凛と桜がアイリスフィールの護衛を離れて別行動を取る。

それは二人の独断行動ではなかった。

武家屋敷での作戦会議の折に

「それで・・・士郎、身勝手なのは判っているけど、あんた達と合流出来た後でも良いから別行動を取らせて欲しいの・・・私と桜を」

凛が士郎にそう切り出していた。

「別行動?・・・雁夜さんの事か?」

「ええ、そう・・・おじさんの事もそうだけど・・・母さんの事も・・・ね」

「はい、もしも・・・雁夜おじさんがお母さんの失踪に関わっているのだとしたら・・・」

桜の表情は蒼褪め言葉に力は無い。

とても信じられない、信じたくないと言うのが本音なのだろう。

見れば凛も似たような表情をしている。

しかし、その決意に陰りは無い。

「・・・」

本来であれば別行動を許可したい所であるが、二人にはアイリスフィールの護衛という重要な役割もある。

それを放棄させても良いものなのかと思案に暮れかけたのだが、意外な人物が助け舟を出した。

それは・・・

「・・・そうだな。うん、別に構わない」

切嗣だった。

「・・・爺さん、良いのか?」

そう口にする士郎の声に詰問の色は無く、純粋な疑問だけだった。

「ああ、戦略的な観点から見れば有益だし、戦力面から見ても問題ないと判断した結果だよ」

そう返答した切嗣の狙いを士郎も察した。

戦略的な観点から言えばアーチャー、若しくはセイバーのマスターである雁夜(おそらく後者だと推察できるが)を確保ないし排除することの有益さは良く理解している。

三途の川に身体半分所か、大半を沈めている雁夜に満足な指揮を取れるとは思えないが魔力の供給源を絶つ事とマスターが敵の手中に落ちたことによる精神的な動揺は決して小さくは無い。

そして戦力面から見るとライダー・エクスキューター陣営の戦力は士郎、ライダー、切嗣、舞耶、アルトリア、凛、桜、アイリスフィール、ウェイバー。

対してセイバー・アーチャー陣営はセイバー、アーチャー、綺礼そして雁夜。

総力戦で数えても九対四の二.二五倍。

戦力の低いアイリスフィール、ウェイバー、雁夜を差し引いてしまえば七対三のおよそ二.三倍の差がついている。

士郎、ライダー、切嗣でセイバー、アーチャー、綺礼を押さえ込んでしまえば舞耶達四人は遊兵となる。

アイリスフィール、ウェイバーの護衛は必要不可欠だとしても二人いれば十分対応出来る。

であれば残り二人を遊ばせておくよりは別働隊として動いてもらっても差し支えない。

と言うよりはそちらの方が有益だろう。

「だけど・・・問題は間桐雁夜が何処にいるかだ?心当たりがあるのかい?」

「いいえ、でも綺礼の性格とおじさんの容態を考えても、綺礼の奴、雁夜おじさんを多分だけど自分の手元に置いておくと思うわ」

切嗣の問いにも凛の答えは淀みない。

その答えに切嗣も納得したように頷く。

今の雁夜が瀕死である事を考えれば、容態が急変した時自分の近くにいれば、その対応も取れるだろう。

今だけは死んでもらっては困るだろうから。

「判った。じゃあ間桐雁夜に関しては君達に一任する。それで良いかい?」

「「はい、ありがとうございます。お義父様(義父さん)」」

そして士郎、ライダーがそれぞれアーチャー、セイバーを押さえ込んだと見るや、桜と共に別行動を開始、雁夜を見つけ出さんと市民会館に潜入を果たし・・・予想よりも遥かに速く雁夜を見つけ出す事に成功したのだが・・・二人とも変わり果てた雁夜に言葉を失っていた。

それなりに手入れされていた黒髪は白髪に変わり、その両手は老人のような皺くちゃなもの。

何よりも死体のような左半分の貌。

これだけ見れば嫌でも判る、雁夜が生半可な決意と覚悟を持ってこの戦いに身を投じた訳ではない事を。

だからこそ信じたくない。

そんな雁夜が母の悲劇に関与している事など。

だが、言葉を失っていたのは雁夜も同様だった。

突然現れた二人の女性、二人共に幼き凛と桜の面影がある。

平行世界の当人なのだから面影があるのが当然の事であるのだが、そんな事など知る由もない。

そんな雁夜の耳にその声が届いてきたのは、混乱の極みにあるこの瞬間だった。

それは僅かな懐かしさと圧倒的な悲しみに満ちた声で雁夜に問いかけていた。

「おじさん・・・」

「雁夜おじさん・・・」

「「どうしてなの?」」









地下倉庫・・・

大きく息を吐き出しながら綺礼は崩れるように倒れ付す切嗣を見届けていた。

鍛錬と研鑽を重ね磨き上げていった自身の肉体と技量に加えて令呪による爆発的な身体強化のブースターによって繰り出された一撃は打撃と言うよりは砲撃の類に近く、胸部に食らった切嗣は為す術もなく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてしまった。

綺礼も切嗣も知る由もないが先刻の起源弾による肉体破壊から綺礼が逃れられたのは、一重にその綺礼の戦闘スタイルによるものだった。

黒鍵を暴走状態にまで肥大化させていたのは令呪のバックアップによるものであり、起源弾が黒鍵に着弾した時には魔力源の令呪は消滅し起源弾に込められた切嗣の起源は無効化されてしまった。

以前、魔術回路を電気基盤、起源弾を水滴と例えたが、今回の場合、水滴を落とされた電子回路には電気が通っていなかったのである。

結果論に過ぎないが切嗣は最初のコンテンダーの銃撃時で起源弾を用いるべきであった。

『最小限の労力で最大限の成果を』そんなモットーがこの現状を生んだとすれば皮肉と言う他ない。

うつぶせに倒れ微動だにしない切嗣に綺礼は警戒を怠らないが同時に勝負はついている事を本能で理解していた。

胸部の一撃は切嗣の肋骨諸共、胸郭を破壊し、心臓と肺をも挽肉に変えた。

それだけに留まらず壁に激突した際の衝撃で背骨も粉砕された。

間違いなく即死、奇跡的に息が合ったとしても数秒、若しくは十数秒程度で絶命する。

勝負はあった。

あったのだが、綺礼の眼には名状しがたき感情が揺らいでいた。

臨んでいた決着であるにも拘らず、綺礼の胸中には達成感とは程遠い寂寥が漂う。

それでも勝負は決した以上は次に己の成すべき事をなさんと、頭を一つ振って切嗣の亡骸に背を向けたその瞬間、

何かが動く気配を確かに感じ取った。

馬鹿なと、ありえないと綺礼はその思考を停止させた。

背後にあるにいるのは程なく死ぬか既に死んだ肉体だけ。

死後痙攣による身じろぎかとも思われたが、その気配は明らかな意思を持って動いている。

その事への驚愕が綺礼の反応を遅らせた。

警戒しようと振り返ったのと、左側頭部に鈍い衝撃と激痛が走ったのは同時だった。

驚愕に綺礼の眼が大きく見開かれた。

そこにはうつ伏せ状態の切嗣が機関銃を手に発砲している。

思考は停止したが肉体は最善の行動を選択済みだった。

再び僧衣で防御体勢を取りこれ以上の銃弾は一発も通さない。

(仕留め損ねたか)

うつぶせの状態からキャレコをフルオートで撃ちまくる切嗣は内心で舌打ちをする。

本来であれば、命中率の高い胴体を狙う事が実戦におけるセオリーなのだが、綺礼が身に纏う僧衣の防弾性能は言うまでもない。

であれば狙うのはむき出しの頭部しか残されていない。

それに加えてうつぶせで狙いを付けにくい体勢と死んでいる事を偽装する為に禄に動けない状況、この三つのハンデが必殺の奇襲を損なった。

だが、何故綺礼の一撃を受けて尚、切嗣は健在なのか?

綺礼との決着に際して、切嗣は無策で挑む筈は無く、ある秘策を用意していた。

(しかし見事なものだ。まさかほぼ即死の状態からすらも治癒されるとは・・・『全て遠き理想郷(アヴァロン)』の効果は絶大だな)

そう切嗣は自らの体内に『全て遠き理想郷(アヴァロン)』を埋め込んでいた。

無論だがアルトリアの持つ本物ではなく、士郎の投影で創り上げられた贋作『全て遠き理想郷(アヴァロン)』を。

贋作であるので一度使用してしまえば消滅してしまう代物だが、その効果たるや弱点を補って余りある。

それを、切嗣が致死状態になった時には自動的に、それ以外は切嗣の任意で発動するように士郎が調整した。

ただし、切嗣の体内に埋め込まれた贋作『全て遠き理想郷(アヴァロン)』は頭部、胴体、両腕、両脚の六。

残り五回しか治癒は行われないが、目の前の人間の姿をした暴威と戦うに強力な武器だ。

「・・・・・・(固有時制御、二倍速)!」

弾丸が尽きる寸前に固有時制御を発動させた切嗣はうつぶせの状態から予備動作なしで飛び起きるとや、コンテンダーから排莢、弾切れとなったキャレコを躊躇いなく放り投げる事を同時にやってのけ、無駄な動き無くスプリング・フィールド弾を再装填、綺礼に構える。

しかし、綺礼もキャレコの弾が尽きたと理解するや今度こそ切嗣を地獄に叩き落すべく獣の如く疾駆する。

だが、皮肉にも吹き飛ばされた事で距離が開きすぎ綺礼でも一足で懐に潜り込む事は不可能、引き金は引かれ、拳銃の形をした大砲が撃ち放たれる。

回避も間に合わない、そう判断した綺礼が取った決断に切嗣は己が眼を疑った。

躊躇う事無く自身の右腕を手刀のように横に振るい、スプリング・フィールド弾は当然のように綺麗の右手の肉を抉り、鮮血が迸る。

咄嗟の抵抗なのだろうが、所詮は無駄な足掻き、このまま弾丸は綺麗の手を貫通、今度は綺礼自身を貫くものと思われた。

だが、何時までも銃弾は綺麗の手を貫通しない。

否、あろう事か綺麗の腕は抵抗する。

それ所か徐々に綺礼の腕に押されている。

想定していない事に思考が停止した切嗣が、ようやく更なる追撃をしようとコンテンダーから排莢しようとした時、切嗣は物理法則が敗北する瞬間を目の当たりにした。

綺麗の右腕と僧衣を引き裂きながら明後日の方角に飛び去っていく。

愕然とした面持ちで綺礼を見る事しか出来ない切嗣の脳裏には『怪物』その一文字しかなかった。

そこに追い討ちをかけるように固有時制御の反動による負荷による激痛が切嗣を襲い思わずよろめく。

短時間で連続使用したつけがこの最悪のタイミングで起こってしまった。

棒立ち状態の切嗣をしとめるのに、絶好の機会である事に疑いの余地は無いが、綺礼も動かなかった・・・否、動けなかった。

一か八か令呪二つを動員して右腕を極限まで強化した上での決死の防御は成功したが、その代償は大きい。

無理矢理の強化による過剰な負荷に加えてスプリング・フィールド弾を弾き飛ばした結果、右腕は僧衣諸共筋肉、腱は確実に引き裂かれ、下手をすれば骨まで被害が及んでいる。

右腕を捨てる覚悟で放てば一撃は可能だろうが、この戦いではもう使えないと考えた方が良い。

また奇襲で受けた頭部の傷も軽視できない。

頭皮を抉った程度の軽傷だが、そこからの出血が綺礼の左の視界を奪い始めた。

こうして意図せず発生した互いに直ぐには動けぬこの状況を利用して、切嗣と綺礼は再度戦況の把握しようとしていた。









第一平面駐車場・・・

そこは熱風が通り過ぎるや砂塵舞う荒野に変わり、ライダーの周囲に次々と歴戦の兵達が集う。

その様を離れた小高い丘から見下ろすアイリスフィール達は改めて『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』の威容に息を呑む。

そんな中でもウェイバーは身じろぎ一つする事無く、その様子を見届ける。

その眼差しには一点の不安などある訳も無く、ただひたすらに信頼だけが宿る。

一方のセイバーの眼光にも一点の揺らぎも無いが、そこには同じ王としての畏敬は欠片もない。

あるのはやり場の無く、八つ当たりに等しい憤りのみ。

何故このような民を省みぬ男にこれだけの臣下が死してもつき従うのか?

何故自分にはその様な臣下がいないのか?

何故、何故、何故何故何故何故何故何故!!

そんなセイバーの心の叫びを知ってか知らずか、ライダーから鬨の声が発せられる。

「来たか我が永遠の同胞達よ!相手はブリテンの騎士王!相手にとって不足無し!我らが生涯を通して貫いた王道をあの大馬鹿娘に見せてやろうぞ!」

主君の呼びかけに天地を震わせる叫びが返される。

その様子に満足げに頷くとその視線をセイバーに向ける。

「・・・行くぞ」

その声に応ずるようにセイバーの剣が剥き出しとなり、その余波なのだろうか、魔力の波動が一陣の風となる。

それを合図としたように戦場が動いた。

「アーーーーーーーララララララララララララーーーィ!!」

『オオオオオオオオオ!』

そう様子はまさしく大地が動いたかの如き威容。

自身のような地響きを上げてセイバー一人を蹂躙せんと迫るライダーの軍勢。

それを迎え撃たんとするセイバーの剣からは黄金の光が放たれ光は黄金の束となる。

それと同時に上段に構え剣を握るその手には力が込められる。

対軍宝具と対城宝具・・・しかも双方とも最高峰の宝具による激突・・・それは誰も勝敗の予想のつかない未知の激突。

その激突に誰もが眼を離す事無くその一部始終を見届ける。

そして、遂に

「何処までも制覇せよ!『遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)』!」

先頭を切って走るライダーの戦車が紫電を迸らせて今までに無い速度の突撃を敢行する。

そしてセイバーもまた自身の手に握られた勝利の代名詞を高らかに謳い上げる。

「約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

光と光が激突した。









そして第二平面駐車場・・・

切嗣達に先駆けて、既に士郎の手で展開されていた『剣の王国(キングダム・オブ・ブレイド)』内で始まっていた戦闘は激化の一途を辿っている。

「ちぃ!」

アーチャーの『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』から膨大な原典宝具が迫り来るが、士郎は慌てず手に納まる槍を、

「突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)!」

投げ放つ。

同時に数十本の槍が追従して降り注ぎ、更には一本一本が五十の鏃に枝分かれし、原典宝具を文字通り押し潰す。

「何故だ!何故贋作者(フェイカー)風情に我の宝物が押し負けるか!」

アーチャーの憤怒の咆哮には疑問の色が濃く混じっていた。

『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』と『剣の王国(キングダム・オブ・ブレイド)』、似通った二つの宝具だが、決定的な差が一つ存在する。

それは純粋な物量。

アーチャーの『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』には確かに全ての宝具の原典を所有しているが、その規模は一つの世界のみ。

それに対して、『剣の王国(キングダム・オブ・ブレイド)』に存在するのは、あらゆる平行世界より集った剣、その差は語るまでも無い。

一本の原典宝具に対して同性能で数十が迎え撃てば当然後者が勝つ。

遂には・・と言うよりは当然の帰結として何度目かになるであろうアーチャーと士郎の激突に押し負けてアーチャー目掛けて士郎の剣群が殺到する。

「おのれぇええ!」

剣群が霞めてアーチャーに無数のかすり傷を生み出すが、それに臆する事無く、怒りの咆哮を上げながらアーチャーの原典宝具が密度を上げて押し返す。

だが、士郎もそれに倍する数で圧倒する。

傍目から見て、絶対的な力を誇ってきたアーチャーをそれ以上の力を持って圧倒している士郎だったが、その表情に余裕は無い。

それもこの戦いの前アルトリア、そしてライダーから言われた事に理由があった。

アルトリア曰く、『士郎、貴方が油断するとは思えませんが一応警告をさせて下さい、ギルガメッシュは完全に消滅させるまで気を抜かないで下さい。私自身は奴と直接戦ってはいませんので確固たる事は言えませんが、奴の宝具が『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』だけとは思えません。更なる切り札を保有しているかもしれません。何しろあの征服王を容易く打ち破っているのですから』

そしてライダーにその件について問うと、『記録程度ではっきりと覚えているわけではないが、確かに余は英雄王に敗れたな。それも余の『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』を真っ向からぶちのめしてな。エミヤよ。騎士王の危惧は誇張でも虚構なんでもない。あの英雄王、ご自慢宝物庫以上の宝具を確かに保有しておるものと心得よ。まあ、戦闘に関してのお主が慢心する事などある筈が無いがな』

直接アーチャーと戦った事のある二人の言葉は、そうでなくても高かった警戒レベルを最大級にまで高めるのに十分過ぎた。

だからこそ、初っ端から切り札である『剣の王国(キングダム・オブ・ブレイド)』を展開して早期決着を目論んだのだが・・・

アーチャーはしぶとかった。

全体を見れば士郎が圧倒しているが、どうしても最後の一押しが足りない。

無駄に時間だけが浪費していく。

このままでは・・・

そんな、士郎の懸念は最悪な形で的中してしまった。

「・・・そうか・・・贋作者(フェイカー)・・・貴様程度にこれを使わせるのは不本意極まる・・・だが・・・貴様に無様に敗れる位ならば使う事に躊躇いはせぬ!」

何時の間にかアーチャーの手には見慣れぬ一本の剣が握られている。

嫌・・・それ剣と呼ぶには異形を極めていた。

剣としての面影はかろうじて残してるが、それも柄と鍔があるからそう言えるだけ。

突撃槍を連想するような極太の刀身は三つに割れ、しかもそれぞれが独立して回転している。

その様は臼を連想させた。

そんな異様な剣を見た瞬間、士郎の表情が大きく引き攣った。

一目見た瞬間理解したのだ。

あの剣は解析できない・・・と。

『剣の王国(キングダム・オブ・ブレイド)』は全ての平行世界に存在する剣が集うが何事にも例外は存在する。

いくつかあるが、その例外には共通点が一つある。

共通点・・・それは無限の平行世界を見渡しても一本しか存在しないと言う事・・・

そんな例外の品を出してきた・・・それが意味する所は一つしかない。

あの剣こそアーチャーの切り札なのだと言う事だ。

それと同時に士郎も王国で展開出来る中でも最大の威力の剣を握る。

「おおおお!!」

光と闇が螺旋を描き渦となる。

それを合図としたようにアーチャーの剣も三つの臼が回転を速める。

「目覚めろ!エア、お前にとっては不本意の極まりだろうが、これは王の裁き、身の程を弁えぬ愚者に分相応とはなんであるのかを思い知らせてやれ!」

回転と渦は暴発寸前にまで高まり、そして遂に

「いざ仰げ!『天地乖離す、開闢の星(エヌマ・エリシュ)』を!」

「『交錯する絶望と希望別つ運命の裁断(スパイラル・フェイト・ブリンガー)』!」

双方の宝具がぶつかり合った。

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