はじめ通信10−0125 都教委が小中学校の土曜授業を「容認」 ことは越権というだけではすまない! ●1月14日の毎日新聞夕刊に、都教委が区市町村教育委員会に対し、月2回を上限として、土曜日の授業を行うことを認める通知を出したことが報じられました。 義務教育における授業の日数や曜日設定は、これまで国の権限で決められてきましたが、最近は各区市町村の教委または学校単位で、独自に「補修」や「部活動」などという形で非公式の授業を行っています。 今回は、都教委が土曜授業を公式の授業時間に加えることを認めることで、事実上土曜休日制度を15年ぶりに逆行させることを意味するもので、重大な制度後退になりかねません。 ●都教委は、日本の子どもたちの平均学力が国際比較で下がってきた要因として、90年代の文科省による「ゆとり教育」路線を非難し、「学力向上」を口実に、全員参加の学力テストを強行し、学区自由化などで学校間競争を拡大させるなど、政府が学習指導要領を改訂し教科内容を再び過密化させる方針転換を行ううえで、強く先導・後押しする役割を果たしてきました。 ●その結果、学校での授業時間数が足りなくなり、区市町村ごとに、土曜補修や夏休み短縮などがひろがってきていましたが、それでも時間数が不足することから、さらに授業時間の大幅増加を狙って土曜授業を公式の授業として認める方針を打ち出したものと思われます。 ●しかし土曜授業について正式の授業として認めるというのならば、地方自治や分権の観点から見れば、基礎的自治体である区市町村教育委員会が、それぞれの実情に応じて決めることはあっても、都教委が通知を出して月2回までなどと決めるのは、国に代わって勝手にうえから統制をかける、明らかな越権行為です。 ●小学校の授業時間を、むりやり元の土曜授業を復活してまで増やしていくことは、フィンランドはじめ国際的な教育改革の方向とは、明らかに逆行しています。 日本や東京の子どもたちの平均学力が国際比較で下落しつつある最大の原因は、教育予算をケチって多人数を狭い教室に押し込み、むりな競争教育で子どもたちの中に差別をつくりだし、ごく一部のエリート的存在の子どもだけがもてはやされる一方で、圧倒的に多くの子どもが”学校嫌い””勉強嫌い”に追い込まれていることにあり、そこにこそメスを入れなければなりません。 ●学習によって、分からなかったものが分かるようになる喜びを子どもたちに発見させ、子どもたち自身が共同で学び教えあうチャンスを与えてこそ学力も向上し、学ぶ意欲も育つこと、そのためには、教員による一人一人を大切にする少人数の教育が不可欠なことは、少人数学級を先行して進めている山形県など多くの教育実践で、日本でも実証されて来ています。 ●同時に、今回の制度が、過労や精神的ストレスで次々退職や長期療養を出している学校教諭についても、今回の制度がさらなる弊害をもたらしかねないことは、次回レポートします。 |