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2001.11.09 : 平成12年度_公営企業会計決算特別委員会 本文
総括質疑で公営企業の借金問題、臨海開発、都立病院を質問

◯曽根委員 それでは、総括質疑に入らせていただきます。
 ようやく今、公共事業の見直しということがかなり財源も含めて行われるようになりました。ご存じのように、国と地方を合わせて毎年約百兆円の財政支出がありますが、公共投資はこの十年ぐらいの間、その半分を占めておりまして、社会保障がその公共投資の半分以下にとどまっていると。この枠組みがバブル当時に六百三十兆円の内需拡大の対米公約としてつくられたまま、バブル崩壊後も固定されていると、これが国と都の財源悪化の最大の原因であるということを我が党は追求してまいりました。
 また、このいわば公共事業と社会保障の割合を段階的に逆転させていくことが、国民、都民にとって必要だとも主張してきました。
 それで、公共事業の中で大きい割合を占めているのは、ご存じのとおり道路と都市開発ですが、それとともに上下水道、鉄道がやはり大きな割合を持っています。これら公営企業が担っている公共事業の投資のあり方、今回は公営企業決算の初めての総括質疑ですので、これについて何点か質問したいと思います。
 第一に、東京都の公営企業会計の今抱えている借金の大きさの問題について、二〇〇〇年度末、この決算年度末で約五兆三千七百億円の起債残高がある。公営企業三局の分ですが、これは一般会計の全体の残高が七兆四千億円ですから、その七割に及びます。しかも、この二〇〇〇年度は一般会計の都債発行が前年の八千五百億円から四千七百十八億円に大幅減となったのに対して、公営企業の都債発行は前年並みで四千七百五十四億円。つまり、ついに一般会計の発行額を昨年度、上回ったわけであります。
 これは、私、やはり東京都全体で財政再建、財政再建といい、財政再建推進プランをつくったり、依命通達も出してきた。しかし、公営企業については、この事実上枠外になってきたことが原因になっているんじゃないか。公共事業の見直しというのは時代の大きな流れですが、公営企業が果たしてその流れの中できちんと見直しがされているのかどうか。これは、できれば全体をお聞きしたいんですけれども、きょうはそういう立場の方がおられないので、投資規模の内容を厳しく吟味しているのかどうか、三つの各公営企業局長に質問したいと思います。
 まず、下水道局は、この五兆三千億円の残高の中で既に三兆円近い借金残高を持っております。下水道局長にお伺いしますが、投資の規模と内容についての吟味はされているんでしょうか。


◯鈴木下水道局長 下水道事業は、平成六年度末で区部において普及率一〇〇%をおおむね達成いたしましたが、都民が快適で安全な都市生活を送るためには、管渠やポンプ所など老朽化した施設の再構築や浸水被害軽減の対策、合流式下水道の改善など、引き続き建設投資を行っていくことが必要不可欠でございます。
 これらの事業の実施に当たりましては、その必要性や優先度等を勘案いたしまして一層の重点化を図るとともに、建設コストの縮減など効率化に努め、計画的に行っているところでございます。


◯曽根委員 それと、交通局長にもお伺いしたいんですが、最近、大江戸線開通によって、当初見込みから大きく膨れた一兆円近くのいわば大きな借金を背負うことになりました。その点で、交通局についても下水道局と同じ投資の規模、内容についての検討はどうなっているか。


◯寺内交通局長 交通局におきましては、都の重要施策として決定されました地下鉄の建設や営業線に係る安全輸送のための施設の更新、福祉対策としての設備投資等を行っております。
 これらの投資に当たりましては、経営の安定に資するよう効率化に努めながら、計画的に実施しているところでございます。


◯曽根委員 最後に水道局長にお伺いしますが、水道局に対しては私ども繰り返し、現実に水が使用されている年間の最大の配水量に対して、需給計画の方が二割もオーバーしていると。この計画と実際の乖離が、何回か見直しは行われたものの相変わらず開いているということを指摘して、そのためにいまだに八ッ場ダムを初めとした新たな水源対策に巨額の費用を投じようとしているが、もはやこの需給計画の見直しは必至ではないかというふうにいってきました。この点を含めて、水道局の投資について、あり方についてお伺いします。


◯飯嶋水道局長 水道需給計画につきましては、これまでも都の長期構想の策定等に伴い、そこに示される人口、経済成長等の基礎指標を踏まえまして、適宜適切に見直してきているところでございます。
 昨年十二月に東京構想二〇〇〇が策定されたことから、現在、構想に示された基礎指標と水需要の関係の分析を進めております。これらの分析を踏まえまして、長期的な視点に立って検討し、適切に対応してまいりたいと考えております。


◯曽根委員 東京構想二〇〇〇に合わせてということですが、私、懸念するのは、青島知事時代の生活都市東京構想に比べて、東京構想二〇〇〇は今後の人口予測については上向きというふうに見ています。これを素直に計画化するということは、需給計画が減るよりは大きくなるというふうになる可能性も出てきた。しかし、実態は、経済状況から見ても水の需要は実際の使用量は減り続けているわけで、この点をきちんと見た計画をつくるように特に求めておきます。
 それから、さきにお二方、お答えのあった下水道局と交通局についても、ちょっと具体に聞いておきたいんですが、まず下水道局ですけれども、この決算年度二〇〇〇年度に汐留の第二ポンプ所の工事が終了しています。このポンプ所の整備目的と全体の整備費用は幾らか。それから、これらの投資額を下水道料金でこれから回収していく見通しについてはどうなのか、お聞きします。


◯鈴木下水道局長 まず、事業費でございますが、汐留第二ポンプ所の建設着手から平成十二年度末までの建設費の累計は約二百四十三億円でございます。
 建設目的は、都市化に伴う流域全体の雨水流出量の増大への対応及び合流式下水道の改善を図ることでございます。
 また、建設投資に当たりましては、老朽化した施設の再構築や浸水被害軽減の対策、合流式下水道の改善など、都民が快適で安全な都市生活を送るために真に必要な事業を後年度負担にも十分配慮しながら計画的に行っているところでございます。


◯曽根委員 後年度負担に配慮というお話でしたが、その施設が完成すれば、それはどこかで回収しなきゃなりませんよね、借金でつくっている。これと並行して、ほかにも百七十億円かけた幹線だとか二〇〇〇年度に完成したものが次々とあるわけで、そういったものが後年度負担、一体都民の料金で回収できる、新たに回収していく道があるのかなと。人口が特にふえるわけでもなし、結局料金を引き上げるしかなくなってしまう。やはり一〇〇%、下水道、概成しているわけで、新たに需要がふえてくる、利用者がふえていくわけじゃないという、この現実を踏まえて、今後の投資を考えていく必要があるんです。
 それから、今の汐留のポンプ所ですが、都市型水害を防ぐために下水道の再構築の中で都心の雨水を、浸透性が下がっているということで受け入れていくというお話ですが、この都心地区で汐留開発を初めとして環状二号線の再開発、それから六本木地区、銀座、秋葉原などほぼ連続して、丸の内にかけて、今大規模な再開発がメジロ押しになっているわけです。
 当然、地下施設も多くなりますし、雨水の浸透というのはますます悪くなります。これを都市型水害の危険が増しているからということで、全部この下水道が受けとめていくということになると大変な費用がかかる。私は、こういう点では、やはり再開発の地域の排水の問題での負担を開発者に求めるなど、新しいルールが必要じゃないかということを申し上げておきたい。
 一般会計と違いまして、公営企業は税金で借金を返済するわけじゃありませんが、しかし、最終的には主な返済の財源というのは都民の料金負担なんですね。そこを考える必要がある。
 私、交通局についても一言申し上げておきたいんですが、先ほど効率的なというお話がありました。大江戸線が開通して、たしかこれから十七年かけていわば投資を回収していくと、料金収入で。この計画を立てていると思いますが、実際には当初見込まれた一日八十万人以上の乗客というのがなかなか難しいということで、現在の計画はたしか七十万人、一日乗客七十万人で十七年で回収と、均衡ということだと思います。
 しかし、現実には今大江戸線の一日の乗客数は五十万人ですから、既に計画からの乖離が生まれている。したがって、不断の見直しというのが避けられません。この点でも、やはり乗客の拡大を図ることはもちろんですが、国に新たな負担を求めるなどあらゆる工夫を行い、都民に料金値上げなどで犠牲を押しつけないようにすべきだということも申し上げておきたいと思います。
 また、あわせて私、分科会でやりましたが、バス路線がしわ寄せを受けていることも重大で、かけがえのないバス路線の復活、充実も検討すべきだということを申し上げておきます。
 今後は、公営企業といえども、借金による投資の規模と中身については、今後都民が負担可能な範囲でコントロールしていく。長期的かつ適切な計画、財政運営が求められていることを強調しておきたいと思います。
 次に、本来ならば黒字の優良会計であるはずの港湾関係の事業会計が大きな財政破綻に直面していること。それが、さらに被害を拡大してきた問題として臨海開発問題を質問していきます。
 臨海会計、先ほどもちょっと歴史の紹介がありましたが、開発用地の公募による処分を始めてから、この決算年度は初めて処分実績がゼロとなりました。かつては毎年六%の地価上昇を初めから見込んだ新土地利用方式、これは九二年から三年にかけて破綻し、通常の長期貸付方式に切りかえましたが、それもまた二次公募が進まず、ついに昨年度は実績ゼロです。そこで、埋立会計と羽田沖会計からの借金と利息の払いを消滅させるという会計統合まで行いました。
 しかし、それでも、これから土地の貸付実績が上がらなければ毎年約百億円の赤字が出てきます。そこで、さらに今度は売却方式も導入して活路を見出そうとしています。これが果たして見通しが立つのかという問題です。
 先日の分科会、またきょうの総括質疑の中でも、開発用地、残り百八ヘクタールを一平方メートル当たり九十万円で処分できれば、今後の幹線道路など一兆円の投資額が賄えるという、そういう答弁がありました。お聞きしたいんですが、これは例えば今都営住宅、公団、公社の住宅が建っている五・五ヘクタールの部分、それから第三セクターに貸し付けている用地、これらも底地を売却するということが前提になっているんじゃないかと思うんですが、どうか。
 それから、今後計画されている住宅用地、これは業務用地に比べて半額程度で試算がされているわけですが、これも売却ということで前提になっているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。


◯川崎港湾局長 ご指摘の一平方メートル当たり九十万という数字は、今後の支出額を既貸付地の底地売却を含めたすべての処分可能な土地の面積で割ったものでございます。


◯曽根委員 そうしますと、今土地を借りている債務超過の三セクにまで底地を買わせるということとか、それから公共住宅が現に建っている土地を東京都や公社や公団に土地を買わせるという、ちょっと素人が考えても現実的でない前提を置いてやっているわけ。
 実際には、これから純粋に処分をするというのは約七十ヘクタールぐらいですから、そこの業務用地として売却ということになれば、平均の九十万よりはるかに高い金額で、例えば売却なら売却しなければならない。あくまで九十万円は平均額ですから。
 そういう点で、売却見通しというのは、私たちはこの春の議会で、いってみれば高値売却というのだって難しいんじゃないかということを申し上げましたが、見通しがあるんでしょうか。


◯川崎港湾局長 先ほども申し上げましたとおり、九十万円という数字は今後の支出予定額と現在保有しています資産との均衡点を割り出したものでございます。しかし、現実的にもこの価格を上回る価格で売却することができると私どもは考えております。
 なお、現在、先ほども答弁いたしましたけれども、事業の収支両面にわたる財政基盤強化策を検討しておりまして、今後の支出予定額を縮減することにより、バランスシートの観点から見れば事業の採算性はより高まると考えております。


◯曽根委員 都心の地価が下がっているときに、そういう甘い見通しを立てられる状況ではないと思います。臨海開発地域がいかにハンディがあるか。さっき潜在的魅力があるとおっしゃいましたが、オフィスビルの用地として考えたときにいかにハンディがあるか。それは、ちょっと運河を挟んで、すぐそばにある汐留の開発用地が、高いところでは一平方メートル当たり七百七十万、どんなに安いところでも一平方メートル当たり二百三十万で、それでも買い手がいわばすぐについていると。この臨海地域は現在百十四万が平均ですが、それでも常時公募でもいわば処分の話が去年もない、ことしも見通しが立たないということを見ても、いかにこのオフィスビルとしては見放されているのかという実態は現実に進行していると思う。
 そういう点で、結局さらに安売りになって赤字が残ってしまうか、売れたとしても、後は結局民間任せになるわけですから、都のコントロールの効かない開発になってしまうか。いずれにしても埋立会計などの財産をすべてのみ込んだあげくに、東京都には何も残らないことになります。
 現状は、気軽に出かけられる都民の憩いの場所として都民に定着しつつあるという現状があるわけで、この現状を踏まえて、やはり素直に今後のオフィス開発はもうあきらめて、幹線道路計画を最小限に縮小し、改めて都民の参加で都民利益を最優先にした根本的な見直しをすべきだということを求めておきたい。
 さて、次に都立病院の病院事業会計について申し上げたいと思います。
 都立病院を統廃合するという改革会議の報告が最近出されました。患者、住民初め、地元の自治体、議会からも、これではただの地域医療の切り捨てではないか、一体何のための統廃合なのかという声が挙がっております。
 きょうは決算ですので、この改革会議が発足した昨年度に戻って議論を始めたいんですけれども、この改革会議は知事の諮問によってつくられたものです。この諮問のときの諮問の内容というのが、三つの内容を諮問していっていると思うんですね。都立病院が担うべき医療機能、再編整備の考え方、基本的な財政ルールについてあり方を問うということですが、その諮問の理由としてどういうことがいわれているでしょうか。


◯今村衛生局長 都立病院を取り巻く環境は、本格的な少子高齢化の到来や都民ニーズの多様化など環境の変化、都立病院の運営を支えてきた都財政の深刻な財政不足等、その変化の度合いが大きく増しておると考えております。こうした状況を受けて、幅広い視点から検討していただくため、学識経験者、都民代表、区市町村代表、医療関係者などの方々から構成される都立病院改革会議を設置しまして、今先生おっしゃった三点について諮問があったものでございます。


◯曽根委員 衛生局長は、既に出されている昨年の諮問文の中で、その中の二行だけ飛ばして読まれました。その二行というのが、都立病院の運営を支えてきた都財政は深刻な財源不足から早急な財政構造改革が求められている。その上で、こうした状況を受けて医療機能の役割を見直しと、こうなっています。
 私、本音が見えるといいますか、諮問の段階から、結局都側の諮問の理由の一番大きな動機といいますか、深刻な都財政、それに基づいて病院への一般会計からの財源も含めて見直さなきゃならぬのだ、これが最大の理由になっていたんじゃないですか。


◯今村衛生局長 この改革会議は、単に財政状況を改善するために設置したものではございませんで、その報告にもございますとおり、都民に対する医療サービスの向上を図るために都立病院はいかにあるべきか、また改革に向けて今後どのような取り組みを進めていくべきかを検討していただいたものであると考えております。
 いずれにせよ、都立病院の改革は、財政状況のいかんにかかわらず、不断に取り組むべき課題であると我々は認識しております。


◯曽根委員 そうはおっしゃいますが、わざわざ諮問の理由に財政が深刻なんだからというふうに書いてあるのに抜かすというところが、私、やはり腹のうちが見えているなと思うんですよ。しかも現に改革会議の中でも、その知事の諮問の意向を受けたんでしょう。いろいろ各病院の院長先生がうちの病院の特徴はこうであると。先ほどお話もあったように、不採算だけれども、これだけ貴重な医療活動をやっているんだというお話をされて、会議全体がああなるほどなとなると、例えばこれ、昨年の第三回の会議なんですが、今の院長先生のお話はそれとしてはいいけれども、しかし、この会議そのものが年間五百億円に上る都立病院の赤字をどうやって解消していくのかという側面が非常に重要なテーマにもなっているんだと。それをどうやって解消していこうかという面がきょうのレポートの中では非常に希薄であると、こういうふうに委員が発言すると。で、また財政問題にがーっと話が引き戻されるという議論が現にやられているわけなんです。
 この五百億円という赤字というふうに決めつけていますが、これは都立病院の建てかえや改修の、その建設費用まで含める、つまり病院の運営の中で出た赤字じゃないお金まで全部入れて出されている金額であって、必ずしも赤字というべきものじゃないということは、先日、委員会でも衛生局が認めています。
 私は、おととしの財政再建推進プランで五億円以上の一般財源投入事業をすべて見直すと、経常経費は平成十五年度までに二〇%削減すると、こういう財政再建推進路線というものが今回のこの土台になっているんだというふうにいわざるを得ないと思うんですね。
 それで、今財政がどうあれ改革をやらなきゃならないというお話でしたが、実際にはこの報告をつくる際に、この五百億円の投入額を幾ら減らせるんだという試算を東京都はやっているんじゃないですか。そういう事実があると思いますが、いかがでしょう。


◯今村衛生局長 先ほども答弁いたしましたとおり、いずれにせよ病院改革は財政状況のいかんにかかわらず、不断に取り組むべき課題であると我々は認識しておりますわけで、改革によって財政状況が改善されるということは副次的な効果であると認識しております。


◯曽根委員 どういう認識であったかはともかくとして、最終段階でこの五百億円をどれぐらい減らせるんだという試算をやったわけでしょう。どうですか。額も教えてください。


◯今村衛生局長 ただいまマスタープランを策定している最中でございますけれども、さまざまな前提条件があるわけでございまして、そういう試算は行ってはおりません。
   〔「やってないの」と呼ぶ者あり〕


◯曽根委員 今向こうで、やってないのという話が出た。五百億円、赤字がある、赤字があるといって、最後に何も計算してませんと。そんなばかなこと、あるわけないじゃないですか。現に小委員会では検討したという記録も出されているんじゃないですか。私が入手した資料では、要するに統廃合によって七十九億円ぐらい浮くと。さらに、補助の額の方の中身も見直せば二十数億円浮くから全体で百億円、つまり五百億円の百億円というとちょうど二割でしょう。まさに財政再建推進プランにこたえる内容が、計算して事務局から出されたと。これは、小委員会の報告なんですから、これはそのうち公開されると思いますが、はっきりいってそういうものが出ていると思うんですよ。
 それで、いわば病院経営を本当にどうしようかという立場から見れば、そういう計算だってやるかもしれませんよ。しかし、現にそういう計算をして、赤字でないものまで入れて過大にこの赤字を見せて、そして二割だということで削減をして切り落としていくと。そのためには統廃合も辞さないという路線が昨年からずっと改革会議の中で出されてきたということが私、大問題だと思う。
 それで、都民アンケートでは、やはり現状程度の税金投入はやむを得ないと、もしくはもっと積極的に支援すべきだという人が、これは改革会議の取り組みの中でやったアンケートでも六割近くになっているわけです。私は、ここに都民の都立病院に対する期待と願いがある。
 私は、この統廃合計画がもう出ているわけなんですが、三つの点に絞って簡潔に聞きたいんですけども、一つは小児医療の切り捨て問題です。小児医療というのはただでさえ不足しています。しかも、今回八王子、清瀬、梅ヶ丘など、地域で不可欠な役割を果たしてきた歴史もあり、何よりも小児医療が身近な地域に必要な、にもかかわらず、これを無視して府中に統合しようと。それから、母子保健院も廃止する、そういう計画が出されました。その後どうするのかは、何も示していません。地元が納得できるわけがないわけです。
 八王子周辺の九市町村、清瀬市周辺の五市町、断じて承服できないとして知事に再検討を要請しています。私は、特に八王子は、八王子小児病院の移転の候補地も決まって、これから検討というところに来ていたと思うんですね。ですから、もう市議会、市長、地元挙げて、これはその財政を理由に一番切ってはならないものになぜ手をつけるんだという声が今挙がっているわけですよね。私、はっきりいって東京都に、じゃ、見通しがあるのかと、この後、八王子の市民に対する小児医療の見通し、NICUなども含めて。この点、具体的にありましたら教えていただきたい。


◯今村衛生局長 都立病院改革会議の報告では、小児医療の現状を踏まえて、都民に対する総体としての医療サービスの向上という観点から八王子小児病院など三つの小児専門病院を統合し、おっしゃるようにNICUの整備を初め、小児医療に関する総合的で高度専門的な医療を提供する小児医療の拠点として小児総合医療センターを整備するべきとされたわけでございます。
 なお、八王子小児病院がこれまで実態として担ってきた地域医療については、移転までに相応の時間があることから、地元自治体である八王子市や地域の医療機関との役割分担を踏まえながら、密接な医療連携の中で地域住民が安心できる医療提供体制を確保してまいりたいと考えております。


◯曽根委員 私、市議会だよりをもらったんですが、一面トップが、八王子小児病院の存続、拡充を求める。議会の便りですよ。救急車が出る八王子病院の写真まで大きく出ています。これだけの声が地元から上がっている。具体的な後の展望も出てないじゃないかという声が、病院の中のお医者さんからも出ている。「都政新報」には、いわば対象となっている都立病院のお医者さんを集めての対談の記事も載りまして、この中でも、参加しているお医者さんの大半の方が、移転、統合した後、あいた穴を地域自治体がちゃんとかわりに埋めてくれなければこの改革は住民にとってただの後退でしかない、そこまでのプランがまだ何も示されていないとか、一定の人口単位にはそれほど遠くない医療機関が小児の場合はどうしても必要だとか、病気を持つ子どもの親は経済的には厳しい、タクシー代だって負担になる、行政的医療の側面からどうしても小児を外せない、東京都と八王子市の協議が何もないじゃないか、経営的に非効率であっても地域にとっては大事な医療だ、重点医療だから統合するというのは考え方が単純過ぎる、民間でも公立でも小児救急が破綻している、そういう例が少なくない、清瀬にしろ八王子にしろ、小児科の患者はどんどんふえてきているんだと、みんな口をそろえて、これはやっぱりやり過ぎだと。お金が苦しいからといって、こういうところにしわ寄せしていいのかというのが、これはもう内外の声なんです。
 それに、いわば先ほどのお答えでいえば、具体的に何の、後で何か引き受ける人が具体的にいるのか、医療法人があるのかというお答えもないわけで、これではやっぱり納得できませんよ。私──私じゃなくても、少子化の時代、なくてはならない小児医療です。また、周産期医療なんですが、不採算の典型だと思うんですね。具体的な展望もないのに都はどうして手放すのか、この地域で。私は、行政が責任を持たなければならない一番の分野だと思うんです。
 八王子ももちろんなんですが、私、文教委員におりまして、清瀬小児病院に行ったんですね。清瀬小児病院はまたもう一つ重要な意味を持っていて、あの周りに養護学校があるわけですよ。久留米養護、これは病弱児の養護です。それから清瀬養護、知的障害者の養護です。清瀬病院に入院した子どもたち、そこで腎臓移植を受けた子どもたちが、病院を退院した後も、腎臓の病気というのはずっとケアが必要ですから、その近くに住んで、それで久留米養護や清瀬養護に通っているわけです。
 久留米養護は病弱児養護ですから、寄宿舎があって、そこには清瀬小児病院から先生が来て、毎日でも子供たちを診れる診察室もあるわけです。私がお会いした方は、わざわざ家族ぐるみで三重県から清瀬に移住してきて、子どもの腎臓移植を受けて、久留米養護に入学した。寄宿舎には毎日先生に来てもらって診てもらっている。腹膜透析という非常に難しい医療技術を伴うもので、だから、清瀬小児病院だけを府中に持っていて、後どうするのか、このネットワークをどうやって維持できるのか、私、到底考えられないと思うんですが、いかがでしょう。


◯今村衛生局長 先ほどから先生のご指摘になっている点は、あくまでも学識経験者が集まってつくった報告書の内容でございまして、今、我々は、年内を目途に行政計画であるマスタープランをつくり、それに基づいた実施計画をつくろうということで、いろいろな地元の方のご意見もお聞きしておるところでございます。
 また、ご指摘の清瀬小児病院が移転することになった場合は、現に清瀬小児病院にかかっている患者さんについて、新たな小児総合医療センターにおいて引き続き対応することができることはもちろんでございますが、これも移転に相当の期間がございますので、個別に地域の中で対応可能な医療機関の確保に努め、密接な医療連携の中で対応するなど、患者への適切な医療の提供に向けて万全を期していくつもりでございまして、この点についても今後住民の方々に周知して、安心をしていただく予定でございます。


◯曽根委員 時間がありませんので。
 清瀬から府中まで車で一時間ですよ。毎日毎日、場合によっては通わなければならないということを子どもに押しつけていいのかと、さっき、病院のお医者さんもそういっているんですけれどもね。ですから、清瀬、八王子、梅ヶ丘、そして母子保健院の廃止、この方向については、関係者の声を尊重して、今まだ学識経験者の報告だというお話だったので、子どもの命と健康をどうやって守るのかという立場から充実を図るべきだということを申し上げておきたいと思います。
 あと時間も余りないんですが、豊島病院の問題、これは地域医療から撤退の問題としてちょっと触れておきたいと思うんです。
 公社委託が提案されている荏原、大久保病院もありますけれども、豊島病院については、老人医療センターと統合した上に、いきなり民営化というのが提案されています。これは非常に乱暴な話で、医療スタッフは、開設からまだ二年、苦労して地域の開業医と連携をつくり、ターミナルケアなど専門医療水準をつくり、一般患者にも高い総合診療基盤を提供してきた。そういうものが全部壊されてしまうと嘆いています。地域の医師会のお医者さんたちは、入院患者を安心して送れる都立病院がなくなっては困る、しかも民間病院でどんなところが出てくるか心配だと、危機感を持っています。何よりも地域の患者さんたちは、かつては一日千人以上という外来の患者が来た、地域では欠かすことのできない、頼れる都立病院だった。それが建てかえの後に突然、紹介患者しか診ませんよということで、紹介状を持たない人は全部排除された。それでみんな、かんかんになって怒ったんだけれども、実際は、そうすると外来患者が極端に減って病院経営が危機的になって、最近はやっと紹介状なしでも診ますよというふうに対応が変わったというんです。だから、これからだと。都立病院としてもとの頼れる、開かれた病院になるのはこれからだ、そのやさきに民営化とは何事だという声であります。
 私は、豊島病院は建てかえたばかりで、都民の税金で建てているわけですよね。幾らかかって、何年で返すのか、そして、この借金まで引き受ける民間法人があるのか、お聞きしたい。


◯今村衛生局長 豊島病院の建設費総額は約二百七十六億円ということは、ご承知のことでございます。このうち工事費は約二百六十七億円で、そのほとんどが企業債によって賄われております。企業債の元利償還は、平成四十一年度で終了する予定となっております。
 なお、豊島病院については、この改革会議報告において、老人医療センターと統合の上、高齢者医療センター併設地域病院とするべきであるとの提言を受けております。地域の医療を放棄するというわけではございません。


◯曽根委員 お答えはなかったんですが、もう時間がないので。
 江東区の新しい老人総合病院ができますよね。これは公設民営です。東京都が建てて、民間に公募して、最近相手が決まりましたね。豊島病院を、借金、建設費も含めて引き受ける民間医療法人なんかあり得ません。江東区は、東京都が建てたものを、運営を委託しているんですから。したがって、都立病院として都民の税金で二百七十億かけてつくって、それでそっくり民間にただで払い下げる、こんなもったいない話はないじゃないですか。都立病院としてターミナルケアを初めてつくり、そして、今まで外来は千人以上いた頼れる病院に、一時ちょっとごたごたしたけれども、これからなっていこうというときに、これは私、許されないと思うんですよ。
 それともう一つは、老人医療センターです。時間がないので、一点だけお聞きしますけれども、高齢者医療も含めて地域にあれする、民間でやっていくんだといいましたが、ことし二月、昨年度末の改革会議の報告の中では、たしか高齢者医療は行政の新しい課題なんだというふうに書かれていたと思うんですね。これがいつから民間の課題になったんでしょうか。


◯今村衛生局長 先生がおっしゃられた二月の経過報告では、老人医療センターが果たしてきた役割を踏まえながら、高齢者医療が今後ますます重要になってくるという観点から、行政的な医療として位置づけられてきた経緯がございます。
 しかし、その後、会議での議論が深まるに従い、高齢者医療は、高齢化の急速な進行に備えて、一般の医療機関に速やかに普及、拡大をすることが必要であるとされております。さらに、江東区の新砂に公設民営方式で運営する高齢者専門病院が開設を予定するなど、民間の医療機関による対応が可能な医療となりつつあることから、可能な限り多くの医療機関において積極的に取り組んでいくことが望ましいとされたものであります。


◯曽根委員 一言だけ。
 今のはへ理屈ですよ、本当に。だって、この間まで、老人医療センターはすばらしい、行政としてこれほど模範的な医療はないといっていたのが、突然これは民間の仕事だと、こんなばかな話はないじゃないですか。しかも老人医療センターは七百ベッド、外来が月に七千人から八千人、高齢者の眼内レンズ手術など、中央手術室だけでも月に二百回、簡単な手術だけでも年間七千回以上の手術をしているんですよ。これだけの機能を三百五十ベッドしかない豊島病院にどうやって入れられるのか。物理的にも、それから医療機能的にも絶対に不可能なんです。


◯小林委員長 曽根委員、時間がオーバーしております。速やかに終了してください。


◯曽根委員 以上、地域の小児医療の切り捨ての問題や中核の地域医療としての役割、全国的にも貴重な高齢者医療の財産を投げ捨てようとする都立病院の統廃合は中止して、改めて都民の医療を支える立場で充実することを図るべきだということを申し上げて、終わります。

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