はじめ通信7−0509 知事選後、築地市場豊洲移転にあらためて関係者がこぞってマッタ! 環境学会の豊洲土壌調査についての都への要望書全文紹介 ●築地市場の豊洲移転問題は、今年2月の都議会予算委員会で、私の代表総括質疑の最後に取り上げました。担当の中央卸売市場長は、東京ガス跡地の環境対策は法律以上で問題ないと開き直り、環境局長は豊洲の環境に問題はないとの答弁でした。 ●ところが、この時期に豊洲の移転予定地に溜まっていた地下水や雨水を都が未処理のままポンプで排出してしまいましたが、その一部を流出前に水路で採取し、極めて強度のアルカリ性であり、環境基準を上回っていることを専門家が指摘しました。 知事選前の3月15日に「市場を考える会」が移転見なおしを求めて集会デモ行進を決行。マスコミも大きく取り上げ、知事選の重要争点になりました。吉田万三候補はもちろん移転反対・現地再整備を公約。あいまいだった浅野候補も選挙告示後に「反対」に転換。 これを受けて、石原知事も土壌再調査の必要性を検討すると表明せざるを得なくなりました。 ●知事選告示後、共産党都議団が99年当時、東京ガスが、福永副知事宛に石原当選後の99年11月に築地の豊洲移転を都から提案された事実とともに、自社開発計画や土壌汚染などを理由に移転は困難と、拒否の回答を都に行なっていた文書を、情報開示で明らかにしました。 これにより、豊洲移転は前知事時代に決まっていたことを自分が引き継いだだけとの石原知事の言い分が虚偽の疑惑が高まり大きな反響を呼びました。 ●知事選直後に「考える会」が、あらためて移転計画見直しを都に要請。それに先立って、「会」として「移転反対は市場の業者の一部だけ」という石原知事の発言に事実で答えるため、3月末から築地の事業者へのアンケートを開始。 ●中央区長選挙予定候補による公開討論で、共産党推薦の佐藤候補が「反対」を明確にしたのに対し、現職の矢田区長も移転後の対策も検討せざるをえないとしながらも、断固反対の旗は降ろしておらず、移転中止になれば一番良いとの反対に傾いた発言。地元区の反対意思が明確になりました。 ●選挙直後4月23日に「会」が、73%が移転に反対していると言う築地事業者へのアンケート結果を発表。知事も確かめるといわざるを得なくなり、築地市場関係者の多数が移転に反対している実態が浮き彫りになってきました。 また「会」の記者会見に、元自民党都議で葛飾区長選にからみ贈収賄事件で有罪となった出口氏が同席し、自分が都議の当時、都は豊洲移転を検討したが、アメリカの地震で液状化が問題になり断念して築地再整備が決まったとの「経過」を証言し話題に。 ●石原知事は同じ23日の記者会見で、豊洲の土壌調査の必要性を検討するため土壌汚染や職の安全などに関する専門家4人による検討会を連休明けに発表し、4〜5ヶ月で結論を出させる意向を示しました。 この中で知事は相変わらず、築地にはアスベストがあって震災時はどうするのか。部分的に改修するにも種地がないなどと、移転にこだわる姿勢も示しています。 ●月刊誌「論座」6月号巻頭の「潮流07」に、双日総合研究所の吉崎達彦氏が、20代から通っている溜池山王のメシ屋のマスターが、築地にはうまい魚を30円の違いで競り落とす仲買人がいるが、豊洲に移転したら「遠くなるし面倒くさいからもうお昼はやらない」と宣言している話を紹介し「なんとか翻意してくれないかなあ」と結んでいる。言いたいのはマスターにと言うより知事にではないかとニュアンスを感じるのは私だけではないでしょう。4月22日の日経読書欄にも、テオドル・ベスター著の「築地」という書籍が紹介され「マーケットとしての築地を物理的空間としての築地と切り離して考えることはできない」と言う著者の言葉まで紹介している。お殿様に何とかご乱心を気づいてほしい人たちの涙ぐましい努力と言うべきだろうか。 ●5月8日、都が内定している4人の検討委員が日経新聞等に報道され、日本環境学会会長など、これまで土壌問題を指摘してきた専門家がふくまれていないことが判明。 これに対し、5月7日、環境学会は土壌汚染防止法に基づく詳細な土壌調査の実施を求める要望書を提出しました。 以下に、その全文を紹介します。 東京都知 事石原慎太郎様 07・5・7 日本環境学会会長 畑 明郎 築地市場移転予定地の安全性検討会に関する要請書 築地市場の移転予定地・東京ガス豊洲工場跡地について、深刻な土壌・地下水汚染が発見され、市場関係者はもとより、都民に大きな不安を呼んでいることはご承知のとおりです。当学会でも各方面からの要望に応じて、去る2月11日に公開シンポシウムを開催、現時点で懸念されている間題点について一定の検討と評価を試みました。 今回、貴職もこの間題に大きな関心を寄せられ、近々専門家による検討会を設置して問題の究明に当たられると承りました。まず事実を正確に把握した上で、多くの角度から検討を加えることは、この種の間題の根本的解決に不可欠な手段です。その意味で今回の貴職のご判断には、深甚な敬意を払うものです。 つきましては、この検討会の果たすべき役割について、当学会と致しましても大きな期待と関心を持っておりますので、ここに以下の各項に関し要請を致します。 ご多用中誠に恐縮ですが、貴職に於かれましても十分ご検討頂いた上、可及的速やかに文書でご回答下さいますよう、お願い申し上げます。 1.現在の論拠となっているデータは、東京ガスが実施した概査によるものなので、今回の検討に当たっては、都自身が新たに取得したデータに基づくべきだと考えます。その新規調査に当たっては、土壌汚染防止法に準拠して、敷地全域にわたる10mメッシュの側定点を設け、強震時に地盤の液状化現象が起こる深度を考慮した深さ20m以上のボーリングを行い、汚染物質ごとに空間的分布を明らかにして下さい。 2.地下水による汚染の拡散を防止する意味で、十分な数の観測井を設け、自記記録による水位・水質の観測を実施して下さい。併せて雨量・蒸発量の観測を実施して下さい。 3.安全性を十二分に担保するために、土壌中からの汚染物質の溶出試験は、中性水を用いる公定法に加え、酸性水に依る溶出試験も併せて行って下さい。 4.検討会の専門委員数は4人、答申までの期間は約半年と報道されていますが、十分な解析に必要な作業量が、その程度の規模に収まるとは到底考えられません。早くからこの間題に取り組んできた当学会員を含めた委員を追加し、期間も、データ取得・解析・取り纏めに各1年ずつ程度は保証するようにして下さい。 5.検討会は希望者による傍聴を認め、討議に用いるデータ・資料類や議事録を速やかに公開して下さい。また、それらの情報を、論文・記事等へ引用することを認めて下さい。 6.適当な時期に、当学会員をはじめとする研究者・市場関係者・消費者都民と、検討会委員との公開討論の機会を設けて下さい。 7.研究者・関係者等による現地の立入調査と、土壌・水・大気等のサンプリングをさせて下さい。また、ボーリング・コア等、都側が得た試料の観察と分取を認めて下さい。 8.既知の汚染物質とは別に、現在、予定地からは強いアルカリ性の地下水が湧出・排水されていますが、これは当初、都側が根拠を示さずに「雨水だ」と説明していたものです。この地下水の汚染機構と抑止策についても、併せて検討の対象として下さい。 以上 |