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はじめ通信9−1009

ついに始まった教育格差の修正
しかし東京の教育崩壊をくいとめるには道遠し

●父母負担軽減
 国の政権交代と、都議会の力関係の変化などで、教育分野でも「教育格差の是正」といううたい文句で、いくつかの政策変更が打ち出されてきました。
 その中心は、高校授業料の無料化など、父母の教育費負担の軽減策にあり、さまざまな意見のある「子ども手当て」も、そのねらいの一つが、授業料以外の教材費や給食費など教育関係費用にあてることにあるといわれています。(政府のねらい通りに使われず、遊興費や貯蓄に回るとの批判もありますが)
 貸与型奨学金の給付型への拡充なども検討されていますが、今後、自治体による独自の私学助成や就学援助などまで改善を支援するかどうかは不明です。東京都のような不交付団体では、独自の教育施策が多いため、格差是正のための、自治体への要望や運動が重要になります。

●学力テスト
 教育政策の見直しはこれにとどまらず、今年で3回目の全国学力テストを全員参加型から抽出方式に切り換える方向を打ち出しました。
 学力調査のためなら抽出調査で十分であり、全員参加は、同じ設問で経年変化を見るにはかえって不適切であること、何よりも全員参加テストは、保護者からの結果公表要求に応えざるをえず、自治体間、学校間などの競争もあおり、ついには足立など教委ぐるみ学校ぐるみの不正にまでエスカレートする危険を、私もかねてから指摘してきました。
 「教育改革」の名の下に競争教育推進に手を貸してきた民主党も、矛盾の多い全国テストに年間58億円もかけるより、少ない予算で可能な抽出テストに切り換える決断をしたものです。学校に一台ずつで使いにくい電子黒板も補正予算から削除される見通しです。
 しかし、競争と統制の「教育改革」には、まだきちんとした反省がされたわけではありません。

●教員養成
 学校の授業など日常教育をどうレベルアップしていくかについて、民主党の文科大臣は「まず先生がもっとスキルアップしなければ」(毎日新聞10月7日)と、相変わらず「量より質」にこだわっています。「学力低下」の責任を個々の教員の力量に責任転嫁する点では、自民・公明政権と変わりません。
 あまりに評判の悪い十年ごとの教員免許更新制は見直して教員養成に6年かける制度を検討するとか 「教員の雑務を減らす」改善は示唆していますが、東京の学校の、人も減らされまともな残業代もなく深夜まで仕事に追われ、教員同士の激しい人事競争で精神疾患や過労死が拡大している現実にはとうてい届かず、教員採用への応募が2倍を切り優秀な人材が期待できなくなりつつある現状は、まだまだ変えられないでしょう。

●少人数教育
 1クラスの子どもの人数を20人程度にするための現場の教員増こそ必要だという国際的に試されずみの事実から目をそらして、教員の増員を避ける背景には、民主党が「脱官僚支配」からの短絡的結論で公務員大幅削減を掲げていること、国の財源確保に不可欠な大企業の課税強化や軍事費削減ができない弱点があります。
 教育現場では、少人数学級を保障する教員増こそ教育条件の要であることはあまりに明白で、競争主義で過度に歪められた石原都政と都議会自公民以外は、残る全46道府県はほとんどが全会一致で少人数学級を推進しています。
 9月議会では、都議会でも北区議会でも変化がありました。
 都議会ではわが党の質問に、学級編制基準は「今後適切に判断」していくとの教育長答弁があり、少人数学級の請願審査でも「要望を重く受けとめる」との答弁も出ています。
 北区議会では、公明党が「30人学級ではなく少人数学級なら」認める姿勢を示し、民主党議員も少人数学級を研究するよう区に求めており、変化のきざしがみられます。

●それでも”競争と監視”の教育は厳然と
 こうした変化にもかかわらず、東京の教育のゆがみは進行中です。
 北区以外の多くの区で、小学校にまで学区自由化を広げた結果、学校が地域から孤立し、競争主義で人間関係の崩壊がおきています。
 また都立学校では戦争賛美の教科書が使われる一方、「日の丸君が代」おしつけ、生徒の外出禁止など、統制強化の動きも顕著です。
 次回は、東京の教育の遅れや後退について検証します。

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