志貴とアインナッシュが死闘を始めたのと同時刻『思考林』の外でも異変が起こっていた。

「老師?これは・・・」

青子が魔術の詠唱を止めて怪訝な表情で見ている。

「・・・」

ゼルレッチも無言で警戒の色を消さない。

今まで怒涛の猛攻を繰り出してきた吸血植物の動きが突如として治まった。

「何が起こったのでしょうか?」

「判らんが・・・アインナッシュ自身としては良くない事が起こっておるのじゃろうな・・・」

どうも嫌な予感がする。

と、そこに聞きなれた関西弁が聞こえてきた。

「おーーい!!ゼルレッチ!!蒼崎はん!無事かいな!!」

「コーバック?お主『永久回廊』の維持はどうしたのじゃ!!」

突如として現れたコーバックにゼルレッチが声を荒げる。

しかし彼の返答は嫌な予感を更に助長するものだった。

「どうしたのこうしたもあらへんがな。アインナッシュが急に動くのをやめたんさかい」

「なんですって!!」

「アインナッシュが動かなくなったと言う事は・・・」

「アインナッシュが睡眠期に突入したと言う事でしょうか?」

「いや、それは早過ぎや。若しくは末端に力を届かせる余裕がなくなったんとちゃうか?」

「つまりは志貴君と闘っている・・・蒼崎何処に行く?」

「決まってます老師。志貴の所に」

「無駄や。アインナッシュが援軍をやすやすと入れると思うか?」

「ですが・・・」

「それ以前に我々を一歩たりとも入れる気が無いと見るな」

ゼルレッチの言葉にアインナッシュを見ると何時の間にか何十本の大木が倒され彼らの行く手を阻んでいる。

おまけに植物達が『永久回廊』に沿って自身の封印まで掛けている。

これでは侵入はいかにこの三人でも極めて困難としか言う他無い。

「くっ・・・」

「蒼崎・・・志貴君を信じるより他あるまい・・・」

「そうや蒼崎はん。志貴が・・・あんの小僧がこんな所で死ぬ訳あらへん」

「・・・そうね。志貴絶対に生きて帰ってきなさいよ・・・」

八『思考林の死闘』

「・・・トッタ」

アインナッシュの繰り出す伏竜が志貴を切り裂き、体勢を崩した志貴は大木から落下する。

しかし・・・

「・・・???」

当の加害者は変わる筈の無い表情であったが首をただ傾げ、志貴を切り裂いた枝を眺める。

「・・・スクナイ・・・」

そう、その爪には血の付着が余りにも少なかった。

それに、成す術無く地面に激突するかと思われた志貴が突如体勢を立て直し綺麗に着地する。

その胸元からは出血しているが、その量はごく微量で傷も掠めたと言う程度。

到底致命傷となるものではない。

おそらくあの標的はぎりぎりで体勢を反らし伏竜の致命傷を避けたのであろう。

そう判断をつけた瞬間大木がゆっくりを傾き最後には轟音を立てて倒れた。

犯人は無論志貴である。

体勢を整えたと同時に『双狼』で斬り込みを入れてから、感髪入れる事無く『六兎』で蹴り倒した。

咄嗟にアインナッシュはその木から飛び降りていたがその地点には見定めていたかのように志貴がいた。

―我流・十星改―

次の瞬間アインナッシュの両腕に狙いを定めた二閃の刺突がアインナッシュの肘に存在する線を貫き、見事に切断される。

「コレハ・・・ヒトヨ・・・マガンヲホユウシテイルナ・・・ソレモサイコウイノモノヲ」

両腕を失いながらもアインナッシュは何事も無い様に立ち上がり、尚且つその切断跡を観察しながらそう言う。

信じられない事であったが、元々痛覚という存在すら無いのであろう。

死徒でも両腕を失えばパニックになるであろうから。

「・・・大人しく実を渡して下さい。そうすれば僕も貴方を殺さずに済みます」

「・・・アマイゾ・・・ヒトヨ・・・コノミハサキモモウシタガワレジシン・・・ソウソウワタセルトオモウカ?・・・ソレニ・・・」

そこまで言うとアインナッシュの両腕に異変が発生した。

突然肩口の部分までが加速度的に腐敗をはじめると、ボトリともげ落ちる。

それから直ぐに肩から芽が吹き出したかと思うと瞬く間に青々とした樹木が育ち、葉が枯れ幹も朽ちていき、腕が再生した。

時間にして僅か三十秒の再生劇であった。

「ワレヲコロセルモノナラコロシテミヨ」

「な・・・」

志貴は絶句した。

二年前彼は科学という現代の魔術によって生み出された怪物と闘った事がある。

その時も自分の繰り出す技を即座に覚え驚異的な再生能力を保有して志貴を苦しめた。

能力はアインナッシュとあの怪物は同じである。

再生の時無防備になるのも似ている。

しかし、ただ一つ決定的に違う点が存在した。

それはこの森がアインナッシュ自身だと言う事。

攻撃を仕掛けようとすると、それを見透かした様に主には近付けさせまいと枝が志貴に襲いかかってくる。

それを見届けたアインナッシュは再生が完全に終わると腕から再度爪を伸ばす。

そして機械的な声で

「ジュッセイ・・・ソウロウ・・・リクト・・・ジュッセイカイ・・・シュウトクカンリョウ・・・サイセイニヨリ2ワリノセイメイリョクショウヒ・・・マッタンノケンゾクヨリホテンスル」

そう告げると攻撃を開始した。

―センサ・ジュッセイ―

鏡に映した様に正確に模倣された十の刺突が志貴を襲う。

咄嗟に合わせるのではなく真横に避けるがそこに二匹の狼が左右から襲い掛かる。

―センサ・ソウロウ―

今度はそれを地に伏せる様にかわし、そこに

―閃走・六兎―

アインナッシュを残像諸共蹴り飛ばす。

その衝撃で右の脇腹、左足の腿部分、左側頭部に大きなひびが生み出されていた。

志貴の足の形で。

しかし、その部分も瞬く間に再生される。

「・・・サラニ2ワリショウモウ・・・ワガケンゾクタチヨ・・・ホカノセイメイタイヨリセイメイリョクヲサクシュセヨ・・・」

気のせいか声になにやら苛立ちが見えた様に聞こえた。

だが志貴にはその事に考えを回す余裕は無かった。

―ガリュウ・ジュッセイカイ―

志貴の眉間、ただ一点に的を絞った極高速・・・いや音速の刺突が迫る。

しかし、

「なめるな!!」

―我流・十星改―

かわせる筈の無い十星改を同じ十星改で弾き返す。

この『我流・十星改』を編み出したのは他ならぬ志貴本人、

本人にしかわからない技の弱点を把握している。

それに自分の技を受けて死ぬなど冗談にもなりはしない。

十星改同士が相殺されよろめくアインナッシュに志貴は強引に体勢を立て直し追撃に入る。

―閃鞘・八穿―

頭上から襲い掛かる一撃を地に伏せる竜が受け止めた。

―センサ・フクリュウ―

互角と思われたがアインナッシュの腕に大きなひびが入る。

その瞬間志貴は着地すると

―閃鞘・八点衝―

八つの斬撃がアインナッシュの腕をへし折る様に切る。

更に全身にも無数の切込みが入る。

だが志貴は追撃を行う事無く間合いを外した。

やがてアインナッシュの全身が再生を果たすが、その時間は圧倒的に遅くなっていた。

それが原因なのかアインナッシュの声に初めて感情に近いものが現れた。

「ゲセン・・・ナニユエニヒトガワレトココマデノタタカイヲミセラレル・・・ワレノ"ギジンジュ"ト"シコウリン"ヲモチイテナオコノコゾウニオヨバヌトイウカ・・・ミトメヌ・・・ミトメヌ・・・ミトメヌ!!」

怒りの声を撒き散らしながらアインナッシュが志貴に突撃を掛ける。

一方の志貴は冷静にアインナッシュの動きを見極めて迎撃にかかった。







一方外では・・・

「ったく・・・急に忙しくなってきたで。超過労働はわいの趣味にあわんのやがな」

「口を動かしている暇があったら『永久回廊』を強化しろコーバック」

「そうよ。明らかにアインナッシュは外に出たがっている。あんなに暴れだした代物を外に出せれないでしょ」

ゼルレッチ・青子・コーバックの三人は丘の上に場所を変えてアインナッシュへの猛攻を凌いでいた。

アインナッシュの攻撃によって絶対の封印を誇る『永久回廊』の結界に穴が空けられそこから植物の蔦や枝が顔を出す。

しかし、次の瞬間ある蔦は結界に沿うように走る炎の波によって綺麗に洗われる。

ある枝は爆発と共に引き千切られる。

さらにある蔦は再び閉じられる『永久回廊』の結界によって捻じ切られる。

「しかし、ゼルレッチ、奴さん後先考えとらんな」

「同感じゃな。この攻め常軌を逸しておる」

「やはり志貴が・・・」

「それ以外考えられんで・・・だぁーーー!!またどでかい穴ぶち開けよって!!とっとと大人しゅうせんかい!!!」

毒づきながらこじ開けられた結界を力づくで閉じる。

「老師・・・アルカトラスは・・・」

「少々きついかも知れんな。あれほど巨大な『永久回廊』の展開も維持も初めての筈。結界の密度も薄くなりつつある」

『永久回廊』の維持に全精力を傾けるコーバックに不安げな視線を向ける青子と、ゼルレッチ。

なんだかんだといってもアインナッシュの攻撃と侵攻を食い止めているのはコーバックの『永久回廊』による所が大きい。

しかし、その『永久回廊』が消えれれば食い止める術は存在しない。

いや、消す術なら存在した。

ただしそれはヨーロッパ地区を丸ごと消すのと引き換えにしてだが・・・

「コーバック!お主の『永久回廊』後どれだけもつ!!」

「もって二十分が限度や!!」

「と言う事だ蒼崎!!二十分死ぬ気でアインナッシュを食い止めろ!!」

「はい!!」

そんな事を投げ掛けながら『思考林』とゼルレッチ達の死闘は続く・・・

これが間接的に志貴への援護となっているとは知らずに。







森の中心部では志貴とアインナッシュの死闘が続いていた。

―センサ・ナナヤ―

高速の突撃に反応して左右に展開する。

―閃鞘・双狼―

交錯して木の破片が舞い上がる。

実力は完全に五分と五分に思われた。

しかし、それは大きな間違いである。

アインナッシュは確実に押され始めていた。

相手の驚異的な実力に加え、いつまで経っても生命力が補給されない。

何者かが『思考林』の侵攻を阻んでいる。

仕方なく眷属達の力を奪いそれをもって再生に当てているが、その眷属達すら今では自身の維持に精一杯の状態でもう再生できない状態である。

この犯人は無論外で『思考林』の暴走を押しとどめているゼルレッチ達である。

そして何よりも自分が敵と同じ技を繰り出しても自分が押される。

納得がいかなかった。

相手が幾らとてつもない実力と未知の魔眼を有していたとしても、正面からの力比べで負けるという事が信じられなかった。

なんだかんだといっても敵は人間、それも年端も行かぬ子供、それにどうして自分が手こずるのか?

アインナッシュは気付くよしも無いがそれが彼の敗因であった。

確かに彼の固有結界『擬人樹』は能力の模写と言う点では最高位に属する。

しかし、コピーがオリジナルに及ぶ筈も無い。

いや、オリジナルに近付く方法もある。

そのコピーを極めコピーを知り尽くす事。

つまりは能力の『保有者』でなく能力の『会得者』になる事が唯一つの方法。

志貴はそうして幼少の頃から父黄理から暗殺技法を継承し自己流に昇華した。

例え形が瞬時に模倣されるとしてもそれらの苦心、努力までもが一瞬で模倣などされるはずが無かった。

「ガ、ガァァァァァッァァァァァァァァ!!!!!!ミトメヌ!!!ダンジテミトメヌ!!!ヒトゴトキニワレガ、ワレガァァァァァァァ!!!」

声ならぬ咆哮をあげアインナッシュは傷付いた体を突進させて志貴に襲い掛かる。

しかし、一方の志貴は慌てた様子も無く『七つ夜』を逆手に持ち替える。

今までアインナッシュに中途半端な切れ込みを入れてきたのはその体内に存在する『真紅の実』の場所を把握する為。

そして、場所は今特定してた。

人体で言う胸元と腹部の丁度中間点。

胴体のど真ん中に位置していた。

後はそれを取り出すだけ。

志貴は今までに無い速さで事に取り掛かった

―閃鞘・七夜―

一閃が下の辺を作る

―閃鞘・双狼―

上の辺を刻み込む。

―閃鞘・伏竜―

右の辺を切り裂く。

―閃鞘・八穿―

左の辺を生み出し胴体に長方形が刻まれた。

―閃走・六兎―

恐怖で交差させた腕ごと顎を破壊する。

―閃鞘・八点衝―

実を覆う樹脂以外を荒々しく削り落とし、長方形の中に凹型の風穴が生まれる。

―閃鞘・十星―

仕上げに精密に残骸を取り除く。

―閃鞘・一風―

脳天から叩き落して割れ目を作る。

そして距離を置き最後の仕上げに入る。

『七つ夜』を渾身の・・・一滴の無駄ない力で投擲する。

実とアインナッシュ本体を繋ぐ最後の一点に目掛けて。

―極死―

唄う様に舞う様に志貴は宙を飛んだ。

志貴がアインナッシュの頭部を捕らえる数秒前に『七つ夜』は一点に突き刺さり、実をそのままもぎ取り、実ごと真後ろの木に突き刺さる。

そして志貴は頭部を捉えると同時にアインナッシュを浮かせて自身も跳躍する。

そこで体勢を整え、両足を捕まえアインナッシュの脳天から全体重を掛けて地面に激突させる。

―落鳳破―

―九死衝・・・完遂―

轟音と共に全ては終わった。

アインナッシュの頭部は『極死・落鳳破』により完全に打ち砕かれ、おまけに志貴は最期に点を貫いた。

これで生きていける訳が無い。

「・・・ふう・・・」

志貴は大きく息を吐いた。

そこでようやく『直死の魔眼』を封印すると静かに『七つ夜』を引き抜き、落下してきた実を手に持つ。

「これで・・・お姉ちゃんを助けられる」

そう言った時

「・・・ソ、ソウカ・・・ソウ・・・イウ・・・コト・・・カ・・・」

「!!!」

志貴が振り返る。

それと同時に森のあちこちから倒木の音が聞こえてきた。

「・・・ク・・・ククク・・・ヒ・・・トヨ・・・ヨモヤ・・・キサマガ『チョクシノマガン』ヲ・・・ホユウシテイルトハオモワナカッタゾ・・・ダ、ダガ・・・キサマ・・・モ・・・タスカラン・・・『シコウリン』ハ・・・ホウカイスル。コノ・・・チ・・・デク・・・チハ・・・テル・・・ガ・・・」

その言葉と同時に木人は木っ端微塵に砕け散った。

それが死徒二十七祖第七位『腑海林アインナッシュ』の最期であった。

それが引き金であったのか、森は急速にその形を失いつつあった。

至る所で大木は倒壊を始めそれは森というよりも一つの宮殿の最期を思わせた。

まさしく植物の死徒の頂点に君臨していた王の動く城。

それが瞬く間に崩れ去ろうとしている。

志貴は既に自分の足でもここの脱出は不可能だと言う事は悟っていた。

しかし、今の自分には心強い仲間がいる。

だから大丈夫。

彼らがいる限り、彼らが僕を見捨てない限り僕も決して諦めない。

そう決意を新たに志貴は『七つ夜』で印を組む。

そして、第二の聖獣をこの地に呼び出した。

―極鞘・白虎―







一方外では・・・

「はぁ・・・長生きしてみるもんやなぁ・・・まさか『思考林』の崩壊に立ち会えるとは思わへんかったわ」

立ち木の倒れる音を聞きながらコーバックがしみじみと呟く。

既に『永久回廊』は解かれている。

最早維持し続ける意味が無くなったからだ。

「老師・・・志貴の気配は・・・」

「まだ無い」

青子の声に厳粛な声で返すゼルレッチ。

だがコーバックが何かを見つけた。

「おい、ゼルレッチあれはなんや?」

「??何がだ?」

「あれや!!『思考林』を何かがとんでもないスピードで横断しとるで!!」

その声に青子・ゼルレッチも魔力で強化した眼がようやく何かが『思考林』を脱出しようといているのを捉えた。

余りにも速過ぎる為白い何かとしかわからないが。

「なに?あれ・・・人間の出すスピードじゃあないわよ・・・」

「もしや・・・聖獣・・・」

その言葉と同時にその白い物体が森から飛び出し青子達三人のいる丘に着地した。

それと同時に『思考林』は完全には崩壊した。

しかし、ゼルレッチ達はもうそれを見ていなかった。

彼らが見ていたのは自分達の目の前に現れたそれである。

それは純白の虎であった。

(主よ・・・着きました)

その言葉と同時に虎の体内から薄い光の膜で覆われた志貴が出て来た。

「うん・・・ありがとう、白虎」

志貴の声にその虎は頭を垂れた。

(いいえ、これが我らの使命。主のお力となれば幸いと言うもの)

「うん、助かったよ。それと玄武にも『この前はお疲れ様、ありがとう』って伝えておいてよ」

(はっ、では私はこれにて)

そう言葉を残し純白の虎はその姿を消した。

「ふう・・・」

そこで志貴は大きく息を吐き、そして気を失った。

当然と言えば当然であろう。

数時間に及ぶ『思考林』の突破。

その後のアインナッシュとの死闘、九死衝の敢行。

最後には『極鞘・白虎』をも使用した。

ここまで使用してまだ幼い志貴の体に耐えられる筈が無かった。

そのまま倒れる志貴を青子が抱きとめる。

「志貴・・・大丈夫ね気を失っただけね」

志貴の体中傷だらけであったが、どれも重傷ではない。

そんなぼろぼろの中でも志貴の手には『真紅の実』がしっかりと握られていた。

「・・・まったくたいした小僧やなゼルレッチ」

「ああ・・・」

コーバックとゼルレッチは心の底からの賞賛を志貴に送っていた。

「さあ・・・蒼崎はん、戻るとしましょか」

「そうじゃな・・・姫に実を渡さねばならん、志貴君の手当てもせねばならん」

「はい、老師、戻りましょう」

その言葉と共に四人を風が包み込み、この場から消え去った。







志貴達がいなくなった丘に二人の人影が現れた。

「・・・まさかとは思ったが・・・」

一人が崩壊した『思考林』を一瞥して思わず唸る。

「あの小僧人間じゃねえ。人間が二十七祖、それも上位の祖を殺せるなんて・・・」

もう一人がこの場にいない黒髪の少年に毒づく。

「ともかく機関長に報告を入れるぞ」

「ああ、判っている。いよいよもってあの小僧を放置出来ねえからな」

「そうなると小僧では説明不足だな。名を考えなければな」

「そんなものはナルバレックの奴が決めるだろうよ」

「そうだな・・・」

その言葉と共に二人の男は姿を消した。

”死徒二十七祖番外位『アカシャの蛇』ミハイル・ロア・バンダムヨォン、そして第七位『思考林』アインナッシュが魔法使い『ミス・ブルー』に弟子入りした少年に抹殺された。”

その未確認情報が埋葬機関経由で魔術教会に流れるのはそれから数日後であった。

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