はじめ通信7−10−24 「07学力テストが残したもの」シリーズ3 《先行した都の学力テストのずさんさの意味》 ●国の学力テストに二年先行して都独自のテストが行われています。 私は、この都独自のテストの実態に、いっせい学力テストの問題点が露骨に現れており、それだけに国が後で行ったテストでは都のテストの弱点を何とか繰り返さぬようにしたと推測しています。 そこで、今回は、都のテストの問題点を振り返ってみたいと思います。 ●都独自のテストは国が委託したベネッセのような専門業者でなく、都の教育庁で作成したと言われますが、殆どの問題がマークシートによる選択回答で、現場の先生には非常に評判が悪く「自分で作ったほうがよほどましな問題が作れる」と言う感想もありました。 これに対して今年の全国学力テストでは、選択方式に加えて作文や書き込み式の出題が非常に増えました。都のテストの弱点を教訓にしたのではないかと推測するのは、私だけではないと思います。 しかし全国200万人以上の子どもを受けさせるテストで書き込み式を増やしたことが、採点基準の統一や徹底を非常に難しくし、集計が遅れたといわれています。 ●都教委では、今年から全国学力テストが始まったことから都独自の学力テストは今年で終了し、新たに「問題解決能力」を調べるテストが始まりました。これはこれまで以上に内容形式ともにズサンで、明確な用語の誤記も見られるものでした。 たとえばテスト用紙には「適応する力」をみる問題としながら、別の所には「適用力」となっていたり、同じように「意志」が「意思」にすり替わっていたりしました。 ●都教組がこの用語のくい違いを都教委に質問したら、当局は「誤植である」などと、同じような意味だからまったく問題がないかのように回答したとのことです。 重大な誤りとは言えないかも知れませんが、テストの全てに責任をもつべき都教委が、にべもない回答をするというのは、この問題のねらいと目的をよほど軽く見ていることの現れだと見るべきではないでしょうか。 ●実際、テストの出題内容も「出題のねらい」との関係で首をかしげるものが多いのです。 たとえば、右の図は、小学校のテスト問題で、「意志決定する力」を見る問題とされていますが、よく読むと、決められた条件を守って一番早く回る順序を探すだけの、気転の早さを見る程度で、とうてい「意志決定の力」をみるというほどの内容ではありません。これが、他の文書で「意思決定」と表記されていても、どちらも見当違いだというのが、誰しも感じることではないでしょうか。 ●こうしてみると「意思決定」にしても「意志決定」にしても、一度のペーパーテストの問題で本当に評価できるのか、はなはだ疑問です。 もし本音の意思(意志)決定を問うとすれば、もっと子ども自身の主体に迫る問題をペーパーテストでなく面談で設問するなどが必要でしょうが、これを一律にテストすることなど不可能で、意味が無いことも明らかです。 ●都のテストには、この「意思決定」以外にも、「適応(適用)応用する力・見通す力・問題を発見する力・表現する力」などを見るとしながら、かなりとんちんかんな問題が並んでいて、私も呆れてしまいました。 要するに、何らかの基準を設けて点数でランク付けすることに最大の狙いがあるのではないかとかんぐられても仕方が無いでしょう。 ●こうした都のテストの影響で、足立区では独自テストが始まり、不正事件までエスカレートしていきました。次回は、足立区で何が起きたのかについて、検証したいと思います。 |