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はじめ通信9−1011
今こそ正せ!東京の教育のゆがみ
シリーズ@ ”学区自由化”の弊害

●毎月送っていただいている区立八幡小学校の「八幡だより」に、恒例行事として9月1日の引き取り訓練のことが、次のように載っていました。
「総合防災訓練の一環として、引き取り訓練を実施しました。突発的な大規模地震に備え、安全に避難し、迅速・確実に保護者に児童を引き渡すことをねらいとしました。夏休み明け初日ではありましたが、避難する際の約束「お・か・し・も」を守り、混乱なく保護者に引き渡すことができました。ご協力ありがとうございました。」
 ちなみに「お・か・し・も」とは何かと娘に聞くと即座に「押さない・駆けない・しゃべらない・戻らないよ。繰り返し教え込まれたから」とのこと。

●地震が発生し、子どもにとって単独帰宅が困難な状況を想定するなら、学区自由化で区内のあちこちからバラバラに子どもが通学している学校こそ、保護者の引き取り訓練が重要ではないかと感じますが、実際は逆で、この訓練は学区域を守っている北区などに限られています。
 それは、共働きが増えてどの学校でも保護者が迎えにこれない子どもが半分近くいますが、北区では近所の同級生の保護者が一緒に連れて帰れるのに比べ、学区自由化した区ではそれができず訓練実施が困難だからです。「いざというとき教職員が送り届けるしかないが、できるかどうか」と自由化した区の教員は不安げでした。

●学区自由化は、このように学校と地域の結びつきを薄れさせ、災害時に限らず地域が学校を支え守ることを難しくしてしまいます。
 さらに最大の弊害は、学力テストの成績や、いじめ・学級崩壊のうわさなどで児童・生徒の入学に極端な偏りが生まれやすくなり、学校は風評を恐れていじめや不登校の実態を隠したりする傾向が生まれることです。
 しかも学校間の競争激化で生まれた格差は固定化され、いったん入学の減った学校はなかなか人気を取り戻せず、結局学校統廃合の対象になる流れが共通しています。

●前橋市など地方の大都市では、いったん実施に踏み切った学区自由化を、小学校から見直し・中止する動きが強まっています。
 学区自由化しても学校ごとの格差が広がるだけで全体の教育のおくれは改善しないばかりか、一部「エリート」校の生徒や保護者にはサービスしたつもりでも、地域や自治体とはむしろ疎遠になってしまうことがはっきりしたからではないでしょうか。

●残念ながら東京23区のうち19の学区自由化地区では見直しの世論は大きくありませんが、子どもたちの中にとりかえしのつかない傷跡を残す前に、いち早くまともな検証が必要だと感じています。

(写真は、30人学級はじめ東京の教育改革をめざす08年6月の教育集会)

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