新都の繁華街に周囲の目を一際眼を引く二人組みの姿があった。

まあ正確には二人組みの内の一人であるが。

見上げるほどの筋肉隆々の巨漢である事もそうだが、この時期にジーンズにTシャツ一枚と言うのは人目を引き過ぎた。

いくらこの日は快晴で例年に比べれば暖かいとは言え、真夏のような服装では寒すぎる。

しかもその隣を歩いているのが日本人一般成人よりも頭四つ分は低い青年であれば尚更それは良く目立った。

「それにしても珍しいではないか坊主。どういった風の吹き回しだ?いつもは世に外に出るなと言っておるくせに今回は外に出ようとは」

誰憚る事のない外出にご満悦な大男・・・ライダーは隣の子男・・・ウェイバーに尋ねる。

「別に特に意味は無い。ただの気分転換だよ。それにお前は放って置けば何処で何をやらかすか判ったもんじゃないからな。騒動起こされるなら僕の眼の届く範囲でしてもらった方が百億倍ましなだけだよ」

ウェイバーの答えは声、口調、台詞、そして表情と見事なまでに不機嫌不快を表現していた。

実際、ウェイバーの心中はと言えば不機嫌でもあるのだが、それと同時にそれ以上の相反する思いを抱き複雑そのものだった。

ウェイバー自身は、聖杯戦争と関わりの無い外出など無駄、無意味と決めていた。

だと言うのに、その無駄な行為を行う自分自身に行き場の無い憤りを抱いていた。

しかし、一時でもいいから聖杯戦争の事を忘れたかったのもまた事実であり、またこれまでの短いながらも苛烈な戦いに開戦当初抱いていた聖杯戦争に参戦する意味や意義に変化が生じつつある事もウェイバーが胸の内に抱く嘘偽り無い思いだった。

変化は些細かつ小さなものであるが、その事を考えると思考が堂々巡りを起こし、窒息するような精神的な息苦しさを覚えるようになっていた。

今回の外出は聖杯戦争やその息苦しさからの一時的な逃避でもあるが、同時にどうしても調べたい事があった。

それを調べるならば図書館が最も適任なのだが、ウェイバーとしてはそこは避けたかった。

と言うのもライダーを召還したその日の夜、この男よりにもよってその図書館に不法侵入をやらかし更にはそこから蔵書を二冊強奪すると言う暴挙をやってのけた。

ここ数日に渡って頻発する怪事件の前にその様なこそ泥行為など霞むどころか存在すら忘れ去られているに違いないが、それでも窃盗である事に変わりは無い。

(張本人は『征服王の略奪』などとふざけた事を抜かしていたが)

ウェイバーがライダーを唆した訳ではないが、十分共犯者と呼べる立場である事を自覚しているので、現場に再び足を向ける度胸など無い。

そうなれば次に思いつく候補は書店であるが、目的の書籍を探すとなれば現地の本しか置いていない町の本屋ではなく大型の書店で探すしかない。

そしてその様なものは新都の繁華街ぐらいしかなかった。

「大体なんで不思議そうに聞くんだよ。いつものように何も考えずにいれば良いだろう。そもそもお前、町に行きたいって一昨日からずっとごねていた癖に」

「当然であろう。異国の市場を冷やかすのは格別の楽しみだぞ。戦場を往来するのと同じ位にな」

「・・・そんな理由で喧嘩というか戦争吹っかけられた国は気の毒だよ、本当に」

と、そこでライダーが怪訝そうな表情をウェイバーに向けた。

「おい、坊主、今の言い草はなんだ?まるで見てきたかのように」

「なんでもないこっちの事だよ」

そんなライダーを半ば無視するようにウェイバーは歩を早めた。

実を言うと今日、繁華街に出向こうと決めた最大の理由は今の台詞の中にあった。

昨日ウェイバーは夢を見た。

恐ろしいほど現実感に溢れた夢を。

ライダー・・・征服王イスカンダルの記憶と言う名の夢を。









ウェイバーが目星をつけていた書店は駅前の商店街にあった。

極めて好都合な事に周辺にはライダーが興味を引くような店舗が軒を連ねておりライダーが手持ち無沙汰となって問題行動を引き起こす可能性は極めて低そうだった。

「じゃあ。ライダー僕はしばらくこの本屋にいるからお前はここで適当に時間を潰しておいてくれ」

「うむ」

「何やっても良いけど、ここから離れすぎるなよ。昼間のこんな商店街で何かやらかすなんて考えられないけど可能性はゼロじゃないんだし、僕に何かあったらそれでお前も終わりなんだからな」

「うむうむ」

ウェイバーに生返事を返すライダーの視線は周囲の店舗・・・酒屋、ゲームショップ、関西風お好み焼き屋などに向けられている。

そのギラギラした視線に通用するかどうかは判らないにしろ、ウェイバーは釘を刺すことにした。

「何しても良いと言ったけど、くれぐれも征服も略奪もするなよ」

「・・・なにっ!」

「なんだよ!その反応は!!」

予測していたとは言え、予想通り過ぎる反応にウェイバーは人目を憚る事無く喚き散らす寸前だったが、何とか押さえるとライダーの手に叩き付けるように財布を押し付ける。

「金は渡すんだから何か欲しかったり食いたかったりしたら金を払え!!それとも本気で令呪で命じてやろうか!」

「まあそうカリカリするでないわ。マケドニアの宮廷作法は何処の宮廷でも文明人として通用したのだぞ」

自慢なのか言い訳なのか全く意味不明な事をほざきながらライダーは上機嫌で人ごみに紛れて行った。

大いに不安なウェイバーであるが、ああ見えて異国文化に対するライダーの順応性の高さは本物だ。

現に昨日あの男、ウェイバーは孫として潜り込んでいるマッケンジー家に孫=ウェイバーの友人という触れ込みで堂々と姿を現したのだ。

ライダーの持つ破格のカリスマ故かどうかは不明だが、マッケンジー夫妻はそれをいとも容易く信じ込みウェイバーがあっけに取られている間にマッケンジー家における自分の居場所を確保してしまった。

その手際のよさに驚くと言うか呆れると言うか判断に迷う所だが、ともかくもライダーも自分の命令を無視して無法行為は行わないだろうと自分に言い聞かせてからウェイバーは目的の本屋に入店する。

目当ての本があるかどうかは極めて微妙であるが仮にあったとしても購入する気はない。

買うほどの代物でもないしあれに買ったとして、もしもライダーに見られれば何を言われるか判ったものではない。

何よりも先程ライダーに財布を渡したので手持ちはびた一文持ってはいないので買いたくても買えない。

と、そこでもしもライダーが財布をすっからかんにした場合ウェイバーの当座の資金の七割から八割が消滅する事になる事を今更ながら思い出した。

思い出したが今更ライダーを呼び戻すのもどうかと思うし、ライダーが起こす騒動を金程度で回避出来るなら安いものだと自分に言い聞かせ、仮に使い切られても、そうなったらそうなったらでどうにかなるだろうと良くも悪くも開き直っていた。









やはり大型の本屋とは言え、目的のコーナーは小規模なものだった。

しかし、土地柄外来住民の多い為か、規模の割に内容は充実している為、目的の本は直ぐに見つかった。

それを手に取ると直ぐに速読を開始する。

幼少の頃からテキストを読み解き、把握、更にはこれを再構成する、この才覚はウェイバーにはあった。

時計塔に入学してからはその才覚に更に磨きがかかったのだが、周囲からは体の良い見習い司書レベルの評価しか受けていなかった。

そんな屈辱の記憶も読み進めるに従い意識の片隅に押し込まれやがて消え失せていく。

それほど内容にウェイバーは引き込まれていく。

本の内容と昨夜見た夢が重なる。

遠征の最初の戦い・・・ペルシア帝国の誇る防人の精鋭を打ち砕き、侵略の意図を怒号を持って質す捕虜達に言った一言。

『余は世界の果てに至りたいのだ。遥かな東の果てに存在する最果ての海(オケアノス)をこの眼で確かめ足跡を残したいのだ』

そう言い残し支配地の統治も利権も一顧だにせず彼らは東に駆ける。

その姿をあっけにとられながら敗者たちは理解した。

かの王が少年のような瞳で言い放ち、彼らが本心を隠す為の戯言と決めてかかっていたあの言葉は欠片も偽りの無い本心だったのだと。

東に行きたい、その為に邪魔だったから蹴散らかされた。

純粋な、だが残酷極まりない現実と事実に彼らは誇りを粉々に砕かれ、名誉を完膚なきまでに潰され絶望と失意のそこに沈む。

だが、その果てに彼らは夢を取り戻した、夢を思い出した。

空の果てには何があるのか?

地平線の彼方にはどのような世界が広がっているのか?

そんな子供の頃誰しもが抱くささやかな夢。

それをある者は諦め、ある者は現実を前に打ち捨て、功名を積み重ねてその果てに威光と名声を手にして来た。

そんな彼らの虚栄と言う名の鎧を破壊し、丸裸にしたのは・・・彼らが捨てたそんな馬鹿らしい夢を今も抱き続けあろう事かそれを叶えようとする男だった。

それを理解した瞬間、彼らは夢に導かれるかのように武器を手に取り、取り戻した夢を胸に秘め東に進む王の背に追い付き、その軍勢に付き従う。

こうして征服王の軍勢は戦う度に、勝利する度に質量共にその規模を大きくしていく。

そして、その軍勢では誰も彼もが笑っていた。

征服の欲求が満たされた訳でも、殺戮や略奪の欲望を満たそうとしている訳でもなく、純粋に東の果てへの期待に胸を躍らせ、取り戻した夢に眼を輝かせながら屈託の無い笑みで笑い続ける。

そして誰もが叫ぶ。

『もっと東へ!』と・・・

皆が合唱する。

『いざ最果ての海(オケアノス)へ!』と・・・

自分達に夢を取り戻してくれた偉大なる王と共に伝説の浜辺をその眼に焼き付ける為に。

書籍の記述と夢が交差する中どれだけの時間を黙読に耽っていたのかウェイバーには判らない。

だが、ふと気付くとこちらへ向かって近づいて来る馴染みの気配を察しウェイバーは動作としてはさり気無く、だが、素早く手にしていた本を棚に戻した。

その直後、後ろから

「おお、いたいた、そんな所にいたのか坊主、ちっこいから探すのに苦労したぞ」

「あのなあ、普通の人間は本棚よりも背は低いんだ・・・よ・・・」

ライダーの言葉に振り返りながら返答するウェイバーの声が途切れ遂には絶句した。

振り返ったウェイバーの視線の先にいたのは予想していた通りライダーの姿、そしてその後ろはもう一人いた。

帽子をかぶった、黒ずくめの男が・・・

「エ、エエエエエエ?エク!・・・むぐッ」

絶叫しかけたウェイバーの口をその男が素早く塞ぐ。

「公共の場所では静かに」

そう言ったのは紛れも無くエクスキューター=士郎だった。









さて・・・ここで場所を変え、時間を遡る。

ウェイバーから財布を受け取り意気揚々と商店街をのし歩くライダーは実に楽しそうに実に嬉しそうに商店街を練り歩く。

お昼時も終わりに近いが周辺は昼食を取ろうとする老若男女でまだまだごった返し、飲食店も何処もかしこも繁盛、店によっては行列が出来つつある。

やはりいつの時代であろうとも異国の市場を冷やかし覗き見るのは最高だとライダーはご満悦の様子だった。

そんな光景を心から楽しそうに眺めながらまずは腹ごしらえとばかりに、近くのそれでいて外から見た感じ席の空きもありそうな店に狙いを定めて歩みを進めようとしたその時ライダーの前方から見慣れた顔を見つけた。

周囲に比べれば見えにくくなっているが間違いない。

それを確認すると実に嬉しそうにライダーはその人物に声を掛ける。

「おお!奇遇ではないか!エミヤ!!」









再度場面を変える。

セイバー達と別れた後士郎は当初の予定通り切嗣と合流すべくホテルに向かった。

仮眠を取っていたのか二日前の夜よりは血色の良い顔をした切嗣に出迎えられて改めて士郎は切嗣と現在の状況を確認しあう。

「そうか・・・今朝方の君の報告から禄なものじゃないと思っていたが」

苦く重い溜息を吐いてから切嗣は煙草に火を付ける。

無論だが内容はキャスターに関してだ。

まずは放棄した根城の位置を再確認した後、キャスターに囚われていた子供達の凄惨な末路を士郎から改めて詳細な報告を受けた。

話す方も聞く方も後味が悪く、気が重い話題を早々を終わらせた後、切嗣はある意味本題・・・セイバーの処遇について話し始める。

「・・・なるほどね士郎としてはあれを切り捨てる事にもはや反対はしない。だが現在においてはその結論に至るには時期尚早だと主張するのかい?」

「ああ、残念だけど歴史を致命的に狂わせかねない危険性を持つ願いを持つセイバーを俺としてはもはや容認は出来ない。たとえ大本はアルトリアだとしても・・・いや、だからこそ容認しちゃいけないんだ」

士郎の言葉には切嗣も初めて聞く深く重い決意があった。

アルトリアも同じ願いを持っていたとかつて聞いた事がある。

だが、それをアルトリアは自分には想像もつかないほどの深く重い苦悩を乗り越え、その願いは間違っていると、願ってはいけないのだと思い直してくれた。

だが、今のセイバーにその考えは無い。

言葉は悪いが一国だけ・・・自国だけが救われれば良い、そう考えているとしか士郎には思えない。

この時代に生きている為政者がその様な考えを持っていても士郎は咎めない。

国を治めるのであれば自国の事を最優先で考えるのがむしろ当然の事だ。

だが、セイバーは既にこの世の人ではなく、生きていた時代も遥かな過去。

彼女が治めていた国が滅亡した事は確定した歴史の出来事。

それを狂わせ捻じ曲げてでも国を救いたいと言う、どうしようもないほど純粋で真摯な、だが、どうしようもなく歪で間違えた願いを成就させるわけにはいかなかった。

これでセイバーを切り捨てられるのであれば話は簡単なのだが、問題は未だ自分とセイバーを除き五陣営が健在である事にある。

唯でさえ脱落したマスターを保護する役割を背負った教会が半敵地である事は自明の理である以上、教会にアイリスフィールの安全を委ねられない。

だが、かと言ってサーヴァント抜きでアイリスフィールを守り抜くには、舞弥一人では敵の数が多過ぎる。

最低でもあと三陣営を脱落させない限り、大聖杯の破壊と言う本来の目的への移行は無論だが、アイリスフィールの守護にも手は回らないと士郎の進言に切嗣は苦々しく同意する。

「・・・城が健在であれば多少の数の差も補えるが、予備の拠点は存在が知られていないと言う秘匿性しか守りは無い、アインツベルンの魔術に適合しやすい物件は何とか見つけたが、現状魔術的な守りは皆無。アイリが手を打っているとしても、泥縄程度の急ごしらえが精々か・・・」

「ああ、この現状で舞弥さん一人にアイリスフィールさんの守りを押し付けるのは酷な話・・・いや、はっきり言って自殺行為に他ならない」

「・・・仕方ないか。アイリにはしばらく負担を掛けてしまうがあれのお守りをもうしばらく続けてもらうしかないか」

「うん、後は今後の戦況次第でどう転ぶかわからないけど、今はセイバーを如何こうするといった話は速過ぎるよ」

結局セイバーに関しては現状様子見と言う事で話は纏まった。

その後の話は特に特筆する事も無く、ランサー陣営の拠点の一刻も早い発見を最優先事項として次にキャスターの補足およびその撃滅。

その後、ライダー陣営の探索に重点を置く事が決まり、士郎と切嗣は行動を開始する。

「ふう・・・」

静かに溜息を吐きながら士郎は駐輪場に停めたバイクを取りに新都の商店街を歩く。

現在、気配遮断は行っているが、霊体化はしていない。

隠匿を目的とするならばいつものように霊体化もしなければならないのだが、まだ日も高く、この現状でキャスターを除く他陣営がおおっぴろげに仕掛けるとは思えない。

それに気分転換と言うほどにもならないだろうが、バイクを取りにいくまでの間だけ懐かしい冬木の地を見ながら散歩もしてみたかった。

油断があったといえばその通りの話だった。

気が重く憂鬱な出来事が続き過ぎ、ミスを犯したと責められればその通りだと認めるしかない。

この時士郎はイレギュラーな事を平然とやらかす奴がいる事をすっかり失念していた。

その事を今更ながら思い出したのは前方から自分を呼ぶ聞きなれた声を聞いた時であった。

「おお!奇遇ではないか!エミヤ!!」









ぎょっとしたシロウが声の方向に視線を向けると満面の笑みを浮かべたライダーがこちらへ手を振っている。

一瞬逃げようかとも思ったが、ここで逃げても何の解決にもならないだろうし、ライダーの大声で周囲の注目も浴びてしまっている。

何よりもあの男、よりにもよって自分の真名を平然と口にしている。

ここで黙らせて置かなければ何処にどういった耳があるか判ったものではない。

一先ずライダーの口を黙らせるべく駆け寄る。

懐から帽子を取り出して被り、気配遮断を解除しながら。

「ライ・・・イスカンダル・・・陛下・・・こんな所で大声を出さないで下さい!」

「まあそう固い事を言うでない!」

士郎の抗議も何処吹く風とばかりにいつもの調子のライダーだったが

「安心せい、坊主ならあそこの本屋に行っておる。聞かれる心配は無い」

「そうかもしれませんけど・・・他の陣営の眼や耳もあるかも知れないんですから」

「その心配も要らぬ。ディルムッドを始めとして金ぴかや黒んぼ、小娘や下種の気配も無い」

小声でそんな事を言い合う。

一応はこちらの事も気遣ってくれているみたいだが、この男の口調と態度からはその様な殊勝さは欠片も見受けられない。

「で、俺を呼んだのはどう言った用件ですか?」

見られないが、これ以上問答しても暖簾に腕押しなのは、経験則で知り尽くしている士郎はさっさと本題に入る。

「おお、それよそれ。なんか辛気臭かったからのう、気分転換にどうだ一緒に飯でも」

「は?M E S I?」

何か重要な事かと思えば予想の斜め上を簡単にいくイスカンダルの返答に、思わずローマ字で士郎は返した。

「おう、余も一人よりも連れがいる方が美味い飯を更に美味く食う事が出来る。それが朋友であるならば尚更よ」

「あの~代金はどうするんですか?もしかしなくても無銭飲食する気じゃあないでしょうね。そのつもりなら俺は本気で止めますよ」

「抜かりは無い坊主から財布を預かっておる。誰彼憚る事無く飯を食えるぞ」

「・・・お願いですから憚って下さい。と言うか俺達飯は必要ないんじゃ」

「そこはほれ気分の問題よ。それにお前も久しぶりの地元だ。馴染みの店で飯を食いたいとは思わぬか?」

やはりこの人に口で勝てないと嘆息する。

「判りました。で、何処に行くんですか?」

「ああ、あそこにする。直ぐに席につけそうだからのう」

「じゃあ、行きましょう」

そう言ってその店・・・『お好み焼き』へと向かうライダーについて行く士郎の心境は諦観を通り越して悟りの心境にあった。

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