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はじめ通信9−1105

野田市が全区市町村に送った公契約条例解説文

●11月2日に、公契約条例を制定した千葉県野田市に調査に行き、条例について、日本共産党市議団から詳しくお聞きしました。
 この条例は、17年前、1992年の野田市議会で、共産党市議が代表質問でとり上げ、ILO条約の批准を国に求めるとともに、市として、この精神に基づき、公契約の相手企業に、一定水準の労働条件を求めるよう質したのが最初だそうです。

●その後、市内で活動する、千葉土建組合から、繰り返し陳情が出されるようになり、自民・保守会派の反対で否決されてきました。
 しかし、市内の建設業者が、あまりに建設工事単価が低すぎて倒産が相次ぎ、あらためて強い世論が起こる中で、保守会派も地元の運動に応えざるをえなくなり、陳情が全会一致で採択されるようになり、市長も全国市長会で、国に対して「公契約法」の制定を求める提案を行なうまでになりました。

●こうした野田市はじめ全国の世論にかかわらず、自民・公明政権が全くこれに応じようとしなかったため、全国に先駆けて取り組んできた野田市で、初の条例化に踏み切ったものです。

●野田市の条例の特徴は、全国初をふまえて、法的論点をかなり詳細に検討し、条例制定に当たって、以下のような論文を全国の全区市町村に送付したということです。
 これを読むと、憲法や地方自治法を始め、これまで公契約条例への反対論で、自民・公明やときには民主も展開してきた反対論に対して、周到に条例の根拠の正当性を論じていることです。

●北区にも当然送られているはずですが、これを読む限り、全国の自治体とともに北区でも、公契約条例を拒否する正当な論拠は成り立たないことが明瞭にされたと感じます。
 特に、今年2月の国会での文書質問への回答で、当時の自民・公明政権でさえ、自治体が最賃を上回る賃金を請け負い企業に課すことに了解を与えていることは重要です。(写真は、調査に同行した区議団の、右からさがら、やまき、本田区議)

●以下に、野田市が全国自治体に送ったという、「公契約条例の概要」を紹介します。

「公契約条例の概要」 野田市

【野田市公契約条例の趣旨、解釈及び運用の基準】

≪法的な論点≫

1憲法上の論点

※ 公契約条例を制定するに当たっての論点の一つとして、憲法第27条第2項に『賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める』と規定されていることから、事業者に対して最低貸金法の地域別最低賃金額を上回る賃金の支払義務を条例に規定することができるかがある。
 この論点については、平成21年2月24日付けで民主党尾立源幸議員から参議院議長江田五月に提出された質問主意書に対する、同年3月6日付け内閣総理大臣麻生太郎から参議院議長江田五月に送付された答弁書において、『条例において、地方公共団体の契約の相手方たる企業等の使用者は、最低賃金法第9条第1項に規定する地域別最低賃金において定める最低賃金額を上回る賃金を労働者に支払わなくてはならないこととすることは、同法上、問題となるものではない』とされており、この論点に関する条例制定の法的問題は解決している。

2地方自治法上の論点

※ 公契約条例を制定するに当たっての論点の一つとして、地方自治法第1条の2第1項に『地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う』、第2条第2項に『普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。』及び第14条第1項に『普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる』と規定されていることから、本条例によって保護される者は公契約に係る業務に従事する労働者で、その労働者が本市の住民でない場合は、地方公共団体の事務であると断定できないこと等の観点から、公契約条例は違法であるとの指摘がある。

 この論点については、本条例は、本市の業務に係る契約を対象とするものであるから、市の事務に属し、地方自治法第14条第1項の条例制定権の範囲内にあることは明らかであると考える。

 なお、本条例の対象業務に従事するものの賃金の額を政策的に確保することで、本市における公契約の質の確保及び社会的価値の向上を目的とするのであるから、労働者が本市に在住していなくとも、本市の業務に係るので対象となると考える。

 また「公契約条例を定めている市の業務である場合と他市の業務である場合とで賃金に差がついてしまう。」という問題に対しては、公契約の社会的価値の向上のために、公契約に係る業務に従事する労働者に対して適正な賃金を確保することを受注者等に義務付ける必要があると考える自治体と、そうでない自治体との政策の相違であって、問題となるものではないと考える。

※ 公契約条例を制定するに当たっての論点の一つとして、地方自治法第14条第1項に『普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる』と規定されている。また、市長の担任事務として地方自治法第149条第2号に『予算を調製し、及びこれを執行すること』と規定されていることから、契約の締結は予算の執行に含まれると解されるので、その前提として議会の議決が必要なことがある(地方自治法第96条第1項第5号『その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること』)ものの、契約条件の決定は長の専権に属するものと考えられる。そのため、具体的な契約条項を条例で定め、それを執行機関に義務付けることができるかがある。

 この論点については、地方自治法第149条第2号は、長の担任事務としての予算の執行(契約の締結)権を定めたものであり、これに何の制約も課してはならないというわけではないと考える。また、この条例による制約についても、賃金の最低額を定めるにすぎず、不当に長の権限を制約するものではないと考える。

よって、公契約条例において長の予算の執行権に制限を課しても(契約条件(賃金の最低額)を規定しても)法律に違反しないものと考える。

※ 地方自治法第2条第14項に『地方公共団体は、その事務を処理するに当っては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない』と規定されていることからこの規定に違反しないかとの論点がある。

 この論点については、公契約条例における賃金の最低額は、公契約の質の確保及び公契約の社会的価値の向上という、目的を達成するための最低限の額であって、そのために、条例を制定することにより契約の額に反映する人件費としての積算が多少増加したとしても、政策目的を達成するための必要最低限度のものであり、目的と手段の間に合理性もあることから、地方自治法に違反しないと考える。

3労働法上の論点

※ 公契約条例を制定するに当たっての論点の一つとして、条例が労働契約の内容に介入するもので労働基準法等の労働関係法律に違反するのではないかがある。

 この論点については、本条例は公契約の相手方の事業者に限定して市が定める賃金以上の支払義務を定めるものであって、事業者は、契約自由の原則により市と契約をするか否かの自由を保障されているものであり、市が直接労働契約の内容に介入するものではないと考える。

4私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律に関する論点

※ 「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」いわゆる独占禁止法第2条第9項に規定する「不公正な取引方法」に該当するかについては、公契約条例に定める契約の方法が不公正な取引方法に該当するかの判断は、その契約によって市が不当に利益を得るかどうかにあると考える。公契釣条例の目的は、公契約の業務の質の確保及び公契約の社会的価値の向上にあり、その目的を達成する手段として最低限度の制約を課したに過ぎず、市は何ら不当な利益を得ることもない。よって、その政策上の必要性を考えても、不公正な取引方法には該当しないと考える。

※ 公正取引委員会からの措置命令の可能性については、入札を対象とするものであり、優越的な地位の利用には当たらないと考える。


(前文)

 地方公共団体の入札は、一般競争入札の拡大や総合評価方式の採用などの改革が進められてきたが、一方で低入札価格の問題によって下請の事業者や業務に従事する労働者にしわ寄せがされ、労働者の賃金の低下を招く状況になってきている。

 このような状況を改善し、公平かつ適正な入札を通じて豊かな地域社会の実現と労働者の適正な労働条件が確保されることは、ひとつの自治体で解決できるものではなく、国が公契約に関する法律の整備の重要性を認識し、速やかに必要な措置を講ずることが不可欠である。

 本市は、このような状況をただ見過ごすことなく先導的にこの間題に取り組んでいくことで、地方公共団体の締結する契約が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することができるよう貢献したいと思う。

 この決意のもとに、公契約に係る業務の質の確保及び公契約の社会的な価値の向上を図るため、この条例を制定する。

【解釈】

 公共工事や業務委託などの公契約における入札方法は、我が国では長年に渡り指名競争入札によって行っていたが、平成5年のゼネコン汚職等の発覚により、指名競争入札が談合の温床との批判が高まったことから、国は、平成6年に「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画を閣議決定し、一般競争入札方式を本格的に採用することとした。

 さらに、平成12年には「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」いわゆる入札契約適正化法を制定、平成18年には「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(改正)」を示し、一般競争入札の拡大を図ることとした結果、一般競争入札を導入する自治体が増加した。

 本市においても平成19年度から一般競争入札を導入しているが、市内事業者の育成と市内経済の活性化を図る観点から、地域要件等を加える、制限付一般競争入札としている。

 一般競争入札の拡大は、談合問題の改善に寄与したが、同時に、過度の競争による低入札価格工事件数の増加、その結果による公共工事あるいは公共サービスの品質低下に関する懸念等の新たな弊害も生み出されてきている。

 国では、平成17年に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」いわゆる公共工事品確法を制定し、経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮する総合評価方式により、価格と品質が総合的に優れた内容の契約を目指すこととなったが、下請事業者や業務に従事する労働者についての配慮がないため、低入札価格の問題は解消されず、結局、そのつけは、下請事業者、さらにはそこで働く労働者へとしわよせがされ、労働者の賃金の低下を招くという状況にある。

 そこで、野田市では、この構図を根本的に変えるため、公共工事品確法に加え、公契約法の制定が必要であると考え、平成17年には、全国市長会を通じて公契約法の制定を要望したが、国に制定の動きが見られないことから、野田市が先導的、実験的に公契約条例を制定し、国に法整備の必要性を認識させようとするものである。

(目的)

 第1条 この条例は、公契約に係る業務に従事する労働者の適正な労働条件を確保することにより、当該業務の質の確保及び公契約の社会的な価値の向上を図り、もって市民が豊かで安心して暮らすことのできる地域社会を実現することを目的とする。

【解釈】

 目的規定は、条例の解釈運用の指針となり、また、法律に違反していないかの判断の基準となる。本条例は、労働者の賃金の確保のみが目的となるのではなく、労働者の適正な労働条件を確保することによって公契約に係る業務の質及び公契約の社会的な価値を向上させ、市民が豊かで安心して暮らせる地域社会を実現することを目的とする。

※「市民が豊かで安心して暮らせる地域社会」については、市は、公契約に係る業務が適正かつ確実に実施されるようにするため、その業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保をすることで、市民が豊かで安心して暮らせる地域社会を実現することができるものと考える。

※公共サービス基本法第11条には、『国及び地方公共団体は、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるようにするため、公共サービスの実施に従事する者の適正な労働条件の確保その他の労働環境の整備に関し必要な施策を講ずるよう努めるものとする。』と規定され、公契約に係る業務に従事する労働者の適正な労働条件を確保することにより、安全かつ良質な公共サービスが適正かつ確実に実施されるとしている。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1)公契約 市が発注する工事又は製造その他についての請負の契約

(2)受注者 第4条に規定する公契約を市と締結した者

(3)下請負者 下請その他いかなる名義によるかを問わず、市以外の者から第4条に規定する公契約に係る業務の一部について請け負った者


【解釈】

 第1号 市が発注する「工事又は製造その他についての請負の契約」を公契約とする。「工事又は製造その他についての請負の契約」の文言については、地方自治法施行令第167条の10から引用したものである。
 「その他についての請負の契約」にコンピューターソフトウエアの構築、清掃業務、建築等の設計業務などのいわゆる業務委託は含まれると解されている(学陽書房 新版逐条地方自治法第5次改訂版 松本英昭著 822ページ)

 なお、地方自治法第234条の規定による契約は、私法上の契約であって公権力の行使には当たらない。したがって、契約自由の原則が適用される。

 第2号 本条例における受注者とは、前号で規定する公契約を市と締結した者すべてではなく、第4条で本条例の適用範囲を限定することから、第4条に規定する公契約を市と締結した者とする。

 第3号 受注者が、公契約に係る業務の一部について、いわゆる下請業者に発注し、その下請業者が、さらに、いわゆる孫請業者に発注するような状況を想定し、この条例の適用範囲を受注者以外の者にも広げるために規定するものである。


(受注者の責務)

 第3条 受注者は、法令等を遵守することはもとより、公契約を受注した責任を自覚し、公契約に係る業務に従事する者が誇りを持って良質な業務を実施することができるよう、労働者の更なる福祉の向上に努めなければならない。


【解釈】

 本条は、本条例で規定する賃金の最低額を確保さえすれば、他の労働条件は見過ごすことにならないよう、受注者に対して法令等の遵守及び労働者の福祉の向上に努める責務を課す規定である。なお、市と契約を締結する相手方は受注者のみであるため、下請負者等の受注関係者について、責務を直接負わせる規定としていない。しかし、受注者の責務の中で、『公契約に係る業務に従事する者が誇りを持って良質な業務を実施することができるよう、労働者の更なる福祉の向上に努めなければならない』と規定しているため、受注関係者の労働者で専ら公契約に係る業務に従事する者は受注者が福祉の向上に努める責務を負った労働者となるものである。
 したがって、受注者が受注関係者と契約する場合は、より労働者の福祉の向上に努めている受注関係者と契約するよう努めることになると考えている。


(公契約の範囲)

 第4条 この条例が適用される公契約は、一般競争入札、指名競争入札又は随意契約の方法により締結される契約であって、次に掲げるものとする。

(1) 予定価格が1億円以上のエ事又は製造の請負の契約

(2) 予定価格が1,000万円以上のエ事又は製造以外の請負の契約のうち、市長が別に定めるもの

【解釈】

 本条は、第2条第1号で規定する公契約をすべて本条例の適用範囲とするのではなく、契約の方法及び予定価格によって適用範囲を限定する規定である。

第1号 いわゆる公共工事及び機械設備等の製造について、金額によって公契約の適用範囲を限定する。
 なお、1億円未満であっても総合評価一般競争入札によるときは、第14条の規定によりその雇用する労働者の賃金を評価することが原則となる。

第2号 いわゆる業務委託のうち、条例施行規則において規定するものに限定する。

 これは、条例制定に伴う事務量を勘案し適用範囲を限定して実施するものであって、今後、運用が軌道に乗った際は、適用範囲を拡大していきたいと考えている。

 なお、条例施行当初にあっては、予定価格1千万円以上の工事又は製造以外の請負の契約については、施設設備の運転管理業務及び保守点検業務、施設の清掃業務に限定したいと考えている。


(労働者の範囲)

 第5条 この条例の適用を受ける労働者(以下「適用労働者」という。)は、前条に規定する公契約に係る業務に従事する労働基準法(昭和22年法律第49号)第9条に規定する労働者であって、次の各号のいずれかに該当するものとする。

(1) 受注者に雇用され、専ら当該公契約に係る業務に従事する者

(2)下請負者に雇用され、専ら当該公契約に係る業務に従事する者

(3)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「法」という。)の規定に基づき受注者又は下請負者に派遣され、専ら当該公契約に係る業務に従事する者


【解釈】

 「専ら」と規定することによって、本条例の適用を受ける労働者の範囲を限定する。「専ら」とすることで、例えば専ら当該公契約に係る業務こ従事する者が休暇のときに1日だけ当該公契約に係る業務に従事した者は対象外となってしまうが、次の理由から「専ら」と規定して適用労働者の範囲を限定することとした。

(1) 公契約の従事者は、原則として専属的に業務に従事している。

(2)臨時的な従事者まで対象を広げると未熟練労働者の賃金を考慮することになり、市の定める賃金水準の低下を招く。

(3)臨時的な従事者まで対象を広げることによる受注者等の事務処理の増加

(4) 市が本条例に定める事項の遵守状況の確認をするときの業務上の困難性また、条例の属地主義によって、市と直接契約を締結する受注者の労働者以外であっても効力は及ぶことは言うまでもない。

 「ひとり親方」については、受注者等と請負契約を締結する場合と日雇として受注者等に雇用される場合がある。前者の場合においては、労働者に当たらないことから本条例の対象とならないが、後者の場合は、対象となり、適用労働者として扱うものである。

(適用労働者の賃金)

 第6条 受注者、下請負者及び法の規定に基づき受注者又は下請負者に労働者を派遣する者(以下「受注者等」という。)は、適用労働者に対し、市長が別に定める賃金(最低賃金法(昭和34年法律第137号)第4条第1項に規定する賃金をいう。以下同じ。)の最低額以上の賃金を支払わなければならない。

2 市長は、前項に規定する賃金の最低額を定めるときは、次に掲げる額を勘案して定めるものとする。

(1)工事又は製造の請負の契約 農林水産省及び国土交通省が公共工事の積算に用いるため毎年度決定する公共工事設計労務単価(基準額)

(2)工事又は製造以外の請負の契約 野田市一般職の職員の給与に関する条例(昭和26年野田市条例第32号)、別表第1の2の3の項1級の欄に定める額


【解釈】

 適用労働者の賃金の最低額については、本条例において額を明示しない。賃金の額は、社会経済情勢の変化によって毎年度変動することが予想されており、条例改正の手続上の制約から具体的な金額を条例に規定することは困難である。

 賃金の最低額は市長が定める旨規定する。

 第1号 工事又は製造の請負の契約については、農林水産省及び国土交通省が公共工事の積算に用いるため毎年度決定する公共工事設計労務単価(基準額)は、国が公共工事の積算に用いるための単価であり、建設労働者の賃金支払実態を調査し、都道府県及び職種ごとに設定されていることから労働者の賃金の最低額に反映させるのにふさわしいものと考える。


 第2号 工事又は製造以外の請負の契約ついては、野田市一般職の職員の給与に関する条例(昭和26年野田市条例第32号)別表第1の2の3の項1級の欄(労務職員の用務員(18歳)の初任給)に定める額を勘案して定めることとする。

(適用労働者への周知)

 第7条 受注者は、次に掲げる事項を公契約に係る業務が実施される作業場の見やすい場所に掲示し、若しくは備え付け、又は書面を交付することによって適用労働者に周知しなければならない。

(1)適用労働者の範囲

(2)前条第1項の規定により市長が定める賃金の最低額

(3)第9条第1項の申出をする場合の連絡先


【解釈】

 本条は、受注者に対して、@適用労働者の範囲 A前条第1項の規定により市長が定める賃金の最低額 B第9条第1項の申出をする場合の連絡先の3点を適用労働者に周知する義務を負わせる規定である。

 受注者が適用労働者に周知する方法については幅広く規定し、ある程度の裁量を認める。

 第1号の規定によって、本条例が規定する適用労働者に該当するか否かを公契約に係る業務に従事する労働者が自ら確認することができる。


 第2号の規定によって、適用労働者は、本条例による自分の賃金の最低額を確認し、受注者等から受け取った賃金が条例に違反していないか確認することができる。

 第3号の規定によって、受注者等が適用労働者に対して負担すべき義務を履行していない場合(例えば、受注者等が支払う賃金が条例に違反している場合)には、どこに申出をすればよいかを確認することができる。


(受注者の連帯責任)

 第8条 受注者は、下請負者及び法の規定に基づき受注者又は下請員者に労働者を派遣する者(以下「受注関係者」という。)がその雇用する適用労働者に対して支払った賃金の額が第6条第1項の規定により市長が定める賃金の最低額を下回ったときは、その差額分の賃金について、当該受注関係者と連帯して支払う義務を負う。


【解釈】

 本条は、受注者に対して、受注関係者がその雇用する適用労働者に対して支払う賃金の額が本条例による賃金の最低額を下回ったときの差額分について、連帯責任を負わせることで、市長が受注関係者の賃金の額に関する本条例違反について、受注者に対しても第10条第1項において是正の措置を命ずることを可能とする規定である。

 受注者が下請負者の選定に当たり、責任をもって選定することは、公契約の社会的価値の向上のために当然のことである。連帯責任を規定せず、下請負者の行為に対して受注者に何の影響も与えることがないと、受注者は下請負者の選定に当たり下請負者の労働者の賃金について考慮せず、下請負者が賃金規定を遵守しない場合に条例の実効性がなくなる危険がある。

 そこで、条例で定める賃金の最低額の支払については、受注者に連帯責任を負わせることで本条例の実効性を担保することになるものであって、この規定は目的実現のための最低限度の手段であるため、受注者にとって過重な負担とは言えず法的には問題ないものと考える。


(報告及び立入検査)

 第9条 市長は、適用労働者から受注者等が適用労働者に対して負担すべき義務を履行していないことについての申出があったとき及びこの条例に定める事項の遵守状況を確認するため必要があると認めるときは、受注者等に対して必要な報告を求め、又はその職員に、当該事業所に立ち入り、適用労働者の労働条件が分かる書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。


解釈】

 本条は、適用労働者から受注者等が適用労働者に対して負担すべき義務を履行していないことについての申出があったとき及び市長が本条例に定める事項の遵守状況を確認するため必要があると認めるときに、これらの事項を確認するための方法に関する規定である。なお、確認する書類としては、給与明細書や労働基準法第108条の規定に基づく事業者が作成した賃金台帳を想定、また、「その他の物件」としては、事業所内の電子計算機等を想定したもの。


 また、確認方法としては、入札時に労務単価等を記入した「労働者配置計画書」を提出させ、中間及び工事完了時の2回履行確認を実施することとする。

 なお、第1項の規定に基づき適用労働者からの申出があった場合は、当然、随時実施することとなる。

 さらに、本条による確認の方法に強制力を持たせなければ、確認できない事態が生じるおそれがあるため、第11条第1号において、『第9条第1項の報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたとき』は、市と受注者との公契約を解除することができると規定したものである。


(是正措置)

 第10条 市長は、前条第1項の報告及び立入検査の結果、受注者等がこの条例の規定に違反していると認めるときは、受注者の違反については受注者に、受注関係者の違反につしいては受注関係者(第6条第1項の規定に違反しているときは受注者及び受注関係者)に対し、速やかに当該違反を是正するために必要な措置を講ずることを命じなければならない。

2 受注者等は、前項の規定により違反を是正するために必要な措置を講ずることを命じられた場合には、速やかに是正の措置を講じ、市長が定める期日までに、市長に報告しなければならない。

解釈】

 第1項は、受注者等がこの条例の規定に違反している場合に、市長に対して、違反している者(受注関係者が第6条第1項の賃金の最低額に関して違反しているときは、受注関係者だけでなく、第8条の規定により連帯責任を負っている受注者も含む。)に対して当該違反を是正するために必要な措置を講ずることを命じる義務を課す規定である。

第2項は、前項による命令を受けた受注者等に対して、速やかに是正の措置を講じ、市長が定める期日までに、市長に報告ずる義務を課す規定である。

 受注者等がこの条例の規定に違反した場合に、直ちに契約の解除をすることはせずに、まずは是正の措置を講ずるように命じ、命じられた者は是正の措置を講じて報告することとした。

 また、次条において第1項の命令に従わないとき又は第2項の報告をせず、若しくは虚偽の報告をしたときには、市長は市と受注者との公契約を解除することができると規定し、是正の措置を講ずる担保とした。


(公契約の解除)

第11条 市長は、受注者等が次の各号のいずれかに該当するときは、市と受注者との公契約を解除することができる。

(1) 第9条第1項の報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。

(2)前条第1項の命令に従わないとき。

(3)前条第2項の報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。

2 前項の規定により公契約を解除した場合において、受注者等に損害が生じても、市長は、その損害を賠償する責任を負わない。

解釈】

 第1項は、受注者等が、@第9条第1項の報告をず、若しくは虚偽の報告をし、又は同条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたとき、A第10条第1項の命令に従わないとき、B第10条第2項の報告をせず、又は虚偽の報告をしたときは、市長は、市と受注者との公契約を解除することができるとする規定である。

 本条に規定する解除の法的性格は民法第540条の規定に基づく解除権の行使に当たるものである。

 第2項は、前項の規定により公契約を解除した場合において、受注者等に損害が生じても、それは受注者等の条例の規定の違反によって生じたものであるため、市長は、その損害を賠償する責任を負わないことの規定である。
 本条は、受注者が本条例の規定を遵守することに対する担保である。


(公表)

 第12条 市長は、前条第1項の規定により公契約の解除をしたときは、市長が別に定めるところにより公表するものとする。


【解釈】

 本条は、前条第1項の規定により公契約の解除をしたときは、市長が別に定めるところにより公表する旨を規定したものである。
 公表の方法としては、市のホームページに公契約の名称、受注者等の名称及び所在地並びに解除の理由等について公表する旨、規則において定める。


(損害賠償)

 第13条 受注者は、第11条第1項の規定による解除によって市に損害が生じたときは、その損害を賠償しなければならない。ただし、市長がやむを得ない事由があると認めるときは、この限りでない。


【解釈】

 本条は第11条第1項の規定により契約を解除することによって市に損害が生じたときは、解除の理由は受注者の条例違反であるため、受注者に損害賠償の責任を負わせるための規定である。ただし、市長がやむを得ない事由があると認めるときは、受注者を賠償の責めに任じないとする。

 ただし書の適用については、受注者に損害を賠償させないことについて市民の理解を得られる場合に限るものとする。

(総合評価一般競争入札等の措置)

第14条 市長は、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第167条の10の2第3項に規定する総合評価一般競争入札(同令第167条の13で準用する場合を含む。)により落札者の決定をしようとするとき又は地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項の規定により公の施設の管理を指定管理者に行わせるため候補者を選定しようとするときは、これらの者に雇用される労働者の賃金を評価するものとする。


【解釈】


 本条は、本条例で規定する公契約の範囲外のもののうち、市長が総合評価一般競争入札により落札者の決定をしようとするとき及び公の施設の管理を指定管理者に行わせるため候補者を選定しようとするときについて、これらの者に雇用される労働者の賃金を評価することを市の方針とする規定である。

 本条の規定によって、市長は、例えば9000万円の公共工事を発注する場合で総合評価一般競争入札により落札者の決定をするときは、原則として、これらの者に雇用される労働者の賃金を評価することとなる。

(委任)

第15条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。

【解釈】

 本条例の施行規則を別に定める。

(規則への委任事項)

 第4条第2号 予定価格が1000万円以上の工事又は製造以外の請負契約の種類

 第6条 第1項 適用労働者の賃金の最低額

 第12条 公表の方法及びその内容

 附 則

 この条例は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において規則で定める日から施行する。

【解釈】

 平成22年度分の契約から適用させるため、22年度契約事務の開始日から施行させようと考えており、後日、「野田市公契約条例の施行期日を定める規則」を公布することにより条例の施行期日を確定させる。

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