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はじめ通信10−0418
教育現場での人間破壊をふせぐ一歩に
堺市の女性教師自殺の公務災害認定について


●堺市立中学校での校内暴力により98年に自殺した女性教師の労災認定が、夫の粘り強い訴えにより12年ぶりに裁判で認められたという報道が各紙に載りました。
 記事を読んで、90年代(若しくはそれ以前)から深刻さを増す教育現場での人間破壊の実態を垣間見る思いの人が多いのではないかと想像します。だからこそ、それなりのスペースで赤旗はじめ各紙が報道したのかもしれません。

●そして、あまりに当然の公務災害認定の判断を得るだけで、遺族が裁判闘争までふくめ12年も争わなければならなかったこと、それでもなお当局(直接には災害補償基金)は控訴するかもしれないこと、そして何より事件が残したものの中で最も深刻な、当時女性教師をいたぶった中学生達や、彼女を助けられなかった周りの教師たちの、忘れたふりや知らんぷりを決め込んでもなお深くえぐられた傷口を癒していくことがいかに困難かを考えるとき、まさにこの事件が、わが国の教育がうみだした地獄の状況を象徴していることを思い知らされます。

※多忙な3月が終わる頃、各新聞の記事を見て、以上までの文章を書き、あとが続かないまま、そのままにしていましたが、その後、4月12日に参議院の行政監視委員会で、大阪出身の山下よしき議員がこの事件を質問で取り上げたことを知りました。

●山下議員は、「T先生の自死が『公務災害』であるときちんとみとめてこそ学校現場で起こっている問題を社会に提起し、再発防止につながる。当然ながら控訴せずに地裁判決を受け入れるべきだ」とただし、原口総務大臣も「基金は控訴しない見通しと聞いている。もともと基金が認定しなかったのは、うつ病に対する基本的認識の誤りがあったためだ」と明確に是正を認める発言を行ったことが報じられました。

●山下議員はさらに、教師への暴力や器物破壊などが10年で6割増となり、教師の病気休職が2倍に、精神疾患の休職は2・8倍になっており、「根本的解決方法は教師の数を増やし、少人数学級を実施することだ」と強調しました。
 また臨時や非常勤講師などの非正規の教員が増えていることを示し、正規の教員に転換を迫りましたが、川端文科大臣は「正規での対応が前提」とのみ答えました。

●別の記事ではT先生の遺族・つまり12年頑張って訴え続けた夫が傍聴にきており、委員会後、原口大臣などが本人に陳謝したこと、遺族が山下議員と握手を交わしたことが紹介されていました。
 この事件の重みを受けとめ国会ですぐに動いてくれた山下議員や、当局の控訴取りやめの措置が率直にうれしかったのは事実です。

●ある新聞記事に、T先生は1977年に教員採用となって、98年に自死したとき51歳とあり、採用の年が私のかみさんと同じです。 少し年代が上なのは、他の仕事から教師へと転職したのかもしれません。
 こうした一人一人の教育者の熱意と経験が十分生かされる時代を一日も早くと祈るような気持ちで読みました。
 あとどれほどの教師や生徒の犠牲が出るまで、義務教育の40人学級定数が続くのだろうかと考えると暗澹とする思いです。
 しかも少人数学級でさえ、あくまで教育問題解決への長いトンネルのほんの入り口にしか過ぎないのは明瞭ですから、道の遠さを痛感させられます。

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