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はじめ通信10−0126
500人以上も”見せしめ解雇”の一方で”忠誠”を求めるのか!?
長妻厚労大臣が社保庁職員とOBに年金実務の不祥事を正直に告白するよう「呼びかけ」

●長妻大臣は、間もなく解体される社保庁の職員やOBに、残された1500万件の不明の年金記録について、過去の不祥事の情報を正直に提供するよう呼びかけたと報道されています。
 しかし社保庁解体については、職員の扱いに著しく公正さを欠く、分限免職(公務員の解雇)という重大な労働基本権の侵害があり、これをごり押ししながら、職員にだけ正直な告白を求めるのはまったく筋が通りません。

●民主党は、年金制度改悪や正しい年金がもらえない国民の怒りを逆手にとって、社保庁を解体・民営化するという自民・公明政権の方針を、自らのマニフェストと異なるにもかかわらずそのまま継承してしまいました。
 いちばん危惧されるのは、社保庁解体によって、過去の不祥事や実務のミスなどがなぜどのように大量発生したのかの具体的な究明が不可能になり、政府の年金問題解決の責任も曖昧されてしまうことです。

●ましてや責任をあいまいにするだけでなく、民営化後の「年金機構」への職員移行に際し、労働条件を切り下げた上に2500人もリストラし、従わない労働者525人を分限免職の仕打ちにあわせるなど、「年金改革」を職員の大幅リストラの口実にするいう違法なやり方を許せば、今後の労働者のたたかいにも悪しき前例となるもので、断じて許してはならないことです。

●さらに報道によれば、リストラの最大の根拠といわれた「処分の有無」と、リストラ対象とは一致しておらず、分限免職された人の7割は懲戒処分の経験が無い一方で、処分経験者でも多数が「機構」に採用されているなど、恣意的な判断で一方的な解雇が決められているというのです。

●1月19日の赤旗新聞の報道では、解雇されたうち31人が処分撤回を求めて人事院に不服申し立てを行っていますが、その中には過去の年金不祥事を究明するための調査に協力した職員が含まれており、国民の年金受給権を守るために公務員としての誠実さを発揮した労働者が、それが原因で不当な首切りにあったとすれば、なにをかいわんやではないでしょうか。

●ただし誤解のないよう付け加えるなら、私自身に旧社保庁職員に同情する気持ちはいっさいありません。
 社保庁の年金実務の中で、紙媒体からコンピュータへの移行の際の転記ミスや氏名等の取り違えが大量に発生したこと、めまぐるしい制度変更のたびに個々人への正確な制度適用が行われなかった例があったこと、企業を退職して国民年金に移る際に過去の記録を抹消してしまったこと、また経営困難の企業から強引に保険料を納めさせるため、社員の給与を減額したと偽って滞納保険料を完済したように偽装させる不正が横行したことなど、数々の不祥事が発生したことが明らかになりつつあります。

●私は、民間企業から民主青年同盟の専従になり、さらに赤旗の仕事で共産党専従になりましたが、その間、転職のたびに年金手帳の手続き変更を行い、少ない給与から社会保険料を天引きされてきたにもかかわらず、2008年に届いた年金記録通知からは、13年間の厚生年金の記録が影も形もなく消し去られていたのです。
 何の手続きミスもなかった私の場合さえこういう間違いが起きたということは、不明の年金記録が5千万件にも及んだ原因として、決してごく一部の職員の過失や単純ミスだけではなく、意図的な職務怠慢や不適正な実務が、そうとう幅広く職場に蔓延していたとしか考えられません。

●私の想像が事実だとするなら、強引なコンピューター導入や制度改悪のしわ寄せをもっぱら現場職員におしつける社保庁上層部のやり方に不満があったとしても、扱っているのは国民が汗水流して働いて積み立てた老後の年金だということを考えれば、国民に奉仕する公務員として絶対許されないことです。
 私は、社保庁での不祥事の実態についての内部告発は、労働者に責任転嫁するような政府にではなく、雇用や権利を守って共にたたかう労組や弁護士、私たち共産党などに是非寄せていただき、一人でも多くの国民に年金が渡るよう勇気を発揮して欲しいと呼びかけたいと思います。

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