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はじめ通信8−0526
「この期に及んで」シリーズE
豊洲は青酸イオンでも空前の汚染地帯

●5月19日に開かれた専門家会議で、豊洲の汚染調査の一次分の結果が公表されました。
 報道されていた通り、ベンゼンの土壌汚染では基準の4万3千倍、地下水では1万倍の汚染がそれぞれ明らかになりました。

●同時に直接的な毒性として深刻なのは、ベンゼンの高濃度汚染と同じ場所で発見されたシアン(青酸)の汚染です。
 もともとシアンは、余りに毒性が強いため土壌から検出されてはならない、つまり存在自体が認められていない物質です。
 基準値は、ベンゼンが0・01ミリグラムで、シアンは0・1ミリグラムですが、シアンの場合は、それ以下の量では通常の実験では検出することが困難なため、検出限界としての値が便宜的に「基準値」と同じような扱いをされているだけで、同じ量が人体に入った場合でも、発がん性など慢性毒性が問題となるベンゼンと比べ、シアンは直ちに劇的な毒性を発揮します。

●今回、豊洲で発見されたシアンは86ミリグラムですから「基準の860倍」となりますが、単純に4万3千倍のベンゼンよりましだと思ったら、大違いです。
 同じ1リットルの土から出てきたベンゼンとシアンですが、ベンゼンは継続的に体内に入ってくることで発がん性の危険が生じるのに対し、シアンの場合は、この量で十分に死に至るからです。
 シアンイオンは分子記号でCNとなり、分子量は26。これが化学物質として体内に入る場合はシアン化ナトリウムの場合が多く、分子量は59。シアンイオンで86ミリグラムが検出されたということは、シアン化ナトリウムでは160ミリグラムとなり、成人の致死量の下限・150ミリグラムを越えているため、この量で間違いなく人間の生死が危うくなります。

●高濃度のシアンが発見されたのが地下水ではなく土壌だったことも、地下水の汚染が一定の広さで広がっているのに比べ、ピンポイントなので、一見、深刻な場所が限られているように見えますが、それも大きな勘違いです。
 シアンイオンはきわめて水に溶けやすい物質ですから、工場の操業終了から20年以上経過する間、シアンを含むタールなどの物質が新たに供給されなければ、土中のシアンは地下水に溶けて拡散し、現在では相当薄まっているはずです。
 ところが今回、高濃度汚染が発見された土壌というのは、おそらくシアンを含むタール状態の物質をふくむ土の塊だと思われます。 こうした土壌の断片が、地中のあちこちに散らばって存在している場合、そこからはシアンがいっぺんにではなく、すこしづつ地下水に染み出しながら半永久的に汚染が再生産されていることが考えられるのです。
 調査で4千箇所以上サンプルを取ったといっても、水平方向で10メートル四方(100u)に1箇所で、垂直方向では、元の東ガスの地表付近だけの1箇所に過ぎません。仮に1メートル四方のタール上物質を含む塊が、深さ10メートルまでの土中のあちこちに散在している場合、この方法で発見できる確率は、千分の1(10メートルの立法体の容積)しかなく、その一つが今回の場所だとすれば、同じような汚染が1千箇所ぐらいあるかもしれないということになります。

●ここまで汚染が深刻なことが明らかになった以上、もはや技術的なやりくりで汚染対策をうてば、市場を移転させられるなどと考えること自体が、あまりに都民を愚弄する茶番でしかないことは明らかです。

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