トップページへ  はじめ通信目次へ   

はじめ通信9−0128

”科学”の名で環境破壊の開発をゴリ押しする石原都政に未来はない

●1月22日、「公害を無くし住みよい北区をつくる会」主催で、北区の大気汚染調査の報告会が開かれました。
 江戸川区、墨田区、荒川区など、東部・下町の大気汚染を毎年調べてきた、旧航空高専、現「産業技術高専」の吉田喜一教授の研究室の学生さん達が、昨年11月5日に、北区全域で北区の会の区民とともに、NO2、SPM、粉塵などを測定した結果を発表したものです。

●恰幅のよい学生代表が、パワーポイントを使って要領よく報告。当日は晴れで、風もなく、穏やかな一日で、測定日和だったとのこと。
 北区の京浜東北線沿いのがけ地の高低差によって、大気汚染に影響があるか注目したが、実際にはさほど差がなかったこと。
 むしろ区部中央を横断する環7から南北に流れ込む自動車交通によって汚染が広がっているということ。
 他区との比較では、ディーゼル規制が始まる前に測定した江東区などに比べ、北区は大型車の流入が多い割には汚染が深刻ではなかったことなどが報告されました。(図を参照)

●次に、権上(ごんじょう)かおるさんが、「都市土壌汚染について」報告しました。
 彼女は、堀船印刷工場反対運動で、環境を守る立場から、河川を利用した舟運によるパルプ搬入を提言した方ですが、ただ提言しただけではなく、カンパをかき集めて品川からトラックと競争して隅田川に船を走らせ、舟運のほうがコストも時間も節約されることを証明しました。
 この結果を突きつけて、堀船工場の資材運搬に船を使わせ、その後も隅田川沿いの公共工事に船を使わせる実績を築いてきた実績を持つ、素敵な女性活動家でした。
 今でも工場に対し、パルプ搬入に船を使うよう要求し続けているということでした。

●北区の測定で、中十条1丁目の交差点の縁石から採取した粉塵に、鉛が異常に多く検出されたことに議論が集まりましたが、権上さんは「さまざまな原因で、突出したデータが出ることがある。思わぬ原因がありうるのが環境の世界」と説明し、きわめて冷静でした。

●私にも環境問題についての発言を求められました。
 以下に紹介します。

<そねはじめ都議の発言>

(1)西さん(大気汚染訴訟原告団長)からお話があったように、大気汚染を無くすたたかいは、これからが本番です。
 皆さんの奮闘で、気管支喘息については、医療保障制度が実現しました。これをいかに定着・普及・充実させていくかが、大きな仕事です。
 今、残念ながら、都立病院にさえポスターがほとんどなく、都内で7万人以上が対象と言われながら、まだ28600人ほどしか(北区では830人)登録していません。

 地球環境問題も、大規模事業所にようやくCO2規制が実現しますが、発電所とともに残されたのが自動車排ガスの規制です。
 今度の議会に、自動車のCO2対策が条例化される動きがありますが、自動車に甘すぎる石原知事が、いい加減な規制でお茶を濁すことのないよう追及していきたいと思います。

 同時に、外需頼みのシンボルだった自動車メーカーが、世界不況で不振な今こそ脱自動車のチャンスです。同じ重量の人や荷物を運ぶのに、自動車ほど環境負荷の大きい交通手段はありません。
 堀船印刷工場も、まだ稼働率は半分程度だといいます。溝田橋の高速道路の入り口が開通すると、関東北部までトラックが行くので、出入台数が多くなる可能性があります。それまでに舟運利用などを粘り強く働きかけていこうではありませんか。

(2)環境問題は、科学技術者が、住民の側に立つか、開発側に立つかで結論が全く変わってしまうことを痛感させられます。大気汚染でも、堀船印刷工場でもそうでした。
 そして現在、東京で最大の環境論争は、築地市場移転予定地・豊洲の汚染問題でしょう。

 豊洲の土地は巨大なガス工場跡地ですから、もともと食品市場には向きません。
 「他に適地がない」というなら、綿密な調査と対策が不可欠ですが、石原知事は、元の持ち主・東京ガスの調査だけで十分という態度でした。
 07年の知事選挙で争点になり、しぶしぶ「調査が必要かを検討する」として、開発側で有名な学者を座長に「専門家会議」を立ち上げました。

 専門家会議は、東ガス調査で十分だが念のためということで、07年夏に部分的な調査をしましたが、その結果、基準の1千倍の汚染が見つかった。
 「これはもう少し詳しく調べる必要がある」ということで、08年2月〜4月に4千箇所の調査を行なったら、4・3万倍のベンゼン、860倍のシアンを発見。調査のたびに汚染濃度が、ひと桁ずつ上がったわけです。また追加調査をやらざるを得ませんでした。

 困ったのは市場当局です。07年秋に早々と670億円という汚染対策費を発表したものの、その前提である東ガス調査と比べて、基準を超える汚染範囲が予想より広かったこと、一度土壌処理した場所が地下水で再汚染されていたこと、地下深い粘土層のあたりに高濃度汚染の存在が浮かび上がるなど、つぎつぎと発見されたからです。
 都側は、原則公開の「専門家会議」では、環境学会の畑会長や坂巻先生から追及され、科学論争ではもう勝てないと見たのか、まだ正式な報告書が出されない08年8月に、専門家会議を解散するという奇策に出ました。

 そして今度は、汚染対策をゼネコンから募集するというやり方で、580億円で対策が可能だと言い出した。学者の論争で負けたらゼネコンが直接乗り出すという露骨な作戦です。
 新しい「対策技術」は、おそらく「企業秘密」を理由に詳細を出さないつもりでしょうが、報道では、土壌入れ替えをやめて洗浄で済ませるとか、専門家会議の学者でさえ困難と指摘した、バクテリアによる高濃度ベンゼンの分解とか、高温で熱処理すれば油分は全部消えるだろうとか、地下水による汚染の浸透を防ぐための鋼矢板打ち込みをやめるとか、いずれも安上がりの手抜き手法ではないかと推測されます。都民の食の安全より、低コストを優先させただけではないでしょうか。

 こんな横暴を許さないために、引き続き奮闘したいと思います。
 公害のない東京を実現するために、どうしても今年の都議選を勝利させていただきたい。 

 ※その後26日に、専門家会議解散後に報告された08年9月の調査報告書で、ベンゾピレンという発がん性物質の汚染や、地下の粘土層が切れている(つまり汚染が深く浸透している)可能性などが都に報告されたのを隠蔽していたことが明らかになりました。
 報告が出る前に、専門家会議を急いで解散したのは、これが分かっていたからではないかという疑念さえ湧きます。

トップページへ  はじめ通信目次へ