イギリス南部着いた3人。

 そこは異様なほど静まりかえっていた。





炎舞う想い 3







 時間は昼過ぎ。

 いくら都市部から離れているとは言え、民家が無い訳ではない。

 もう少し活気があってもいい筈なのだが――



殿!神田殿!」



 名を呼ばれ振り向くと、そこにはトマの姿があった。

 走ってきたのだろう。息が上がっている。



「お二方が来て下さったのですね。お待ちしておりました」

「お疲れ様です。イノセンスを確保したと連絡がありましたので来ました」

「イノセンスはどこにある」

「はい、今は別の者が持っておりますが………」



 見た事のない顔―ロイが気になるのだろう。

 チラチラ見ながら話している。

 その事に気付いたは、トマにロイを紹介した。



「では、彼も殿と同じ世界から来た方なのですね」

「はい。今回の任務だけ、同行して貰ったんです」



 一通りの挨拶が済んだ後、今までと異なった雰囲気が辺りを包む。

 それにいち早く気付いた神田と

 ロイもまた、その異様な雰囲気に眉を顰めていた。



「トマさん、この場から離れて下さい」

「チッ。アクマがいやがったか」

「住人の避難はどうなっている?」



 ロイの問いに、トマは既に避難済みと答え、この場を後にする。

 トマが去った直後、何処からともなく男性が現れた。

 男性は達を見ると嬉しそうに笑った。



「おや?ここにエクソシストがいるという事は、やっぱりイノセンスがあるんだね。僕の感が当たったかな」



 一見して普通の人間に見える。

 しかし教団内で見た事がない上に、教団服も着ていない。

 教団関係者ではないのにイノセンスを知っている。

 つまり彼はアクマ!

 そう考えたと神田は、すかさずイノセンスを解放した。



「大佐、気を付けてください。あれはアクマです」

「みたいだな。嫌な気配がする」



 ロイが発火布を嵌めながら言う。

 かつて戦場の経験がアクマの気配を感じ取ったのだろう。

 最初に動いたのはだった。

 練成した自動小銃を構え発砲するも、それは全て弾き返されてしまった。

 それも掌で。

 次に神田が動いた。

 六幻で斬りかかるが、やはり受け止められてしまう。

 盾や防御するものではなく、生身の体で。

 アクマの能力の一つなのだろうか。

 驚く二人を、アクマは薄らと笑って見ていた。



「残念だけど、そう簡単に僕の体は斬れないよ。さて…お腹も空いてきた頃だし。
 全員死んでもらおうか。君達だけじゃなく、向こうにいる人間達も…ね」



 アクマは体を転換し、醜い本来の姿を現した。

 初めて見るアクマに驚くが、ロイはすかさず腰にあった銃を構えた。

 と神田、そしてロイは各々の武器で攻撃するが、アクマに傷一つ負わせることができない。

 いくら傷を負わないとは言え、やられてばかりのアクマではない。

 己の手を鞭状に変え、それを3人に向けてくる。



「チッ!何なんだよアイツの体はッ」

「銃弾の跳ね返り音や六幻で斬った時の音からすると、金属だとは思うんだけど…」

「己の体を鞭状にした。普通の金属とは思えないが」

「金属がしなやかに動くのか!?」

「しなやかに動く金属…?もしかして!?」

「まさか…繊維強化複合材か?」

「繊維強化複合材…?何だそれは?」



 初めて聞く言葉に、神田は眉を潜める。

 とロイの口調から、厄介な物だと判断したのだろう。



「簡単に言えば、金属の中に繊維が入ってるのよ」

「入ってたらどうなるんだ?」

「………場合によっては、強度と耐熱性が上がるな」

「「………………」」



 攻撃する手立てのない3人は、アクマの攻撃をかわすしかない。

 の初任務の時は、気体の体を持つアクマを凍らせ破壊した。

 だが、今回その方法は使えない。

 どうやったらアクマの体内にあるダークマターを破壊できるだろうか?

 考えに夢中になっていたは、集中力が散漫していた。

 それを見逃すアクマではない。

 鞭を振り上げ、を攻撃する。

 



「「!!」」

「え?」



 気付くのが遅れたはまともに攻撃を受け、民家の壁に激突した。

打ち所が悪かったのだろう。そのまま気を失ってしまう。



「まずは一人だね」



 嬉しそうにいうアクマを、神田とロイは睨みつける。

 大切な人が攻撃されたのだ。怒るのも当然だ。



「テメェ…ぜってー破壊する」



 六幻を構えなおし斬りかかろうとする神田をロイが止めた。

 神田はロイを睨み、怒鳴りつける。



「邪魔すんじゃねぇよ!」

「馬鹿者!このままでは先程と同じだ!!」

「だったら、どうするってんだよ!」

「一つ聞きたい。この服は熱に耐えられるか?」

「あ?教団服をなめるな。耐熱仕様にもしてある」

「そうか。ならば私に考えがある」



 怒鳴る神田を制し、ロイは持っていた銃をホルダーに片付けた。



「軍人としてはあまり気乗りがしないのだが…」



 発火布を嵌めた右手をアクマに向ける。

 そんなロイの行動を、アクマは鼻で笑った。

 

「布で出来た手袋で僕を倒せると思ってるのか?ましてやイノセンスでもないのに」

「確かにイノセンスではないから、貴様を破壊する事はできない。だが…」



 一瞬、目を細めて狙いを定める。

 
 パキン

 ロイが指を鳴らすと、ヂヂヂと火の粉がアクマに向かっていった。

 それがアクマに触った直後、大きな爆発が起こった。

 驚くアクマ。

 急いで逃げようとするが、ロイの攻撃は止むことがなかった。

 炎は勢いを増し、辺り一面を熱風が包む。

 

「貴様を構成している金属なら溶かす事ができる!!」

 

 ロイは更に炎を練成した。

 炎の中心…アクマがいる部分は数千度になっているのだろう。

 いくら繊維で強化した金属と言っても、この温度には耐えられない。

 今まで攻撃しても傷つける事のできなかった体が、溶け始めていた。



「相手が悪かったな。私は『焔の錬金術師』なのだよ」



 再びロイは指を鳴らした。

 アクマの周りの炎は一層強まり、その体を溶かしていく。

 体の一部が完全に溶け、ダークマターが見えた瞬間。



「今がチャンスだ!!」

「あぁ。後は俺に任せろ。
 イノセンス発動。災厄招来 界蟲『一幻』



 神田の発動した攻撃が、アクマに命中する。

 ダークマターを破壊されたアクマは、消滅したのだった。



「私のを傷つけた罪は重いぞ」

「テメェのじゃねぇって言ってんだろ。俺のだ」

「………まぁいい。を傷つけたんだ」

「あぁ………」



「「地獄の底を這いずり回って後悔しろ」」










後書き
任務しゅうーりょー(早ッ)
神田さんと大佐が、協力してましたねぇ。
あの神田さんと大佐がですよ!?
愛の力は偉大です(笑)
でも…二人のタッグを書いたら、さんの活躍シーンが…(汗)
いや…まぁ…今回は許してください

この話も、次で終わりです。
頑張りますので、お待ち下さいませ〜〜。

紫青様のみ転載可でございます。


 

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