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公営企業会計決算委員会総括質疑(要約)  2001・11・9・曽根

11月9日の公営企業会計決算特別委員会で私は代表総括質疑にたちました。
八王子や清瀬の小児病院問題など、子どもたちや患者さんの命にかかわる重大な統廃合です。
 その他、公営企業の借金、臨海開発なども取り上げました。要約を紹介します。
多摩の小児医療、豊島病院の地域医療からの撤退許さない

●公共事業全体の見直し議論がようやく財源も含めてされるようになった。
 国と地方あわせて毎年100兆円の財政支出の中で、公共投資が半分を占めており社会保障はその半分以下にとどまっている。この枠組みが630兆円の内需拡大の対米公約としてバブル当時につくられたまま、バブル崩壊後も固定されていることが、国と都の財政悪化の最大の原因であり、わが党はこれを段階的に逆転させていくことが必要だと主張してきた。
 公共事業のなかで大きいのが、道路や都市開発などと共に上下水道と鉄道だ。これら公営企業が担っている公共事業の投資のありかたについて、この機会に質問しておきたい。
●第1に、公営企業の借金の大きさの問題。2000年度末で5兆3700億円。一般会計全体借金が7兆4千億円だから、その7割に及ぶ。
 しかも2000年度は、一般会計の都債発行が前年の8500億円から4718億円に大幅減となったのに対し、公営企業の都債発行は前年並みで4754億円、ついに一般会計の発行額を上回った。
 財政再建プランや依命通達から、別枠扱いになっているからこそではないか。
●公共事業見直しが時代の流れだが、公営企業はそうなっているのか。投資規模と内容を厳しく吟味しているのか、各局長に質問する。
Q1・すでに3兆円近い借金残高の下水道局はどうか
A1・適切に事業を行なっている。
Q2・整備費が1兆円近くにふくれた大江戸線を2000年度に開業させた交通局はどうか
A2・新設路線は採算を重視して運営している。
Q3・水道局については、現実に水の使用量と、需給計画の間が2割も開きがあるのに、いまだに八ツ場ダムを初め、新たな水源対策に巨費を投じようとしているがもはや需給計画を見直すべきではないか。
A3.東京構想2000に基づき、近く見直す。
 東京構想は人口が増えると予測しているが水需要は増える可能性はゼロに近い。適切な見直しを求める。
●下水道局や交通局も長期的に見るとどうなのか。
Q4・交通局は大江戸線の引き取りによって、利息を含めると1兆円を超える建設費を今後返していかねばならない。1日70万人でも17年かかる計算だ。
 しかも大江戸線の1日の乗客数は今約50万人。実際にはすでに計画からずれている。計画の練り直しも必要だ。
 乗客数の拡大を図るのはもちろん、国の負担を更に求めるなどあらゆる工夫を行い、料金値上げなどで都民に犠牲を押しつけぬようにすべきだ。
●またバス路線がしわ寄せを受けていることも分科会で指摘した。かけがえのない路線の復活・充実も検討すべきだ。
Q5・下水道局でも、2000年度に汐留第2ポンプ所の工事が終了しているが、このポンプ所の整備目的と全体の整備費用はいくらか。これらの投資を下水道料金でどんどん回収していけるのか。
A5.都心水害防止のため、雨水の受入を可能とするための施設。約250億円。長期的に回収する。
●都市型水害をふせぐため、下水道の再構築で都心の雨水をより多く受け入れるよう合流方式の改善を図っているというが、その都心では、汐留め開発をはじめ、環状2号線再開発、六本木地区、銀座や秋葉原などなどほぼ連たんしてビル開発がめじろ押しになっている。地下施設も多くなり、ますます雨水浸透が悪くなり、都市型水害の危険が増す。それを下水道が引き受けていくのではキリがない。
●さらに継続で次々大規模投資が行われている。やはり料金で、都民の負担にばかり押しつけることは無理がある。再開発地域の負担は開発者にもっと求める仕組みも必要だ。
 一般会計と違って公営企業は税金で召還するのと違うが、どれも借金返済の主な財源は都民からの利用料金収入だ。
 不況と失業・リストラの中で都民の暮らしや営業の実態から見て、料金負担を引き上げられる状況ではない。
●以上のように、今後は公営企業といえども、借金による投資の規模と中身については、今後都民が負担可能な範囲でコントロールしていく、長期的かつ適切な計画的財政運営が求められるということを強調しておきたい。

● 臨 海 開 発 問 題 
 次に、本来なら黒字の優良会計であるはずの港湾関係の事業会計が大きな財政破綻を来し、それが更に被害を拡大してきた問題として、臨海開発問題を質問する。 臨海会計が、開発用地の公募による処分を始めてから、初めて2000年度は、処分実績がゼロとなった。、毎年6%地価上昇を初めから見込んだ「新土地利用方式」が破綻し、通常の長期貸付方式に切り替え、それもまた2次公募が進まずついに実績ゼロとなった。そこで埋め立て会計と羽田沖会計からの借金と利息の払いを消滅させる会計統合まで行った。それでも土地の貸し付け実績が上がらなければ、毎年約100億円の赤字が出る。
 そこでさらに売却方式も導入して活路を見いだそうとしている。しかしそれで見通しが立つのか。
Q6.先日の分科会で、開発用地108ヘクタールを平米90万円で売却できれば今後の幹線道路など1兆円の投資額がまかなえるという、非常に大胆な答弁があった。これは都営や公団、公社に半額で貸し付けている土地も、今後の住宅用地も含めているし、今第3セクターに貸している土地まで、売却に切り替えることが前提になっているのではないか。
A6.指摘の通り。
Q7.債務超過の3セクにまで土地を買わせるなど、何もかも十把ひとからげで平均を出すというのは余りに乱暴だ。結局純粋にこれから処分する、業務用の土地の値段は90万円どころではすまない。売却見通しを持っているのか。
A7・より高い値段での処分を考えており、十分採算は取れると考える。
 都心の地価が下がっている時にそんな甘い見通しが立てられる状況ではない。
臨海がいかにハンディーがあるか。汐留めの開発用地の売却実績を見ればわかる。(最高で平米770万円、最低でも230万円のデータを示し)
 地の利が良ければこの値段ですぐに売れるが、臨海は常時公募でも実績ゼロ。
 オフィス用地としてまったく魅力がない。更に安売りになって赤字が残るか、売れたとしても、後は民間任せで、都のコントロールの聞かない開発になってしまうか。いずれにしても、埋め立て会計などの財産をすべてのみ込んだあげくに、東京都には何も残らないことになる。
 気軽に出かけられる都民の憩いの場所として都民に定着しつつあるという現状を踏まえて今後のオフィス開発をあきらめ、幹線道路計画を最小限に抑えて、あらためて都民の参加で都民利益を最優先にした根本的な見直しを求めておく。
都 立 病 院 問 題 

●都立病院を統廃合するという「改革会議」の報告に対して、患者、住民初め、地元自治体、議会から「これではただの地域医療切り捨てだ。いったい何のための統廃合なのか」の声が上がっている。
Q8・この改革会議は昨年度発足したが、当初の諮問理由はなにか。
A8.時代の要請に応えて、都立病院のあり方を見直すこと。(都財政の厳しさを理由とした部分をとばす)
●諮問理由には都財政が厳しいということが書いてある。現に改革会議では、都立病院が不採算でのすぐれた医療をしている話が出ると、必ず「毎年500億円もの赤字をどうするのか」などという発言が出ている。これは病院の建設改良費まで全部入れ込んでおり、必ずしも赤字というべきものじゃないことは衛生局も認めている。
Q9.おととしの財政再建推進プランで、5億円以上の一般財源投入事業をすべて見直し、経常経費は平成15年度までに20%削減するという財政再建路線が今回の報告の土台になっているのではないか。
A9.必ずしも財政問題だけが理由ではない。どんな財政状況でも、医療の見直しは必要。
Q9−2・しかし改革会議の最後のころ、小委員会では、今度の提案で500億円の補助金をいくら減らせるのか、検討されて、都は事務局として、具体的な試算を出しているではないか。
A9−2.試算はしていない。
 現に、統廃合などで79億円、補助内容の見直しもいれて100億円ぐらいの削減ができると具体の議論がされているではないか。
 赤字を過大に描いておいて、財政再建を理由にいちばん切ってはならない分野にメスを入れるのは許せない。
 都民アンケートでは、現状程度の税金投入はやむを得ないという人、もっと援助すべきという人で6割になる。これが都立病院への都民の期待と願いだ。
 以下、今度の統廃合計画の主な問題点にしぼって質問する。
◎第1は、小児医療の切り捨て問題だ。
●小児医療がただでさえ不足している時、八王子、清瀬、梅が丘、など地域で不可欠の役割を果たしてきた歴史があり、何よりも小児医療は、身近な地域に必要なのに、これらを無視して府中に統合しようというもの。その後はどうするのかについても何の展望も示さない。母子保健院も廃止。地元が納得できるわけがない。
●八王子周辺9市町村、清瀬市周辺5市の市長も「断じて承服できない」として、知事に再検討を要請した。
 都も八王子など、小児病院が重要な役割を果たしてきたと認めており、その医療水準を守って、地元が安心できるようにすると言う。
それならば、衛生局長は「報告を尊重してマスタープランを造る」というが、尊重すべきは、何よりも患者と地元の声ではないのか。
Q10.都は小児病院の移転先まで検討していた。これを反古にして、都はこの地域の小児医療にどんな責任を果たすのか。NICUの機能を含めて具体的見通しはあるのか。
A10.地元の方が安心してもらえるよう、これから時間をかけて地元と話し合っていきたい。
●少子化の時代に、なくてはならない小児医療、周産期医療だが、不採算の典型でもある。具体的な展望もないのに、都が手放してどうするのか。まさに行政が責任を持たなければならない分野だ。
Q11・清瀬小児病院は、腎移植の権威として、全国から家族で移り住んで、子供に移植手術を受けさせ、その後も治療を受けながら、病弱児の久留米養護などに通っている子供がたくさんいる。医療だけ移転させてこれらの機能をどうやって維持していくのか。改革会議で検討されたのか。
A11.重症の子どもは府中で治療。地元の受け皿は、まだ時間があるので相談していく。
 府中に医療機能だけ移しても、すでにでき上がっているこれらのネットワークを丸ごと持っていけるわけがない。いま清瀬病院の医者も、久留米養護学校とその寄宿舎に、近くだからこそ毎日診療に来れる。移転すれば、結局、病弱の子供達が、毎日のように清瀬から府中まで車でも1時間かかるところに通院しなければならない。
 都政新報でも「小児医療は地域ごとに必要」と都立病院医師の声が報道された。
 清瀬、八王子、梅が丘の統合、母子保健院の廃止という方向は、関係者の声を尊重し再検討し、子供の命と健康をどうやって守るのかという立場から充実をはかるべきだ。
◎第2に地域医療からの撤退だ。
公社委託が提案されている荏原、大久保病院もあるが、今日は豊島病院について聞く。豊島病院は、老人医療センターと統合した上に、いきなり民営化が提案されている。。
●これも2重3重に乱暴だ。関係者はみんな怒っている。
*医療スタッフは、開設から2年間、苦労して、地域の開業医との連携をつくり、ターミナルケアなど専門医寮水準をつくり、一般患者にも、高い総合診療基盤を提供してきた。それが全部ごわさんになると嘆いている。
*医師会のお医者さんたちは、「入院患者を安心して送れる都立病院がなくなっては困る。しかも民間病院でどんなところが出てくるか心配だ」と危機感を持っている。
*何よりも地域の患者さんたちはかんかんだ。
「もともと地域医療の中心として、1日千人以上の外来が来る最も頼りにされた病院だった。だからこそ建て替えの間、医療空白をしのいで待ち続けた。
 ところがいざオープンとなると、『紹介患者以外は予約も診療もお断り』などと説明されてみんな怒った。実際開設後はしばらく外来患者が激減して、閑古鳥が鳴いていた。最近ようやく病院側も、紹介状があってもなくても受けつけますという対応になった。
 つまり地域の運動と働きかけで、やっと地域に開かれた豊島病院のかつての姿を取り戻しかけてきたやさきに、この民営化の話だ。
 今まで通り、安心できる都立病院として残そうとしてきたこれまでの建て替え以来の地元の我慢と努力はいったいどうなるのか」という話を、切々と訴えられた。
Q12.豊島病院は建てかえたばかり。費用はいくらかかり何年で返済するのか。
A12.約270億円。開設(99年)後41年で返済予定。
Q13.その費用まで引き継ぐ相手はいない。都民の税金をつぎ込んで都立病院としてオープンしたものを民間に丸投げして、都は借金だけ残るということになるではないか。
A13.民営化した場合の運営は、安定したものを関係者とよく協議していく。
 豊島病院の現状は、都立病院が、専門医寮などと同時にやはり誰もが安心してかかれる病院、開業医も安心して患者さんを送れる病院という、地域医療の中核の役割を担っていくことが、地元の要望であり今後の役割なんだということを鮮明に示している。この要望を無視すれば病院経営も成り立たない。
 地元や職員やお医者さんたちの声に応える道は、都立病院としての存続しかあり得ない。

◎老人医療の貴重な財産を失うことになる点も重大だ。
Q14・豊島病院を老人医療センターと一緒にするというのは、いったい、豊島病院をどんな病院にするというのか。重点医療や、地域病院としての役割はどうなるのか。
A14.6割の患者が地元から通院。地域に密着した病院として民間の十なんで効率的な運営の利点生かす。また老人医療センターの実績を合わせ高齢医療にシフトした医療をめざす。
 地域に密着し、高齢患者が多いところこそ、都立の病院が必要だ。
豊島病院にせっかく造ったターミナルケアの病棟をまったく無駄にしてしまうことになる。
 また高齢者の経済負担では、医療費が上がれば、その負担に加えて、とうてい差額ベッドや医療外負担に耐えられない人が多くなる。都立病院は現実に、最後のよりどころになっている。
Q15・昨年度末に「改革会議」の経過報告では、高齢者医療が行政の取り組むべき医療課題としてちゃんと掲げられていたのに、なぜ今回の報告ではそれがはずされたのか。
A15.改革会議の認識が深まり、高齢医療を普及するためには民間が良いという結論に達した。
 まったくのへりくつだ。老人医療は行政の仕事より民間がやるべきだというへりくつだけで老人医療センターと統合するのは持ってのほかだ。
 都立病院と老人医療センターの連携で、高齢者に特有の、医療上の具体的な条件や制限など、さまざまな医療技術の蓄積がある。改革会議も最近までたかく評価してきた。
 また独り暮らしや身寄りのない高齢者など、肉体的・精神的な困難とともに、経済的にも困難を抱えた高齢者の医療やリハビリなど、とうてい民間では成り立ち得ない、専門的かつ不採算の重要な使命を担っている。
 老人医療センターは、700ベッド、外来が月に7千から8千人。高齢者の眼内レンズ手術など、手術回数は月平均600回、年間7800回。
 これだけの実績を上げている医療機関を、350ベッドの豊島病院にどうやって押し込めるのか。土台無理な話で、どちらの病院の機能も大幅にダウンせざるを得ない。
 以上、地域の小児医療の切り捨て、地域医療の中核の役割の放棄、全国的にも貴重な高齢者医療の財産を投げ捨てるような都立病院の統廃合は中止し、あらためて都民の医療を支える立場で充実こそ図るべきだ。


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