっていると思われる、この再生計画の中での超高層住宅の計画について幾つかお聞きします。  桐ケ丘の再生計画では、六つの二十階以上に及ぶ超高層住宅を計画しているわけです。これに対して、新しく建てかえる地域についての住民の最大の不安が、この超高層住宅の問題であるということなんですが、その点を東京都の方も認識していらっしゃるかどうか、お聞きします。

 

◯安田建設部長 当団地につきましては、これまで数回にわたりまして説明会を行っておりまして、超高層の安全性についての質問も二、三ございましたので、一部にそういう声があるというふうに承知しております。

 

◯曽根委員 これは、説明会の中で意見が幾つ出たからということじゃなくて、今、一部というお話がありましたが、いわば住民の方々の大半の不安なんです。

  それは、たまたま第一期の建てかえの区域に当たっております桐ケ丘団地のE地区の自治会の方で平成元年の末に住民アンケートをやった。これは第一次計画のときだったんですが、超高層住宅についても居住者のアンケートをとっているわけです。これは自治会が行ったアンケートで、実際に住んでいる総戸数六百九十七戸のうち、回答は六百十五戸で八八・二%。大変高い率で回答が寄せられているわけですが、この中で、あなたは建てかえ後何階部分に住みたいかという希望をとっている。その中で、三つに分かれておりまして、低層階、十階以下のところに住みたいという方が三百七十七名で、回答者のうちの八七・三%を占めている。中高層階、十階以上のところというのが三十八名で八・八%。超高層、つまり二十階を超える高さのところに住みたいという希望者は十七名、三・九%しか希望がない。

  一般的には、マンションなどで、これまでは高い階ほどよく売れる。高いということで眺望権などがいわれてきましたが、少なくとも桐ケ丘の今住んでいる、建てかえ地域になっている居住者の中では超高層は全く人気がないということは、このアンケート結果からも明白だと思うんですね、自治会が調べているのですから。

  そういう点で、この不安をやはりきちんと解決をしなければ、私は、建てかえ計画はなかなか進まないんじゃないかというふうに思っています。極力超高層は避けるべきであるというのが私の基本的な認識なんですが、しかし、東京都はこの間あちこちで、建てかえ計画や新築で二十階以上の超高層を建てていますよね。建てるに当たって、超高層住宅というのが一般の集合住宅に比べても居住性その他で問題点を持っているということを、もちろんつかんだ上で建てているのではないかと思うのですが、その点をどういうふうに認識しているか、まずお聞きしておきます。

 

◯廣瀬開発調整部長 超高層住宅での生活においては、幼児の自立のおくれや、コミュニティが成立しにくいといった居住者の生活、心理面での問題、それから、地震、火災に対する不安などの問題、こういったものがあるといわれていることは承知しております。

 

◯曽根委員 一般的に超高層住宅は、私の調べたところでは大体三つの点がいわれているのです。今お話のあった幼児の発達阻害、同時に、これはお年寄りの生活の面でもやはり大きな支障がある。

つまり、生活の上で自分だけで自立して生活が難しくなってきた世代、もしくはまだ幼児で難しい世代、そういう人たちにとって超高層が非常に問題があるというのが一つ、その健康面、心理面も含めてですが。

それからもう一つは、超高層住宅、今ほとんどがロの字型の形をしておりまして、四面のうち一つの面はエレベーターなどで使うとしても、残り三面がベランダになる。

どうしても三つの面のうちの二つは日当たりが悪いという日照の問題、それから風の被害、こうした環境の問題ですね。今お話はなかったのですが、その環境の問題。

それから、三つ目に防災上の問題。大体この三つが指摘されてきていると思うのですが、いろいろと調べてみますと、超高層住宅にはかなり前からいろいろな研究がされているのですよ、日本でも。

  私が調べたのでは、奈良女子大の湯川さんという、住環境計画学専攻の方がかなり綿密に調査をしていまして、その中で、今いったような幼児の発達阻害について相当データもとっていらっしゃる。単純にただ発達阻害があるというのではなくて、例えば、遊びに行くときに幼児一人ではエレベーターが使えないために外に出られないとか、じゃ、親がついていけばいいじゃないかというと、親が何でも遊びに付き添っていると子供の自立がおくれるとか、遊んでいてちょっと物をとりに帰ることもできないとか、それから、地面に住んでいる子供との距離が余りにも大き過ぎて友達ができないとか、さまざまな問題が指摘されている。

  その条件を緩和するためということで、三十階建ての真ん中あたりに子供の遊び場などをつくっている住宅もあるんですけれども、そういうところは大体全然人気がない。夜になれば、いわば青少年のたまり場になって犯罪の巣になりかねないということで、居住者も近づかないというふうになって、事実上閉鎖されているようなところが多いというふうにいわれているわけなんです。

  エレベーターが非常に長いので、その中での犯罪が起こりやすい、事故も心配されるというようなことなどをいっていて、それで、超高層をもし住宅として建てるのであれば、今いったような日照や風害の問題、それから子供の遊びの問題、お年寄りの生活の問題など、災害弱者でもあるこうした幼児や高齢者の問題を解決することや、それから防災上の、エレベーターがもしとまった場合のたくさんの人の救出方法というのが開発されない限りは、超高層は建てるべきじゃないんだということを提言もしている。

  住・都公団のところでも、今後超高層住宅がふえるだろうということを想定しての研究もやられているのですが、その中でも、超高層に住めるというふうに思われる年代というのは、大体、子供がいない世帯で、しかも高齢者でない世帯、もしくは共働きで子供は昼間は保育園や学童保育に行っていて親と一緒に帰ってくる世帯、こういうところに限られるだろう。しかも年収が割合多くて──一生涯超高層に住まなければならないような世帯では、これはやはり問題があるというふうな指摘もされています。

  そのほかに、その後いろいろと、東大の医学部での高層階の幼児の発達の阻害の研究とか、東海大の逢坂文夫氏の、五十代の女性に特に高層階で見られる高血圧、貧血、出産異常の傾向が高い研究だとか、国立公衆衛生院の松本恭治という方の、長く住み続けるという点での超高層の弊害、それから、目白女子短大の中島明子教授の、ヨーロッパでの、一九七〇年代になってから、超高層住宅は特に幼児のいる世帯にはふさわしくないというふうなことがもう既に諸外国では行われている、というような研究が次々にあります。

  東京都の関連について申し上げますと、新宿の都庁舎など、こうした高層のオフィス街で働く勤労者の中で、いわゆる超高層シンドロームといって、超高層の上層階が風などで振動するために軽い乗り物酔い的な症状が出るというようなことも最近指摘されている。東京都の衛生研究所の研究では、高層階は、安全のためや、風害を避けるために、窓を閉め切らなければならない、そのために中で湿気がどうしてもふえて、ダニが発生しやすい。ダニの数を数えた研究があるのですが、高層階の方がはるかにダニの数が多いというような研究がされている。これは東京都の衛生研究所の年報にもあるわけです。

  そこで、私はいろいろ質問したい中で一つだけに絞ってお聞きします。防災上の対策、これだけはどうしても命の問題なので、一つだけちょっと聞いておきたいのですが、地震が発生した場合には、一般のエレベーター、それからよくつけられている非常用のエレベーターも、強い地震の場合はとまってしまうわけです。それが動くのは、外からエレベーターの補修に来て動かさなければ動かない。

しかし、緊急に避難が必要な場合がある。例えば地震とともに火災が発生したような場合ですね。そういう場合、上層階に仮にお年寄りなどがいて、幼児などがいて、緊急に避難をさせなければならないという場合には、どういう方法によるのか。現実的にちゃんと避難できる方法があるのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。

 

◯廣瀬開発調整部長 超高層住宅の防災対策につきましては、建築基準法、消防法等により、消火施設、避難施設等の個々の設計を行うほか、総合的な防災計画による安全性を確保するため、財団法人日本建築センターの防災評定を受けて、一層の安全性を確保することとしております。

  エレベーターにつきましては、地震による揺れが一定以上になると、安全のために地震管制装置が働いて、最寄りの階に停止することとなっております。運転の再開は、エレベーターを点検し、異常のないことを確認された後に行われます。運転再開の前に高齢者等を救出する必要が生じた場合には、これは階段を利用して救出することになります。なお、屋上にヘリコプターが近づける場合はヘリコプターによる救出も考えられます。

 

◯曽根委員 今お話を聞くと、基本的には、エレベーターがとまっている間は階段で救出するしかない。ヘリコプターによる屋上からの救出というのは、これは時間の関係でいいますと、東京消防庁には五機しかないわけですね。ですから、本当に大規模な地震の発生のときにはこれは現実的な方法じゃないですよね。

そうすると、階段。  これは平成元年ですが、夏に江東区南砂の二十四階部分のマンションの火災があったときには、その火災が発生した部屋に寝たきりの女性の方がいて、この方の場合は、煙が廊下に回ったためにエレベーターを動かせなくて、結局作業員の方が二十四階から背負って階段で救出した。やはり階段に頼るしかないというふうなことが、実例としてはごくわずかですが、そういうものがある。

  ですから、高齢者の多い桐ケ丘のような都営住宅、都営住宅全体として、ずっと住み続けるという方が大変多い住宅です。一時的に高いところが眺望がいいとかいうようなことが選択できる世帯と、そうでない方が圧倒的に多い都営住宅のような場合ではやはり違うであろうし、桐ケ丘は特に高齢者が多いということで超高層は極力避けるべきだ、これを基本にすべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

 

◯安田建設部長 桐ケ丘の再生計画の中では、居住水準の向上を目指しながら戸数増を図るとか、あるいは、必要な公共公益施設の配置や駐車場、日照時間等、緑地等のオープンスペースを確保するというようなことで土地の有効利用を図るということが必要でございまして、それらに対応するためには高層住宅も必要かというふうに考えております。

 

◯曽根委員 今の観点は、やはり建てかえでどうしても戸数を稼ぐ、部屋も広くなる、そのために有効利用ということで高さを上げなければならないというのが東京都のスタンスかなと思いますが、私は、あくまで居住者の、今の中層住宅、この形は余り変えないでほしいという希望を組み入れた再生計画、建てかえ計画を本当に最後まで追求してもらいたい、設計上も可能な限り追求してもらいたい、このことだけを申し上げておきます。

  次に、既設の都営住宅の幾つかの改善問題についてお聞きしますが、最初に、中層住宅へのエレベーターの設置についてお聞きしたいのですが、エレベーターを既設の中層住宅に増設できる制度ができて三年目になるわけです。

ついたところでは大変喜ばれているというふうに聞いています。きょういただいた資料では、設置可能棟数が四百五十八棟、実績としては、やっと年間十台ということで、このままでは五十年近くかかってしまうということになってしまうわけです。何とか来年度以降、この台数をふやすようにお願いしたいわけですけれども、そうした予算要望なり計画を持っていらっしゃるかどうか。

 

◯小山参事 既設中層都営住宅のエレベーター設置につきましてのお尋ねでございますが、今お尋ねにありましたように、今年度も十台の計画であります。この事業は大変重要な事業でございますので、極力事業規模の拡大に努めたいと考えているところでございます。

 

◯曽根委員 聞くところによれば、平成五年度の予算要望としては三十台を要望したんだけれども、残念ながら上の方でちょっと通らなかった、結局ことしもまた十台になってしまったというふうに聞いていますが、来年度の要望で少なくとも三十台、これでもまだ足りないと思うのですが、これを何とか実現する、さらにそれ以上を目指すというふうに強く要望しておきます。

  それから、和式トイレの洋式への改善、それから浴室のドアの取りかえ──この浴室のドアの取りかえというのは、今、木製のものから、アルミ製などでかなり使いやすいものが開発されてきているということで大変要望が強いのですが、また、トイレについては、お年寄りの中で洋式への改善を求める声が非常に強いのですが、それぞれについて、計画修繕の中でどの程度ここ数年の実績があるのか。

また、個別改修にも応じているというふうに聞いていますが、その実績。それから、トイレについてはどの程度で終了、全部のところにつくのか、取りかえができるのかなどについてお答えをいただきたい。

 

◯小山参事 まず、トイレの洋風便器化のことでございますが、これにつきましては平成三年度から実施したところでございます。既存の中層アパートで、和風の、何といいますか、汽車風の便所になっています建物が、これは昭和四十三年度以前の建設のものでございますが、約九千三百戸ございます。

これを平成三年度から改修工事を実施したわけでございますが、三年度が六百七十五戸、四年度が千九十戸実施しまして、今年度も千四百戸程度実施したいと努力しているところでございます。したがいまして、今年度の事業を実施しますと、残戸数としては約六千戸ぐらいあるわけでございます。

一年、        今年度の約千五百戸ぐらいのペースでいけば、おおむねあと四カ年ぐらいで完了できるのではないか、このように思っております。

  それから、今の個別でやっているのもあるのではないかというお尋ねでございますが、今のこのお話は、事業の方法としましては、一棟単位で全部取りかえますものと、それから、順番が来るまでの間に、高齢者がいる、あるいは身体障害者の方がいまして待てない、こういうことにつきましては、個々の住宅設備の改善ということで事業を行っております。これにつきましてはそういう形で、和風便器を洋風便器に取りかえるという仕事を今年度から実施しているところでございます。

  それから、おふろのドアの改修でございますが、浴室の出入り口のドアは木製でございまして、二十年から三十年ぐらいで腐食などのため取りかえるというようなことが起こるわけでございます。これは一応実施サイクルとしまして約二十年というようなめどを持っておりまして、したがいまして、現在、この対象としては、昭和四十七年度建設以前のものでふろがあるもの、こういうことになるわけでございます。

  これの取りかえ実績でございますが、大分前から計画修繕として実施しておりまして、総数としましては約五万戸ぐらいを実施したと思うのですが、ごく最近の実績だけでいいますと、三年度は約八千七百戸、四年度が六千七百戸、今年度も六千八百程度を実施したい、こういうことで今努力しているところでございます。

  ドアの改修に当たりましては、内開きのドアで、前々から、高齢者が中で事故があったときに非常にぐあいが悪いから戸を少し改良してほしいというような要望も強かったために、中折れ式のものだとか、引き戸ができるところは引き戸、それから、どうにもならなくて内開きであっても、ドアを改良しまして、換気がらりが外れるような、ドアの真ん中にくぐり口といいますか、それがつけられているような内開きドア、こういったもので改良するようにいたしております。

  これは一棟単位でやっているわけでございますが、個別にやっているのもあるか、こういうことでございますが、これにつきましても、先ほどの便器の改良と同じように、高齢者、それから身体障害者の個別の住宅設備改善の申し込みで対応するケースもございます。

 

◯曽根委員 トイレの洋風化については、残戸数が約六千戸に対して、年次計画が千四百戸程度、あと四年ぐらいということなんですが、それを待てない方について公募という形で個別対応もしていらっしゃるということです。

私は、確かに四年で全部終わるという計画になっているけれども、急いでつけてほしいという個々の要求にもこたえていただきたいという点では、この個別要望については、今、年一回を基本として受け付けているわけですが、これを常時受け付けに改善をしてほしいということを要望をしておきます。

  それから、改善問題の最後になりますが、計画修繕の中にぜひ年数のたった畳やふすまの取りかえを入れてほしいという要望が、都営住宅の居住者の方、特に高齢者の方から大変強いわけなんです。

私の知っているところでは、ほかの自治体で、数は少ないけれども、畳の取りかえというのを公営住宅で実施している例があるというふうに聞いているのですが、お調べになっているでしょうか。

 

◯小山参事 畳の取りかえでございますが、住宅の修繕につきまして、入居者の費用負担する範囲、それから公費でもって実施する範囲というのを定めております。通常は、畳表の取りかえは居住者負担、こういうところが多いようでございます。

  今、全国の公営住宅の中でそういうのを調べているかというお尋ねでございますが、畳表の取りかえを公費でといいますか、行っているところは、一、二あるかと思いますが、正確には把握しておりません。

  それから、畳床の取りかえでございますが、これにつきましても東京都は公費ではなくて入居者負担、こういうことでやっております。この点につきましては、これを計画修繕のときに行いますためには大変な費用がかかりまして、現在の営繕費でも、もろもろの修繕の要望に対応できないような状況でございまして、さらにこれを加えることは大変困難な実情にございます。

したがいまして、とても畳床の取りかえまでは実施できないような状況でございます。ただし、空き家が出まして、空き家修繕をしなければいけない、こういうケースにつきましては公費でもってすべて取りかえている状況でございます。

  他の自治体での費用負担の話でございますが、先ほど申しましたように、畳表を含めてすべて公費でやっている、こういう自治体は、市町の中に若干あるかと思いますが、正確には把握しておりません。

 

◯曽根委員 私の知っているところでは、札幌市で実施をしている。これは畳の表がえを公費負担でやっている。サイクルは十四年でやっているそうなんですが、札幌市で可能であれば、東京都の財政力をもってすれば十分できる。札幌市の例では、決して対象となる住宅のすべてが申し込みがあるわけじゃなくて、家具の移動その他で大変ですから、申し込みは約半分かそれ以下程度だということで見ても、必要な世帯について、ぜひこの計画修繕の道を開いてもらいたいということを強く要望しておきます。

 

●マンション支援問題

  次に、先ほどもちょっと質問がどなたかからありましたが、民間のマンションのリフォームローンへの利子補給の点について、計画に対しても利用数が大変多いということが、今指摘もあったんで、その点省略しますが、期待をされている制度の一つだと思います。

  それで、利子を今一%から、私は、やはり二%ぐらいにふやす必要があると思うのです。先ほど質問もありましたが、その点と、もう一つ、今この利子補給の対象となっているのが、返済期間が七年のものですね。

つまり、管理組合が担保を持っていない場合に貸し出す無担保の物件についての貸し出し枠、これは一戸当たりの費用が百万円ぐらいですか、制限があるのと、返済期間が七年以内というふうになっているわけですね。しかし一方で、住宅金融公庫では、担保物件がある場合にはもう少し返済期間の長い、金額も大きい貸し出しをやっているわけですね。

こちらの方にもぜひ利子補給を広げていただきたいという要望が大変強いわけですが、検討されているかどうか、お聞きします。

 

◯廣瀬開発調整部長 まず、利子補給の増加の件でございますけれども、先ほどもお答え申しましたように、来年度は現行の住宅金融公庫融資利子への利子補給一%をさらに拡充する方向で予算要求をしているところでございます。

  また、有担保物件についても利子補給の対象とするように、来年度予算に要望しているところでございます。

 

◯曽根委員 ぜひその要望が実るように、引き続き努力をしていただきたいということだけを申し上げておきます。  最後に、都営村山団地の再生事業について三点ほどお聞きしたいのですが、ここは、先ほど申し上げた桐ケ丘よりもさらに戸数が多く、五千二百六十戸の現戸数を抱える大規模団地の再生計画になるわけですが、この中で、居住者の方々のいろいろなお話を聞きますと、増築部分、住戸改善部分、それから建てかえ部分の中では、住宅改善については大変強い要望がある。

しかし、建てかえ対象地域については、居住者の中には建てかえなくてもという方が大変多いというふうに私は聞いているわけです。

  そこで、三年ほど前ですか、居住者の代表の方と当時の住宅局長、そして武蔵村山市長が立ち会いとなって、協定が結ばれた。その中で、住戸改善については居住者の合意の調っているところから速やかに実施をしていく、一方で建てかえ計画については合意を得られるようによく話し合いをしてから、納得を得た上で進めるというふうに、それぞれ独自の規定が盛られました。

これは居住者が、いわば一団地全体の計画を全部決めてしまわなければどこも進まないというのに対して、この協定書によって、個々の合意が調ったところから事業を円滑に進めていくという道が開けた、大変画期的な協定じゃないかと思うのですが、今回東京都から中期計画が示された、その中で、全体で五千二百六十戸を六千戸強の戸数にふやすというふうに計画をされているようですが、現在の五千二百六十戸を都営として確保するということは私は当然だと思うのですが、それより多くなる分ですね、これについてはどのような活用を考えていらっしゃるのか、お聞きします。

 

◯安田建設部長 余裕分につきましては、他の公営住宅を建設するという予定をいたしております。

 

◯曽根委員 公営住宅ということになると、東京都では都営住宅ぐらいしかないんですけれども、都営住宅ということですか。

 

◯安田建設部長 先ほどのは間違いでございまして、他の公的住宅でございます。失礼いたしました。

 

◯曽根委員 それから、建てかえ区域のところでの建物の計画を見ますと、十四階建てのところに今一千戸以上の計画が入っているわけですね。十四階建ては二十三区内では一般的に建てられているのですが、武蔵村山市の環境の中では大変高層になるということから、風害その他、超高層住宅まではいかないけれども、消防車のはしご車も届かないということで大変不安が多い。この点について、少なくとも消防車のはしご車が届く十階程度以下の形に抑えるべきではないかという意見が大変強いというふうに聞いているんです。再検討をぜひお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

◯安田建設部長 当団地におきましては、十四階建ての高層住宅を計画しているところでございます。都の高層住宅につきましては、先ほど桐ケ丘の再生計画でもご説明申し上げたとおり、土地の有効利用を図るということからは必要だというふうに思っております。  それから、消防の関係につきましては、関係機関といろいろ調整を図りながら実施をしてまいりたい、かように考えております。

 

◯曽根委員 都区内では一般的ではありますけれども、現地に行っていらっしゃればわかると思うのですが、周りは高い建物がないという中では、団地再生計画全体を進める中で、高層住宅、十四階のような高さのものをつくらなくても、今の中層住宅中心の村山団地に近い形での工夫が設計上できるのではないか。

今住んでおられる方は中層住宅、または簡耐住宅ですか、に住んでいますので、やはり高い建物には非常に不安があるということ。それから、近くに桜が丘の住宅があって、そこの高層に住んでいる方のお話では、どうしても幼児の遊びの問題やエレベーターの問題、犯罪や非行の温床になりやすいなど多くの不安があるということも皆さんよく知っているわけなんで、ぜひこの点は再検討をお願いしたいと思います。

  それから最後に、三点目なんですが、先ほどの協定の趣旨を生かすという点で、ぜひその合意が調っているところの住戸改善を、建てかえ計画も含めたこの中期計画が全体で固まってしまう前から合意があるのですから、速やかに実施してもらいたいという要望が大変強い。六千名を超える署名も寄せられているというふうに聞いています。

  そこで、東京都の方では、どうしても面積が、増築しますから広がってしまう、容積率や建ぺい率でオーバーしてしまうので団地全体の計画にひっかかってしまうんだというお話だそうなんですが、内部で壁を抜いて、三戸を二戸にしたり、二戸を一戸にしたりする住戸改善ならば、建物そのものは大きくならないので、できるのではないか、技術的にはクリアできるというふうに伺っている。

その対象となる四百戸ぐらい、これは先行してもできるわけですから、ぜひすぐに着手をしてもらいたい。住戸改善ですね。こういう要望なんですが、その点はいかがでしょうか。

 

◯安田建設部長 ご案内のとおり、当団地につきましては、都市計画の決定をされております一団地の住宅施設ということになってございます。その変更の要件といたしまして、先ほどお話のございました面積の変更ということもございますが、簡易な変更という内容で、都市計画の変更をしなくてもよろしいと。その制限といたしまして、戸数の制限というのもございまして、これが五十戸以下ということになっております。そういうことでございますので、そのようなことにつきまして関係機関と十分調整を図り、可能な限り早期に着手してまいりたい、かように考えております。

 

◯曽根委員 今の条件も、私は、本来であれば協定の精神、そういう制限もできるだけ外して、住宅改善の要望が強い点については速やかに実施という精神の基本を貫いてもらいたいと思うのですが、少なくとも容積率その他クリアできる建物については早期に着手するということでぜひお願いをしておきたいと思います。

  以上で質問を終わります。

 

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